今回は、父親が育児メンタルを守るための5つの習慣について説明していきます
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
1.なぜ父親の育児メンタルは壊れやすいのか
2.習慣①「父親も不安を抱えていい」と認める
3.習慣② 育児を“評価”から切り離す
4.習慣③ 孤立しないための外部接点を持つ
5.習慣④ 役割を固定しすぎない柔軟性
6.習慣⑤ 心と体の疲労を数値化する
7.おわりに――強い父親より、戻ってこられる父親へ
はじめに
育児に関するメンタルヘルスというと、これまで社会の焦点は主に母親に当てられてきました。
産後うつ、育児不安、孤独感。
いずれも重要な問題であり、支援が必要です。
一方で、近年の国内外の研究では「父親の育児メンタル不調」が静かに、しかし確実に増加していることが報告されています。
にもかかわらず、多くの父親はその不調を自覚しづらく、さらに周囲からも見えにくいという二重の問題を抱えています。
現代の父親は、「稼ぐ役割」「支える役割」「育児参加」「感情的にも安定している存在」という複数の期待を同時に背負っています。
しかし、それらをこなすための教育も、感情を吐き出す安全な場も、十分には用意されていません。
その結果、父親は「弱音を吐けないまま、静かに消耗していく」という状態に陥りやすいのです。
今回は、父親が育児期を“折れずに”乗り切るための5つの習慣を提示します。
ここでいう「強くなる」ための習慣ではありません。
壊れそうになったときに、元の状態へ戻ってこられる「回復力」を育てる習慣です。
1.なぜ父親の育児メンタルは壊れやすいのか
・父親の育児不安は「自覚しにくい」
・相談行動が極端に少ない
・社会的役割期待が多重化している
・評価される場がほとんどない
父親の育児メンタル不調が見えにくい最大の理由は、「自分でも不調だと認識しづらい」点にあります。
海外の研究では、父親の抑うつ状態は母親と比べて「怒り」「無気力」「仕事への過剰没頭」といった形で現れやすいとされています。
これは本人も周囲も“性格の問題”や“一時的な疲労”として見過ごしやすい反応です。
また、日本の文化的背景として「父親は弱音を吐かない存在であるべき」という無言の圧力が存在します。
育児に積極的であればあるほど、「自分でやると決めたのだから弱音を吐くべきではない」という自己規制が働き、孤立が深まっていきます。
2.習慣①「父親も不安を抱えていい」と認める
・不安は責任感の裏返し
・感情を否定すると長期化する
・言語化が回復の第一歩
・弱さの開示は育児能力を下げない
多くの父親は、「不安を感じる=父親失格」という誤った前提を無意識に持っています。
しかし心理学的には、不安とは未知の状況に適応しようとする正常な反応です。
特に育児は正解がなく、結果がすぐに見えないため、不安が生じやすい構造になっています。
最新のメンタルヘルス研究では、「感情の抑圧」はストレスホルモン(コルチゾール)の慢性的上昇を引き起こし、抑うつや身体症状につながることが示されています。
つまり、不安を感じないようにする努力そのものが、メンタルを削っている可能性があるのです。
「自分は今、不安を感じている」と言葉にするだけでも、脳内では扁桃体の過剰反応が抑えられ、前頭前野の働きが回復することが分かっています。
これは育児スキル以前に、生理学的な回復行動です。
3.習慣② 育児を“評価”から切り離す
・正解探しが心を追い込む
・比較は不全感を生む
・育児は成果測定ができない
・「やった事実」を評価する
父親の育児メンタルを蝕む大きな要因のひとつが、「評価軸の誤設定」です。
仕事では成果が数値や評価として返ってきますが、育児では努力がそのまま報われるとは限りません。
それにもかかわらず、多くの父親は無意識に仕事と同じ評価基準を育児に持ち込んでしまいます。
「今日は泣き止ませられなかった」「妻の方がうまくやっている気がする」こうした思考は、育児を“能力競争”に変えてしまいます。
心理学では、コントロール不能な領域での自己評価は、無力感と抑うつを強めることが分かっています。
育児メンタルを守るためには、「うまくできたか」ではなく「関わったかどうか」に評価軸を置く必要があります。
結果ではなく行動を評価する。
この視点の転換は、父親の自己効力感を大きく回復させます。
4.習慣③ 孤立しないための外部接点を持つ
・夫婦だけで完結させない
・父親同士の横のつながり
・専門職との接点を恐れない
・オンラインでも十分効果あり
父親の育児メンタル不調で最も危険なのは「孤立」です。
特に真面目で責任感の強い父親ほど、「自分が頑張れば何とかなる」と思い込み、助けを求めるタイミングを逃します。
近年の研究では、父親向けのピアサポート(同じ立場の父親同士の交流)が、抑うつリスクを有意に下げることが報告されています。
重要なのはアドバイスではなく、「同じように悩んでいる人がいる」という事実そのものです。
5.習慣④ 役割を固定しすぎない柔軟性
・完璧な分担は存在しない
・状況で役割は変わる
・できない時期もある
・調整力が家族を守る
父親が自分を追い込む原因のひとつに、「一度決めた役割を守り続けなければならない」という思い込みがあります。
しかし、育児期は家庭の状況が常に変化します。
仕事量、子どもの成長、パートナーの体調。その中で役割を固定すること自体が無理なのです。
柔軟に役割を見直せる父親ほど、長期的にメンタルが安定することが分かっています。
これは「逃げ」ではなく、家族全体の持続性を高める戦略です。
6.習慣⑤ 心と体の疲労を数値化する
・疲労は自覚しづらい
・言語化より数値化
・週単位で振り返る
・限界前に手を打てる
父親のメンタル不調は、ある日突然崩れるように見えて、実際には長期的な疲労の蓄積です。
そこで有効なのが、主観ではなく「指標」で自分をチェックする習慣です。
睡眠時間、イライラの頻度、仕事への集中度などを簡単に記録するだけでも、限界が近づいているサインに早く気づくことができます。
これは医療・産業心理学の分野でも推奨されているセルフモニタリング手法です。
おわりに
父親が育児メンタルを守ることは、決して自分だけのためではありません。
父親が心身ともに安定していることは、子どもの情緒発達、夫婦関係、家庭全体の安心感に直結します。
「強い父親」である必要はありません。必要なのは、「崩れたあとに戻ってこられる父親」です。
そのための習慣は、特別な才能や性格ではなく、今日から身につけることができます。
涙を流してもいい。
不安を感じてもいい。
助けを求めてもいい。
それを認められる父親こそが、長く家族を支え続けられる存在なのです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
-
Paulson, J. F., & Bazemore, S. D. (2010). Prenatal and postpartum depression in fathers. JAMA.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/186915 -
日本小児科学会「父親の育児参加とメンタルヘルスに関する報告」
-
Cabrera, N. J. et al. (2018). Father involvement and child development. Child Development Perspectives.
