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知っておきたい、慢性心不全と有酸素運動の関係

今回は慢性心不全と有酸素運動の関係について説明していきます

心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!

はじめに

慢性心不全(Chronic Heart Failure:CHF)は、心臓のポンプ機能が低下し、息切れ・むくみ・動きにくさなどの症状が続く疾患です。

近年の主要国のガイドラインでは、有酸素運動がCHF患者の生命予後やQOLの改善に不可欠と位置付けられています。

2021年のESC指針では エビデンスレベルA、クラスI推奨として位置づけられ、呼吸循環機能の向上や入院リスク軽減につながるとされています


1. 有酸素運動はなぜ重要か

  • 心拍出量とVO₂max改善:持久力向上で歩行耐久が上昇

  • 左室リモデリングの抑制:心臓構造が健全な状態へ戻りやすくなる

  • 自律神経機能の正常化:心拍変動の改善により、不整脈リスク減

  • 炎症抑制作用:サイトカイン低下を通じて心臓に優しく働く

※脳卒中や高血圧など合併症も併せて抑制する多面的な効果があります。


2. ガイドラインに基づく具体的運動処方

  • 週150〜300分の中等度有酸素運動(歩行・サイクリングなど)推奨

  • 強度別処方:心拍60〜70%またはRPE(体感強度)12〜14で15〜30分/回

  • HIITも有効:週2〜3回の短時間高強度運動がVO₂max改善に優れる

  • 筋トレ併用:体幹・下肢筋を鍛えることで体の安定性・運動耐久が向上

 


3. 安全に始めるためのポイント

  • 運動前には心機能・浮腫・安定性の評価:NYHA分類II〜III相当が対象

  • モニター下での開始が望ましい:心拍、SpO₂、血圧状態をチェック

  • 禁忌・回避条件の把握:急性増悪期や不安定狭心症では中止

  • 段階的負荷設定:最初は短時間から開始し、徐々に強度・時間を上げる

 


4. 心不全タイプ別の運動効果

  • 低収縮機能型(HFrEF):明らかなVO₂max向上と再入院率減少が確認

  • 拡張機能保持型(HFpEF):最近のRCTでは有酸素+筋トレで心拡張改善報告

  • 高齢者・併存性疾患患者:軽負荷での運動でも心機能・QOLが改善

  • 在宅リハの有効性:遠隔モニタリング併用で継続率・効果が上昇

 


5. 疾病予防・再発防止への貢献

  • VO₂max+1METごとに心不全リスク18%減少

  • 短時間活動でも効果あり:階段上りなどの積極利用でHFリスク低下

  • 心リハ参加は再入院率35%減少

  • 日常運動の継続が予後を左右:150分週の習慣化が望まれる

 


おわりに

慢性心不全における有酸素運動は、心機能を高めるだけでなく自律神経・炎症・QOLを改善し、再入院や死亡率を低減する強力な治療手段です。

最新エビデンスではHIITも含めた多様な運動法が効果を示しており、ガイドライン準拠の運動処方・安全管理の下で、日常の中で継続することが最も重要です。

運動は「薬」と同等の効果を持つ治療戦略。心臓を強く健やかにする第一歩を、今日から始めましょう。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました


参考文献

  1. ESC Guidelines 2021. Diagnosis and treatment of chronic heart failure AHA Journals+13jacc.org+13uscjournal.com+13

  2. Vanhees et al. Aerobic Exercise in CHF patients, ESC e‑J Cardio Prac 2016 European Society of Cardiology+1PMC+1

  3. Xie et al. Exercise Training Improves VO₂max and QOL in CHF, PMC 202

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