COPDの人が筋トレをするときの注意点とは?
目次
- はじめに|COPDでも筋トレはできる?
- 筋トレ前に「今の体調」を確認する
- 運動中の息切れとSpO₂をどう考える?
- 息を止めない・無理に追い込まない
- COPDの増悪や持病がある場合はどうする?
- おわりに|大切なのは「頑張ること」より「安全に続けること」
はじめに|COPDでも筋トレはできる?
COPDと診断されると、「運動をすると息苦しくなるから、なるべく身体を動かさないほうがいい」と考えてしまう人がいます。
たしかにCOPDでは、歩いたり階段を上ったりすると息切れが起こりやすくなります。
そのため、筋トレに対しても、
「筋トレなんてしたら、もっと息が苦しくなるのでは?」
「酸素が足りなくなったら危険じゃない?」
「肺が悪いのに運動して大丈夫?」
と不安になるのは自然なことです。
しかし、COPDだから筋トレをしてはいけないわけではありません。
むしろ、筋力トレーニングは呼吸リハビリテーションの重要な運動の一つです。
2025年に発表されたCOPDの運動療法に関する臨床ガイドラインでも、有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングを組み合わせた運動が推奨されています。
さらに、自宅でも行いやすいゴムバンドなどを使った運動も選択肢として挙げられています。
2026年に発表されたシステマティックレビューでも、COPD患者の筋力トレーニングは、筋力だけでなく、運動能力、日常生活動作、生活の質などの改善につながる可能性が示されています。
ただし、ここで大切なのが、
「筋トレをしていい」=「どんな方法でもいい」ではない
ということです。
COPDの人が筋トレをするときには、健康な人とは少し違った注意点があります。
特に重要なのが、
「今日の体調はどうか」
「息切れはどのくらいか」
「酸素飽和度はどうか」
「持病や薬の影響はないか」
「いつもと違う症状がないか」
といった点です。
筋肉を鍛えることは大切。
でも、それ以上に大切なのは安全に続けられることです。
1. 筋トレ前に「今の体調」を確認する
筋トレを始める前に、まず確認したいのが「今日の身体の状態」です。
COPDでは、毎日同じような症状とは限りません。
昨日は楽だったのに、今日は息苦しい。
朝から身体が重い。
いつもより咳が出る。
痰が増えている。
そんな日もあります。
そこで、筋トレを始める前に自分の状態を確認してみましょう。
・いつもより息苦しくないか
・咳や痰が急に増えていないか
・発熱していないか
・強い疲労感がないか
・胸の痛みがないか
・めまいやふらつきがないか
・動悸がいつもより強くないか
・食事や水分が十分に取れているか
特に注意したいのが、「いつもと違う症状」です。
COPDでは、症状が急に悪化する「増悪」が起こることがあります。
例えば、普段より息苦しさが強くなったり、咳や痰が増えたり、痰の性状が変化したりする場合があります。
こうした状態で、「せっかく筋トレを始めたから」と無理をする必要はありません。
むしろ、身体が出しているサインを無視して運動を続けることのほうが問題です。
一方で、COPDの増悪時でも、状態を確認しながら早期から適切な運動療法を行うことが有効な場合があります。
2024年のシステマティックレビュー・メタ解析では、COPD増悪で入院した患者に対して、入院48時間以内から運動療法を開始した研究を検討し、退院時の運動能力や身体機能の改善が認められ、重大な有害事象は報告されませんでした。
ここから分かるのは、
「増悪=絶対安静」でもない
ということです。
ただし、これは医療者による評価・管理のもとで行われた研究です。
自宅で「増悪しているけど、自分で頑張って筋トレしよう」という意味ではありません。
症状が普段と違うときは、まず主治医や医療職に相談することが大切です。
2. 運動中の息切れとSpO₂をどう考える?
COPDの筋トレで、多くの人が気になるのが「息切れ」です。
筋トレをすると、ある程度息苦しくなることがあります。
しかし、
息苦しくなった=運動が危険
とは限りません。
運動では身体がより多くの酸素を必要とするため、呼吸が速くなったり、息切れを感じたりすることがあります。
大切なのは、その程度と変化です。
「いつもの運動で感じる範囲なのか」
「休めば落ち着くのか」
「普段とは明らかに違う息苦しさなのか」
を確認します。
ここで役立つのが、息切れの主観的な評価です。
例えば「0=まったく苦しくない」「10=これ以上ないほど苦しい」といった尺度を使って、自分の息苦しさを数字で表す方法があります。
数字そのものよりも、
「今日はいつもより苦しい」
「前回より楽にできた」
といった変化を見ることが大切です。
また、パルスオキシメーターを使用している人では、SpO₂を確認することがあります。
ただし、
SpO₂の数字だけで運動の可否を自己判断しないこと
が重要です。
同じSpO₂でも、その人の普段の値や病状によって意味が変わります。
また、パルスオキシメーターは測定条件によって誤差が出ることもあります。
指先が冷えている。
身体を動かしている。
測定器がずれている。
こうした状況では数値が安定しないこともあります。
そのため、
「SpO₂が○%だから絶対に大丈夫」
「○%まで下がったから必ず危険」
と単純に考えるのは適切ではありません。
医師から運動時の酸素飽和度について具体的な指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
特に在宅酸素療法を行っている場合は、運動時の酸素流量を自己判断で変更しないことが大切です。
酸素を使用している人は、
「運動するときは何L/分にするのか」
「歩くときと安静時で流量は違うのか」
などを主治医や呼吸リハビリテーションの担当者に確認しておきましょう。
3. 息を止めない・無理に追い込まない
筋トレをするときに、もう一つ注意したいのが「呼吸」です。
重いものを持つときに、
「うっ!」
と息を止めてしまうことがあります。
これはCOPDの人に限らず、筋トレでは注意したいポイントです。
息を止めて力むと、血圧が大きく変化することがあります。
特に高血圧や心臓病などを合併している人では、より慎重に行う必要があります。
基本的には、
力を入れるときに息を吐く
ことを意識すると分かりやすいでしょう。
例えば、椅子から立ち上がるなら、
「立つときに吐く」
「座るときに吸う」
というように、動作と呼吸を合わせてみます。
もちろん、完璧に呼吸を合わせる必要はありません。
「息を止めない」
という意識だけでも大きな違いがあります。
そしてもう一つ。
限界まで追い込まないこと。
筋トレというと、
「筋肉が動かなくなるまでやる」
「汗だくになるまでやる」
というイメージを持つ人もいます。
しかし、COPDの運動療法では、必ずしもそこまで追い込む必要はありません。
2024年のメタ解析では、COPD患者の下肢筋力トレーニングについて、高負荷と低〜中等度負荷のどちらでも筋力や運動能力の改善が期待できることが示されています。
つまり、
重ければ重いほど正解ではない
ということです。
例えば、スクワットを10回行うとして、
「10回目で絶対に立てない」
ところまで追い込むのではなく、
「あと数回できそうだけど、ここで終わっておこう」
くらいから始めてもいいでしょう。
もちろん、適切な負荷設定は個人差があります。
肺機能、筋力、年齢、心臓の状態、普段の活動量などによって変わります。
特に運動経験が少ない人は、理学療法士などにフォームや負荷を確認してもらうと安心です。
4. COPDの増悪や持病がある場合はどうする?
COPDの人は、COPDだけを抱えているとは限りません。
高血圧。
心臓病。
糖尿病。
骨粗鬆症。
不整脈。
呼吸器感染症。
こうした病気を一緒に持っていることもあります。
そのため、筋トレを考えるときには「肺だけ」を見ないことが重要です。
例えば心臓病がある場合、息切れがCOPDだけによるものとは限りません。
胸痛や強い動悸、失神しそうな感覚などがあれば、単純に「COPDの息切れだろう」と決めつけてはいけません。
また、骨粗鬆症がある場合は、転倒や無理な負荷にも注意が必要です。
特に高齢者では、筋力だけでなくバランス能力が低下している場合もあります。
近年の研究では、COPD患者の肺リハビリテーションにバランストレーニングを加えることで、バランス能力や生活の質が改善する可能性も報告されています。
つまり、
「筋肉を鍛える」
だけでなく、
「転ばずに動ける身体をつくる」
という視点も大切です。
そして、筋トレを中止して医療機関への相談を優先したほうがいい症状もあります。
例えば、
強い胸痛がある。
失神や意識が遠のく感じがある。
突然、普段とは明らかに違う強い息苦しさが出た。
強い動悸が続く。
唇や顔色が明らかに悪い。
発熱や咳、痰などの症状が急に悪化した。
こうした場合は、無理に運動を続けないでください。
「筋トレで身体を鍛えること」よりも、「今の身体の状態を確認すること」が優先です。
また、吸入薬などの治療薬についても、自己判断で中止・増量・減量しないことが重要です。
運動時に息苦しさが強い場合は、「筋力不足だから」と考えるだけではなく、現在の治療が適切かどうかを主治医に相談してみましょう。
5. 安全に続けるためには「少しずつ」が基本
COPDの筋トレで最も大切なのは、
一回頑張ることではなく、長く続けること
です。
最初から高い目標を設定すると、息切れや疲労が強くなって、結局続かなくなってしまうことがあります。
そこで、最初は小さく始めます。
例えば、自宅であれば椅子からの立ち座り。
かかと上げ。
膝伸ばし。
ゴムバンドを使った腕の運動。
こうした簡単な運動から始める方法があります。
2025年のCOPD運動療法ガイドラインでも、特別な設備を必要としない運動や、弾性バンドを使った運動が選択肢として示されています。
そして、
「楽にできるようになってきた」
「翌日に疲れが残りすぎなくなった」
「同じ運動でも息切れが少なくなった」
という変化が出てきたら、少しずつ負荷を調整します。
例えば回数を増やす。
セット数を増やす。
ゴムバンドを少し強くする。
動作をゆっくりにする。
こうした方法があります。
また、筋トレだけを頑張る必要もありません。
COPDの肺リハビリテーションでは、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせる方法が重視されています。
2025年のネットワークメタ解析では、安定したCOPD患者に対して、有酸素運動・筋力トレーニング・呼吸筋トレーニングを組み合わせた複合的なプログラムが、6分間歩行距離の改善につながったと報告されています。
つまり、
「筋トレだけ」
ではなく、
「歩く+筋トレ+必要に応じて呼吸に関するトレーニング」
というように組み合わせることで、より日常生活につながる運動になる可能性があります。
ただし、どのくらい行うのが適切かは、その人の状態によって違います。
特に重症COPD、在宅酸素療法中、心疾患などの合併症がある場合は、自己流で運動量を増やすのではなく、医療者に相談しながら進めるのがおすすめです。
おわりに|大切なのは「頑張ること」より「安全に続けること」
COPDの人が筋トレをするときに、一番避けたいのは、
「息苦しいけど、頑張らないと筋肉がつかない」
と無理をしてしまうことです。
筋肉を守ることは大切です。
でも、筋トレは「限界まで追い込むこと」ではありません。
COPDの状態を確認しながら、自分に合った負荷で続けていくことが重要です。
特に意識したいのは、
体調を確認する。
息を止めない。
無理に追い込まない。
いつもと違う症状があれば運動を中止する。
必要なら医療者に相談する。
この5つです。
そして、COPDでは「息苦しいから動かない」という生活が続くことで、筋力が低下し、さらに身体を動かしにくくなるという悪循環が起こることがあります。
だからこそ、できる範囲で身体を動かすことには意味があります。
近年の研究でも、筋力トレーニングはCOPD患者の筋力や運動能力、日常生活動作、生活の質を改善する可能性が示されています。
ただし、筋トレの効果は「どれだけ頑張ったか」だけで決まるものではありません。
「自分の身体に合った運動を、無理なく続けられたか」
これが大切です。
COPDだから筋トレを諦める必要はありません。
一方で、「COPDだから頑張って鍛えなければ」と焦る必要もありません。
まずは椅子から立ち上がる。
少し歩く。
軽い運動をする。
そして、身体の反応を確認する。
そんな小さなところから始めてみましょう。
呼吸を整えながら身体を動かし、筋肉を守る。
その積み重ねが、将来も「歩く」「立つ」「外出する」といった、自分らしい生活を続けるための力になります。
COPDの運動では、「頑張る」より「安全に続ける」。
この考え方を大切にしていきましょう。
これを機に保険の見直しはいかがでしょうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
- ASSOBRAFIR. Clinical practice guidelines in respiratory physical therapy: Exercise-based interventions in people with chronic obstructive pulmonary disease (COPD). 2025.
- Barreiro Blanco M, Rodríguez-Gude C, Da Cuña-Carrera I, Lantarón-Caeiro E. Effects of strength training in patients with COPD: a systematic review. Expert Review of Respiratory Medicine. 2026;20(2):189-197.
- Chen T-A, Mao S-T, Chen T-T, et al. Optimal Pulmonary Rehabilitation Program and Timing of Program Initiation for Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Journal of Cardiopulmonary Rehabilitation and Prevention. 2025;45(5):318-326.
