COPDでも筋トレは行ってもいいの?
目次
- はじめに|COPDでも筋トレをして大丈夫?
- COPDで筋肉が落ちやすくなる理由
- 筋トレにはどんなメリットがある?
- COPDの筋トレは「息苦しさ」とどう付き合う?
- 安全に筋トレを行うためのポイント
- おわりに|「息苦しいから動かない」が一番の落とし穴
はじめに|COPDでも筋トレをして大丈夫?
「COPDと言われたけど、筋トレをしても大丈夫なの?」
そう疑問に思う方は少なくありません。
COPDは、肺や気道の状態によって息苦しさが出やすくなる病気です。
少し歩いただけでも息が切れる。
階段を上ると苦しい。
着替えや掃除をするだけでも疲れる。
そんな経験があると、
「こんな状態で筋トレなんてしたら、もっと息苦しくなるのでは?」
と思ってしまうのも無理はありません。
しかし、結論から言えば、COPDだから筋トレをしてはいけない、ということはありません。
むしろ、適切な方法で行う筋力トレーニングは、COPDのリハビリテーションにおいて重要な運動の一つです。
2026年版のGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)でも、呼吸リハビリテーションの運動内容として、持久力トレーニングだけではなく、レジスタンス・筋力トレーニングが位置づけられています。
週2回以上の監督下での運動も推奨され、内容や強度は一人ひとりに合わせて調整することが重要とされています。
さらに近年のシステマティックレビューでも、COPD患者に対する筋力トレーニングは、筋力だけでなく運動能力や日常生活動作、生活の質などにも良い影響を与える可能性が示されています。
つまり、
「息苦しいから筋トレをしない」
ではなく、
「息苦しさがあるからこそ、自分に合った方法で筋肉を守る」
という考え方が大切です。
1. COPDで筋肉が落ちやすくなる理由
COPDというと「肺の病気」というイメージが強いでしょう。
もちろん肺や気道の問題はCOPDの中心です。
しかし、COPDの影響は肺だけにとどまりません。
筋肉にも影響することがあります。
特に問題になるのが、息苦しさによる活動量の低下です。
「歩くと苦しいから、なるべく歩かない」
「階段はしんどいから避ける」
「外出するのが疲れるから家にいる」
このような生活が続くと、身体を動かす機会が減っていきます。
そして身体を動かさない状態が長く続くと、筋肉は少しずつ弱くなっていきます。
さらに、
・食欲が低下する
・体重が減少する
・栄養状態が悪くなる
・加齢による筋肉減少が重なる
・COPDの増悪で活動量がさらに落ちる
といったことも重なります。
すると、
「筋肉が落ちる」
↓
「身体を動かすのが大変になる」
↓
「さらに動かなくなる」
↓
「もっと筋肉が落ちる」
という悪循環が起こりやすくなります。
ここが非常に重要です。
COPDでは、息苦しさを避けるために動かなくなってしまうことがあります。
しかし、動かないことによって筋肉が弱くなると、今度は少しの動作でも身体に負担がかかりやすくなります。
その結果、以前よりも息切れしやすく感じることがあります。
つまり、COPDの運動療法では、
「肺だけを見る」のではなく、「肺と筋肉を一緒に考える」
ことが大切なのです。
2. 筋トレにはどんなメリットがある?
では、COPDの人が筋トレを行うと、どんなメリットがあるのでしょうか。
まず大きいのが、筋力を維持・改善できることです。
COPDでは特に下半身の筋力低下が問題になることがあります。
太ももやお尻の筋肉が弱くなると、
・椅子から立つ
・階段を上る
・買い物に行く
・長く歩く
・荷物を持つ
といった日常生活の動作が大変になります。
そこで筋トレを行い、脚の筋力を維持する。
これだけでも「生活のしやすさ」が変わってくる可能性があります。
近年のシステマティックレビューでは、COPD患者に対する筋力トレーニングによって、運動能力、筋力、日常生活動作、生活の質などの改善が報告されています。
また、2024年のメタ解析では、COPDの人に対する下肢のレジスタンストレーニングについて、高負荷だけでなく低〜中等度の負荷でも筋力や運動能力の改善が期待できることが検討されています。
ここで注目したいのが、
「重たい重量を持たなければ意味がない」わけではない
ということです。
COPDの方が筋トレを始める場合、最初から高重量を扱う必要はありません。
自分の体力に合わせて、
「椅子から立ち座りをする」
「軽い負荷で脚を動かす」
「かかと上げをする」
などから始めても構いません。
筋肉に刺激を与えることが重要です。
そして筋肉がついてくると、日常生活の動作が楽になる可能性があります。
「歩くために歩く」だけではなく、
「歩くための筋肉を鍛える」
という発想も大切なのです。
3. COPDの筋トレは「息苦しさ」とどう付き合う?
ここが、COPDの筋トレで最も不安に感じやすいところでしょう。
「筋トレをしたら息が苦しくならない?」
もちろん、運動すればある程度の息切れが出ることはあります。
しかし、息切れが出ること=運動してはいけない、ではありません。
COPDの運動療法では、息苦しさや疲労感を確認しながら運動強度を調整します。
GOLDでは、運動療法の内容や強度、頻度などを一人ひとりに合わせることが重要とされています。
また、筋トレには興味深い特徴があります。
ウォーキングや自転車などの持久力運動と比べると、筋トレでは一つの筋肉群に短時間の負荷をかけて休むことができます。
そのため、呼吸困難が強くて長時間の有酸素運動が難しい人でも、筋力トレーニングを組み合わせることで運動の選択肢を広げられる場合があります。
もちろん、筋トレ中にまったく息苦しくならないわけではありません。
大切なのは、
「息苦しさをゼロにする」のではなく、「安全な範囲でコントロールする」
ことです。
例えば、
少ない回数から始める。
セット間に休憩を入れる。
負荷を下げる。
動作をゆっくり行う。
必要に応じて酸素療法を利用する。
こうした調整を行います。
また、筋トレだけにこだわる必要もありません。
COPDの呼吸リハビリテーションでは、筋力トレーニング、歩行や自転車などの持久力トレーニング、呼吸筋トレーニングなどを組み合わせる方法があります。
2025年に発表されたネットワークメタ解析でも、安定したCOPD患者では、持久力・筋力・呼吸筋トレーニングを組み合わせた複合的なプログラムが、通常ケアと比較して6分間歩行距離を改善したことが報告されています。
つまり、
筋トレか有酸素運動か
ではなく、
自分の状態に合わせて組み合わせる
という考え方が重要です。
4. COPDの人が筋トレをするときの注意点
「筋トレをしてもいい」といっても、誰でも自己流で強い運動をしていいわけではありません。
COPDは症状や重症度、併存疾患などに個人差があります。
そのため、特に初めて運動を始める場合は、医師や理学療法士などの医療職に相談しながら進めるのがおすすめです。
特に確認したいのが、
・現在の呼吸状態
・運動時の息切れ
・酸素飽和度
・心拍数
・血圧
・運動耐容能
・筋力
・増悪の有無
・心臓などの合併症
などです。
GOLDでも、呼吸リハビリテーションを開始する際には、運動能力だけでなく、息切れや疲労、身体機能、下肢筋力などを含めて評価し、個別にプログラムを組むことが推奨されています。
そして、COPDでは「いつもの息切れ」と「いつもと違う症状」を区別することも大切です。
例えば、
急に息苦しさが強くなった。
普段より咳や痰が増えた。
痰の色が変わった。
発熱がある。
強い胸痛がある。
動悸やふらつきが強い。
こうした場合は、無理に運動を続けるのではなく、医療機関への相談を優先してください。
特にCOPDの急性増悪が疑われる状態では、通常のトレーニングをそのまま続けるのではなく、治療と状態の安定を優先する必要があります。
また、運動中に「頑張らないと効果がない」と考えるのも危険です。
筋肉を鍛えることと、限界まで追い込むことは同じではありません。
COPDの運動では、
「安全に続けられること」
が非常に重要です。
5. 自宅で始めるなら何をすればいい?
「筋トレが大切なのは分かった。でも、ジムには行けない」
そんな方もいるでしょう。
実は、自宅でもできる運動があります。
例えば、最初の一歩として取り入れやすいのが「椅子からの立ち座り」です。
安定した椅子を用意して、ゆっくり立ち上がる。
そして、ゆっくり座る。
これだけでも太ももやお尻の筋肉を使います。
ほかにも、
・かかと上げ
・膝伸ばし
・軽いスクワット
・壁を使った腕の運動
などがあります。
ただし、回数や負荷は人によって違います。
10回できる人もいれば、3〜5回で十分な人もいます。
「何回やれば正解」というより、
今の自分にとって無理のない負荷から始める
ことが大切です。
そして、可能であれば筋トレだけでなく、歩行などの有酸素運動も組み合わせます。
GOLDでは、肺リハビリテーションに持久力運動、レジスタンス・筋力トレーニングなどを組み合わせることが推奨されています。
例えば、
月曜日は筋トレ。
火曜日は軽いウォーキング。
水曜日は休む。
木曜日は筋トレ。
金曜日は軽いウォーキング。
というように、無理なく分散させてもいいでしょう。
もちろん、これはあくまで一例です。
大切なのは、自分の症状や体力に合わせて調整することです。
また、吸入薬を使用している方では、薬の種類や使用タイミングによって運動時の呼吸状態が変わることがあります。
GOLDでも、気管支拡張薬による治療を最適化することで、運動トレーニングの効果を高められる可能性が示されています。
薬を自己判断で増減するのではなく、運動時の息切れについて主治医に伝えることも大切です。
おわりに|「息苦しいから動かない」が一番の落とし穴
COPDになると、
「息苦しいから動かないほうがいい」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、長い目で見ると、動かないことによって筋肉が弱くなり、さらに身体を動かしにくくなるという悪循環につながることがあります。
だからこそ、COPDのリハビリテーションでは「呼吸」だけでなく「筋肉」も大切にします。
筋トレは、COPDだから禁止される運動ではありません。
むしろ、適切に行えば筋力や身体機能を支える大切な手段です。
近年の研究でも、COPDに対する筋力トレーニングは安全かつ有効な治療選択肢になり得ることが示されています。
ただし、ここで大切なのは、
「頑張れば頑張るほどいい」ではない
ということです。
COPDの状態は一人ひとり違います。
息切れの程度も違えば、筋力も違う。
酸素療法が必要な人もいれば、心臓など別の病気を抱えている人もいます。
だからこそ、自分に合った運動強度を見つけることが重要です。
「筋トレを始めたいけど怖い」
という人は、まず主治医や理学療法士に相談してみてください。
そして、必要であれば肺リハビリテーションを利用する。
最初は椅子から立つだけでもいい。
少し歩くだけでもいい。
大切なのは、完全に動かなくなるのではなく、今の自分にできる範囲で身体を使い続けることです。
COPDの治療というと、吸入薬や禁煙などに目が向きがちです。
もちろん、それらは非常に重要です。
でも、それと同じように、
「呼吸をしながら身体を動かす」
「筋肉を守る」
「できることを少しずつ増やす」
という視点も大切です。
息苦しさがあるからこそ、正しい方法で身体を動かす。
その積み重ねが、将来の「歩く」「立つ」「外出する」といった生活を支える力につながっていきます。
COPDだから筋トレを諦める必要はありません。
大切なのは、無理をすることではなく、安全に、自分に合った方法で続けることです。
これを機に保険の見直しはいかがでしょうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2026 Report. 2026.
- Effects of strength training in patients with COPD: a systematic review. 2025. COPD患者における筋力トレーニングの効果について、運動能力、筋力、日常生活動作、生活の質などを検討したシステマティックレビュー。
- Topcuoğlu C, Sağlam M, Vardar Yağlı N. Comparison of the effects of high and low-moderate load lower limb resistance training on muscle strength and exercise capacity in individuals with COPD: A systematic review and meta-analysis. Heart & Lung. 2024;64:107-116.
