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心リハ指導士が教える高脂血症の基本とは?

今回は、高脂血症の基本について説明していきます

心臓リハビリテーション指導士の立場から、分かりやすく説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい

はじめに

高脂血症は、血液中に過剰な脂質(主にコレステロールやトリグリセリド)が含まれる状態を指し、心血管疾患のリスクを高める主要な要因の一つです。

放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの重大な健康問題を引き起こす可能性があります。

しかし、高脂血症は適切な生活習慣の改善や薬物療法により、十分に管理・予防することが可能です。

今回は、

  1. 高脂血症とは?その原因とメカニズム
  2. 高脂血症の症状とリスク
  3. 高脂血症の予防と管理

をもとに、心リハビリテーション(心リハ)指導士の視点から、高脂血症の基本について詳しく解説し、予防と管理のための具体的な方法について説明します。

1. 高脂血症とは?その原因とメカニズム

高脂血症とは、血液中の脂質、特にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)やトリグリセリド(中性脂肪)の濃度が高い状態を指します。

これらの脂質が過剰に蓄積すると、動脈の壁にプラーク(脂肪沈着)が形成され、動脈硬化を引き起こします。

動脈硬化が進行すると、血管が狭くなり、血流が制限されるため、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

高脂血症の主な原因は、遺伝的要因と生活習慣によるものが挙げられます。

家族性高脂血症などの遺伝的な要因は、体内でのコレステロールや脂肪の代謝が異常となることで、血中の脂質濃度が高くなります。

これに対して、食生活の乱れ(高脂肪食の摂取)、運動不足、肥満、喫煙、過度のアルコール摂取などの生活習慣が高脂血症を悪化させる要因となります。

特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品を摂取することは、LDLコレステロール値を上昇させる要因となります。

また、トリグリセリドの増加は、糖分やアルコールの過剰摂取、運動不足によって引き起こされることが多く、これも動脈硬化のリスクを高めます。

2. 高脂血症の症状とリスク

高脂血症そのものは、通常、目に見える症状を引き起こすことは少なく、「沈黙の病」とも呼ばれています。

しかし、長期間にわたって放置されると、動脈硬化が進行し、心血管疾患のリスクが高まります。

具体的には、以下のようなリスクが考えられます。

  • a. 動脈硬化の進行
    高脂血症は、動脈硬化を引き起こす主な要因の一つです。動脈硬化は、血管の内壁にコレステロールが蓄積し、プラークが形成されることで血管が狭くなる状態を指します。このプラークが破裂すると、血栓が形成され、血管を完全に閉塞させることがあります。この状態が心臓で起こると心筋梗塞、脳で起こると脳卒中を引き起こします。
    動脈硬化は進行が遅いため、初期段階では自覚症状がありません。しかし、進行すると胸痛(狭心症)や、歩行時に足の痛みを感じることがあります(間欠性跛行)。これらの症状が現れた場合、すでに動脈硬化が進行している可能性が高いため、医療機関での早急な対応が必要です。
  • b. 心筋梗塞と脳卒中のリスク増加
    高脂血症が原因で動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが飛躍的に高まります。心筋梗塞は、心臓を供給する冠動脈が閉塞することで、心筋が壊死する状態です。これにより、突然の胸痛や呼吸困難を引き起こし、緊急の医療対応が必要となります。
    脳卒中は、脳の血管が閉塞することで、脳の一部が損傷を受ける状態を指します。これにより、半身麻痺や言語障害、意識障害が生じ、重篤な後遺症を残す可能性があります。これらの疾患は、高脂血症を放置することでリスクが増大するため、早期の診断と管理が重要です。

3. 高脂血症の予防と管理

高脂血症の予防と管理には、主に食事療法、運動療法、薬物療法の三つの柱があります。

これらのアプローチを組み合わせることで、血中脂質を適切にコントロールし、心血管疾患のリスクを低減することが可能です。

  • a. 食事療法
    食事療法は、高脂血症の予防と管理において最も基本的な対策です。まず、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品を避けることが重要です。具体的には、脂肪の多い肉類やバター、マーガリン、揚げ物、スナック菓子などが挙げられます。これらの食品はLDLコレステロール値を上昇させ、動脈硬化のリスクを高めます。
    代わりに、オメガ3脂肪酸を多く含む魚(サバ、サーモン、イワシなど)や、不飽和脂肪酸を含む植物性油(オリーブオイル、キャノーラ油)を摂取することが推奨されます。また、食物繊維が豊富な野菜や果物、全粒穀物も、コレステロールの吸収を抑制する効果があるため、積極的に摂取することが望ましいです。
    さらに、アルコールの過剰摂取はトリグリセリドの増加につながるため、節度ある飲酒が求められます。特に、アルコールを飲む際には、低脂肪のつまみを選ぶなど、食事内容にも注意が必要です。
  • b. 運動療法と体重管理
    適度な運動は、高脂血症の管理において重要な役割を果たします。運動は、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の増加を促進し、LDLコレステロールの減少を助ける効果があります。ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、心肺機能を強化し、血液循環を改善するため、特に有効です。
    運動はまた、肥満の予防と管理にも寄与します。肥満は高脂血症のリスクを高める要因の一つであり、体重管理は血中脂質を正常範囲に保つために不可欠です。運動習慣を継続することで、エネルギー消費が増加し、体重管理がしやすくなります。
  • c. 薬物療法
    食事療法や運動療法だけでコレステロール値やトリグリセリド値を十分に管理できない場合、薬物療法が必要となることがあります。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、LDLコレステロール値を下げるために最も一般的に使用される薬物です。スタチンは、肝臓でのコレステロール生成を抑制し、血中のLDLコレステロールを減少させる効果があります。
    他にも、フィブラート系薬物(トリグリセリドの減少)や、エゼチミブ(コレステロール吸収の抑制)、PCSK9阻害薬(LDLコレステロールの除去を促進)などが使用されることがあります。これらの薬物療法は、医師の指示に従い、定期的な血液検査を行いながら進めることが重要です。

筆者の経験では、高脂血症の薬剤では、スタチンが良く使われている印象です。しかし、スタチンは横紋筋融解症という病気のリスクもあるため、注意が必要です

おわりに

高脂血症は、心血管疾患のリスクを高める主要な要因の一つであり、早期に対策を講じることで、これらのリスクを大幅に減少させることが可能です。

食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて血中脂質をコントロールし、生活習慣を改善することで、動脈硬化の進行を防ぎ、健康な生活を維持することができます。

心リハ指導士として、患者に対して高脂血症のリスクと管理方法を分かりやすく説明し、日常生活での実践をサポートすることが求められます。

今回、紹介した知識と方法を活用し、患者の健康維持に貢献していただければ幸いです。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

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