今回は、慢性疲労の背後にある病気について説明していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
「しっかり寝ているのに疲れが取れない」「朝起きても体がだるい」と感じたことはありませんか?
現代社会では、多くの人が慢性的な疲労を抱えています。
単なる疲れなら休息を取れば回復するはずですが、 慢性的な疲れが続く場合、背後に何らかの病気が潜んでいる可能性があります。
今回は、
- 寝ても疲れが取れないのはなぜ?主な原因とは
- 慢性疲労の背後にある病気とは?
- 慢性疲労を改善するための方法
をもとに、「寝ても疲れが取れない原因」や「慢性疲労を引き起こす病気」 について詳しく解説します。
日本や海外の最新の研究データも交えながら、改善策についても考えていきます。
1. 寝ても疲れが取れないのはなぜ?主な原因とは
慢性的な疲れが取れない原因は多岐にわたりますが、大きく分けて 「生活習慣によるもの」「心理的ストレス」「病気が関与するもの」 の3つに分類できます。
① 生活習慣の乱れによる疲労
日々の生活習慣が乱れることで、体が十分に回復できなくなることがあります。
- 睡眠の質が悪い
- スマホやパソコンのブルーライトによる影響
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)による呼吸の中断
- 寝具や寝室の環境が不適切(枕が合わない、騒音、温度が合わない)
- 栄養不足
- 鉄分やビタミンB群の不足が原因で、エネルギー不足に
- タンパク質不足による筋肉の回復遅れ
- 運動不足または過度な運動
- 運動不足で血流が悪化し、老廃物が溜まりやすくなる
- 逆に過度な運動で体が疲労から回復できない
② 心理的ストレスと自律神経の乱れ
ストレスが蓄積すると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が過剰に働くことで疲れが取れなくなります。
- 仕事や人間関係のストレス → 慢性的な交感神経の興奮状態
- うつ病や適応障害 → セロトニン不足により疲労感が持続
- ストレスによるホルモン異常 → 副腎疲労症候群(コルチゾールの分泌異常)
③ 病気が関与している場合
単なる生活習慣の乱れではなく、 病気が隠れている可能性 もあります。特に以下のような疾患が関与しているケースがあります。
- 甲状腺機能低下症 → 甲状腺ホルモン不足による代謝低下
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS) → 寝ている間に呼吸が止まり、十分な睡眠が取れない
- 慢性疲労症候群(CFS) → ウイルス感染や免疫異常による長期的な疲労
- 貧血(鉄欠乏性貧血) → 酸素供給不足で倦怠感が続く
- 糖尿病や低血糖症 → 血糖値の乱れによる疲労感
2. 慢性疲労の背後にある病気とは?
疲労が長期間続く場合、 特定の病気 が関与している可能性があります。
ここでは、慢性疲労を引き起こす主な病気について詳しく見ていきましょう。
① 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
特徴:睡眠中に呼吸が止まり、低酸素状態が続く
症状:日中の強い眠気、朝の頭痛、集中力の低下
研究によると、 SAS患者の約40%が慢性的な疲労を訴えている ことが分かっています(American Academy of Sleep Medicine, 2023)。
② 甲状腺機能低下症
特徴:甲状腺ホルモンの分泌が低下し、代謝が落ちる
症状:倦怠感、体重増加、むくみ、寒がり
甲状腺機能低下症は特に 40代以上の女性に多い ことが知られています。血液検査(TSH, FT4)で診断が可能です。
③ 慢性疲労症候群(CFS)
特徴:6か月以上続く原因不明の強い疲労
症状:極度の疲労、筋肉痛、思考力の低下、微熱
最新の研究では、 ウイルス感染後の免疫異常 が関与している可能性が指摘されています(Nature Medicine, 2024)。
④ 副腎疲労症候群
特徴:ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌異常
症状:朝起きられない、ストレス耐性の低下、食後の眠気
長期間のストレスで副腎が疲弊し、 ホルモンの分泌が乱れる ことで慢性的な疲労が発生します。
3. 慢性疲労を改善するための方法
疲労を改善するには、 原因を特定し、適切な対策を取ることが重要 です。
① 睡眠の質を向上させる
- 寝る90分前にスマホやPCを控える
- 寝室の温度を18~22℃に調整
- 必要に応じてCPAP(SASの治療)を使用
② 栄養バランスを整える
- 鉄分(レバー、ほうれん草)やビタミンB群(豚肉、卵)を摂取
- タンパク質(鶏肉、大豆)を積極的に摂る
③ ストレス管理を行う
- 適度な運動(ウォーキングやヨガ)を取り入れる
- マインドフルネスや瞑想を実践
④ 必要に応じて医療機関を受診
- 睡眠時無呼吸症候群→ 睡眠外来 で検査
- 甲状腺機能低下症→ 内分泌科 で血液検査
- 慢性疲労症候群→ 専門医 に相談
おわりに
「寝ても疲れが取れない…」と感じるとき、単なる生活習慣の問題ではなく、 隠れた病気が関与していることがあります。
特に、 睡眠時無呼吸症候群や甲状腺機能低下症 などは見逃されやすい病気の一つです。
原因を正しく理解し、適切な対策を取ることで、 本来のエネルギーを取り戻すことが可能 です。
日々の生活を見直し、必要であれば専門医の診察を受けましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- American Academy of Sleep Medicine, 2023. “Sleep Apnea and Chronic Fatigue”
- Nature Medicine, 2024. “Chronic Fatigue Syndrome and Post-Viral Immune Dysfunction”
- 日本内分泌学会, 2023. 「甲状腺機能低下症の診断と治療」