今回は、介護離職した人が語る言葉を一つ一つお話していきます
医療従事者と働いてきた、実際の経験談を語りますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
「親の介護が必要になったから、仕事を辞めるしかなかった」
そんな理由で年間約9万人が介護離職しているというのが日本の現状です(厚生労働省・令和4年度調査)。
それは突然訪れる「人生の分岐点」であり、仕事・収入・社会的つながりを手放す選択でもあります。
介護離職を経験した人の声には、「辞めて良かった」と語る人と**「あのとき、もう少し違う選択ができたかも」と悔やむ人**がいます。
この記事では、両者のリアルな体験談をベースに、「辞めた先の現実」と「本当に大事な選択の軸」を整理しながら、今まさに岐路に立っている方のヒントになるよう構成しています。
1. 「辞めてよかった」と語る人の本音と戦略
● ケース①:50代女性・介護歴5年・正社員→離職
- 母が末期のがんと診断され、通院・入浴・排泄すべての介助が必要に
- フルタイムで働きながらの介護が限界に達し、退職を決意
- 在宅で看取ることができ、「自分の選択を後悔していない」と語る
実感された“よかったこと”
- 親との時間を密に持てたことで「後悔がない」
- 介護を通して自分の人生観が変わった
- 介護後は地域福祉で働く道に進み、第二のキャリアを築けた
ポイント
- 離職後に「どう再スタートするか」の準備をしていた
- 介護保険制度や地域の支援をフル活用
- 精神的な満足度が「収入」よりも勝ったケース
● ケース②:40代男性・中小企業勤務→独立開業
- 父が脳梗塞で半身不随に、週末だけの通い介護では限界
- 仕事を辞め、実家に戻って介護を担う決断を下す
- 数年後、父を看取ったあと、趣味だったWEB制作で個人事業を開業
「辞めてよかった」と思えた理由
- 家族関係が劇的に改善された
- “社会に縛られない働き方”を構築できた
- 介護で得た経験が、仕事にも活きている
成功のカギ
- 会社を辞めた後の「収入経路」を準備していた
- 介護中も自己研鑽を止めず、将来を見据えていた
2. 「後悔している」と語る人の現実と選択ミス
● ケース③:30代女性・未婚・派遣社員→介護離職
- 認知症の母と同居するため、仕事を辞めたが…
- 数ヶ月で精神的に追い詰められ、引きこもり状態に
- ケアマネとの連携が遅れ、サービス利用も不十分だった
後悔の理由
- 経済的な見通しが甘く、貯金が半年で底をついた
- 介護の“全部を自分で抱えた”ことで、心が壊れた
- 社会から切り離された感覚がつらかった
復職への苦労
- ブランク2年後、再就職活動で年収が半減
- 「キャリアを戻すのに何年もかかった」と語る
● ケース④:60代男性・役職者→早期退職・離職
- 「親のために」と早期退職したが、親が施設に入所した後に時間を持て余す
- 経済的には年金と貯金で賄えるが、**「社会的存在感がなくなった」**と喪失感に苦しむ
よくある誤算
- 介護が“思ったより短期間で落ち着いた”
- 辞めた後の「自分の役割」がなくなり、アイデンティティを失った
- “家族の期待”と“自分の感情”の間で疲弊
3. 介護離職を「正解」にするための3つの視点
✅ ① 離職以外の選択肢を徹底的に探す
- 介護休業(最大93日+給付金67%)
- 短時間勤務やフレックスタイム、テレワークの活用
- 地域包括支援センターやケアマネとの早期連携で支援体制構築
- 訪問介護・デイサービス・ショートステイの組み合わせで在宅介護の時間負担を軽減
「仕事を辞める」前に、「今の仕事を変える」手段がないかを必ず探る。
✅ ② 離職後の「生活再設計」の準備をする
- 経済面:最低1年分の生活費を確保。民間介護保険や失業手当の活用も検討
- 心理面:メンタルヘルス対策、カウンセリングなどの支援先を確保
- 社会面:地域とのつながりをつくる、コミュニティ活動に参加する
離職は「終わり」ではなく「始まり」。新しい軸を持つ準備があれば、人生が前に進む。
✅ ③ 感情だけで決断しないために「第三者の視点」を入れる
- ケアマネ、介護福祉士、社会福祉士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家
- 家族・職場の上司・同じ立場の介護経験者など、客観的なアドバイスをくれる人
- SNSやピアサポートでの声も視野に入れる
自分の決断を「広い視点」で支える仕組みを整えておくと、後悔が減る。
おわりに
介護離職という選択に「正解」はありません。でも、「後悔しない準備」はできます。
仕事を辞めるのが悪いわけではない。
ただ、辞める前に“使える制度”と“考える時間”を確保しておくだけで、その後の人生が大きく違ってくるのです。
辞めたからこそ見える景色もあれば、辞めなかったからこそ守れたものもあります。
大切なのは、「辞めたかどうか」ではなく、その決断をどう活かすかという視点です。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- 厚生労働省「令和4年度 介護離職者実態調査報告書」
- 日本老年学会『介護者支援と離職予防に関する提言』2023年版
- OECD: Addressing the Impact of Informal Caregiving on Employment (2023)