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中年女性に多い「ストレス性呼吸障害」って知っていますか?

今回は、中年女性に多い「ストレス性呼吸障害」について説明していきます。

呼吸療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!

はじめに

中年期の女性は、人生の中でも特に多くの変化と責任を抱える時期です。

家庭では子育てや親の介護、職場ではキャリアのピークや責任の増加、更には自らの体調の変化と、更年期を迎えることによるホルモンバランスの変化も重なり、心身に大きなストレスがかかりやすくなります。

こうした複合的なストレス要因により近年注目されているのが、「ストレス性呼吸障害(過換気症候群)」です。

これは呼吸の乱れを伴う身体・心理的症状を引き起こすものであり、単なる息苦しさとは異なり、日常生活に大きな支障を来すこともあります。

特に中年女性に多く見られるこの症状について、原因からメカニズム、具体的な対処法に至るまで詳しく解説していきます。


1. ストレス性呼吸障害とは?

概要

ストレス性呼吸障害は、精神的・心理的なストレスにより呼吸のリズムが乱れ、必要以上に呼吸をしてしまう状態、いわゆる「過換気(ハイパーベンチレーション)」によって引き起こされる症候群です。

この状態では、血液中の二酸化炭素濃度が過度に低下し、身体にさまざまな不快症状を引き起こします。

主な症状

  • 呼吸困難や息苦しさ

  • 胸部圧迫感や痛み

  • 手足のしびれ、冷感

  • めまい、ふらつき

  • 強い不安感、パニック発作

  • 意識が遠のく感覚や失神

これらの症状が突然現れ、かつ医療機関での検査で器質的な異常(心臓や肺の病気など)が見られない場合、このストレス性呼吸障害が疑われます。

中年女性に多い理由

  • 更年期に伴うエストロゲンの減少が、自律神経の乱れを招きやすくなる

  • 家族や職場での役割の多さによる慢性的なストレス

  • 自分の体調より他者を優先しがちな傾向が、自覚の遅れを招く

 


2. 発症のメカニズムと脳・身体の反応

過換気が起こると、体内では次のような生理的変化が連鎖的に起こります:

  • 呼吸数の増加 → 血中CO₂の低下 → 血管収縮 → 脳や四肢への血流減少

  • アルカローシス(血液のpHがアルカリ性に傾く) → 筋肉のけいれんやしびれを誘発

  • 自律神経の不均衡 → 不安や焦燥感が増幅

また、近年の研究では、この状態が脳の前頭葉の過活動により引き起こされる「ストレス反応」と深く関係していることも示唆されています。

特に感情制御や自己認識に関わる脳領域の活性化が、過剰な呼吸制御と連動しているという知見もあります。


3. 日常生活での対応と医療的介入

呼吸のコントロール法

  • 腹式呼吸法:鼻から息をゆっくり吸い、お腹を膨らませる。口から細く長く吐く。これを5分間続けるだけで、自律神経が安定し、発作を和らげる効果が報告されています。

  • 紙袋呼吸法(過換気が急性の場合のみ):CO₂の再吸入を促し、血液のpHバランスを整えるが、医師の指導が必要。

ストレス管理

  • 定期的な運動(ウォーキングや軽いストレッチ)

  • 瞑想やマインドフルネスの導入

  • 自分のための時間を確保する「メンタル休暇」

医療機関での治療

  • 心療内科でのカウンセリングや認知行動療法(CBT)

  • 必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬の使用

  • 呼吸リハビリや行動療法を取り入れた呼吸器内科での対応

 


おわりに

ストレス性呼吸障害は、身体的な異常が検出されにくいために、「気のせい」「心が弱いから」と軽視されがちですが、れっきとした心身症のひとつであり、特に中年女性に多く発症する傾向が確認されています

大切なのは、こうした症状に気づいたとき、自分自身を責めるのではなく、ストレスとの付き合い方を見直すきっかけとすることです。

また、適切な医療支援を受けることで、症状は確実に改善します。

家族や職場の理解も得ながら、自分らしく健康的に生きるための選択肢として、積極的なケアを選んでいきましょう。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました


参考文献

  1. 済生会「過換気症候群とは」

  2. Cleveland Clinic「Hyperventilation Syndrome: Symptoms, Causes & Treatment」
    https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24860-hyperventilation-syndrome

  3. 更年期ラボ「更年期障害の症状と原因」

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