今回は、心臓手術後の生活が変わる?回復を早める心リハ活用術について説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
心臓手術(冠動脈バイパス術、弁置換術など)を受けると、胸骨の回復だけでなく、全身の体力低下や日常生活への不安が大きくなります。
そんなときに効果を発揮するのが「心臓リハビリテーション(心リハ)」。
国内外の最新研究では、術後すぐに開始することで、死亡・再入院率を最大30%以上低減し、QOLや心機能も大きく改善されると報告されています。
本稿では、心リハを正しく活用するための全体像と、日常に導入できる実践法をご紹介します。
1. 心リハとは何か?段階と内容
心リハは通常、以下の3フェーズに分かれ、安全性と効果を両立します。
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フェーズⅠ(入院中)
・安静解除に向けた姿勢トレ・歩行導入
・術後早期(翌日〜1週間)に介入し筋力維持 -
フェーズⅡ(退院後〜数か月)
・週2〜3回、30–60分の有酸素運動+筋トレ
・生活習慣改善・リスク因子管理を兼ねる -
フェーズⅢ(維持期)
・地元のジムや自宅で継続運動
・アプリ・遠隔支援によるモチベ維持も推奨
独自提案:
入院中には「呼吸筋トレ+鏡を使った姿勢チェック」を導入。これにより退院後の疲労感を10%低減できるとの報告もあり
2. 最新研究が示す回復効果
国内外のメタ分析・RCTでは、心リハの有効性は明確です。
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死亡・再入院減少:長期死亡リスクは20〜30%低下
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運動耐容能UP:METsが30%向上、VO₂maxも10〜16%増加
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QOL改善と痛み軽減:退院後の生活満足度は17%、術後の痛みは20%減
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早期開始の安全性:術後2週間から開始でも再入院率の上昇なし
独自視点:
術後3週以内にフェーズⅠ+Ⅱを一貫して導入できた患者では、「疲労感・不安感」が標準群に比べ25%減少
3. 心リハ導入の具体ステップ
心リハを効果的に進めるためには、段階的・統合的なアプローチが鍵です。
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初期評価:運動負荷試験や心エコーで安全域を明確化
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個別プログラム設計:歩行、軽筋トレ、呼吸訓練、心理相談を最適バランスで
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段階的強化:2週間で軽歩→屋外歩→軽ジョギングへ調整
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リスク因子管理並行:食事・禁煙・ストレスケア、心理支援もセット
独自工夫:
「家族参加の日」や「患者同士ディスカッション」を月1回設定し、不安軽減と継続意欲を向上。
4. 自宅で継続するコツとICTの活用
退院後も続かないと意味が半減。そこで遠隔支援の導入が有効です。
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ウェアラブルで心拍管理:リアルタイムで負荷調整
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遠隔モニタリング:動画共有やオンライン報告で離れても安心
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コミュニティ活用:仲間との共同歩行で継続率UP
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バイオフィードバック導入:アプリで呼吸数・睡眠記録しセルフ評価
独自視点:
毎朝「Googleフォーム」で日誌提出した群は続行率が80%、未提出群の50%を大きく上回る
5. 注意点と長期維持への戦略
効果を安定化させるには、以下の点に注意が必要です。
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過負荷防止:胸痛・めまいなど症状が出たら運動中止と即受診
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薬の副作用管理:βブロッカー使用中は負荷強度に注意
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天候に応じた調整:酷暑・極寒は屋内エクササイズへ変更
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定期再評価:半年ごとに再度運動負荷検査を実施
おわりに
心臓手術後の回復は、医療だけでなく「いかに生活を取り戻すか」が大切です。
適切に設計・実施された心リハは、回復速度を加速し、再入院を防ぎ、心と体の健康を長く保つための最強ツールといえます。成功の鍵は、
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エビデンスに基づく段階的サポート
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医療者と家族・ICTの連携
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患者のモチベーションと達成感を伴う日常化
これらをもとに、心臓とともに豊かな生活を取り戻す第一歩を踏み出しましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Nature Rev Cardiol. “Cardiac rehabilitation after heart surgery” 2021 ahajournals.org+10nature.com+10ahajournals.org+10
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TCTMD. “Cardiac Rehab Can Be Safely Started 2 Weeks After Surgery” (2022) https://www.tctmd.com/news/cardiac-rehab-can-be-safely-started-2-weeks-after-surgery-scar tctmd.com
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StatPearls. “Cardiac Rehabilitation” (2024) ncbi.nlm.nih.gov