今回は、大動脈解離ってどんな病気?について説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
-
はじめに
-
大動脈解離とは何が起きている病気なのか
-
なぜ起こる?大動脈解離の原因とリスク因子
-
見逃してはいけない症状と発症時の特徴
-
治療と予後 ― 命を守るために何が行われるのか
-
心リハ指導士が伝えたい再発予防と生活管理
-
おわりに
-
参考文献
はじめに
「大動脈解離」という言葉を聞くと、多くの人が「突然死」「助からない病気」という強いイメージを持つかもしれません。
確かに大動脈解離は、発症直後の対応が生死を分ける極めて重篤な疾患です。
しかし一方で、医療の進歩と適切なリハビリ・生活管理によって、発症後も長く安定した生活を送れる人が増えているのも事実です。
私は心臓リハビリテーション(心リハ)に関わる立場として、急性期治療を乗り越えた患者さんが「再び安心して生活する」ための支援に携わってきました。
本記事では【大動脈解離ってどんな病気?心リハ指導士が徹底解説!】をテーマに、
-
病気の仕組み
-
発症の背景
-
症状の見分け方
-
治療後に本当に大切なこと
を、専門知識を噛み砕いて分かりやすく解説します。
大動脈解離とは何が起きている病気なのか
ポイント
-
大動脈の壁が裂ける
-
血管の内側が剥がれる
-
血流が二重になる
-
全身臓器に影響
本文
大動脈解離とは、心臓から全身へ血液を送る大動脈の壁が内側から裂ける病気です。
大動脈は三層構造になっており、内膜に亀裂が入ると、血液が壁の中に流れ込み、本来の血管とは別の「偽の通り道(偽腔)」を作ります。
この状態が進行すると、
-
脳
-
心臓
-
腎臓
-
腸
などへの血流が障害され、一気に命の危険が高まります。
特に上行大動脈に起こる「Stanford A型」は、緊急手術が必要となる代表的な重症型です。
なぜ起こる?大動脈解離の原因とリスク因子
ポイント
-
高血圧が最大要因
-
動脈硬化の進行
-
遺伝性疾患
-
急激な血圧上昇
本文
大動脈解離の最大の危険因子は高血圧です。
長年の高血圧により血管壁が傷み、ある瞬間に耐えきれず裂けてしまいます。
海外の大規模研究では、大動脈解離患者の約7割以上に高血圧の既往があると報告されています。
また、
-
マルファン症候群
-
エーラス・ダンロス症候群
といった結合組織疾患もリスクとなります。
さらに、重い物を持つ、強くいきむ、激しい怒りなど、急激な血圧上昇が引き金になることも、心リハの現場では非常に重要な視点です。
見逃してはいけない症状と発症時の特徴
ポイント
-
突然の激痛
-
背中や胸の痛み
-
痛みが移動する
-
意識障害を伴う
本文
大動脈解離の典型的な症状は、突然起こる激しい痛みです。
「今まで経験したことがない」「引き裂かれるような」と表現されることが多く、胸から背中、腹部へと痛みが移動するのが特徴です。
また、
-
ろれつが回らない
-
片側の手足が動かない
-
失神
といった症状が出ることもあり、これは脳血流障害を示唆します。症状の多様性が、発見を遅らせる一因でもあります。
治療と予後 ― 命を守るために何が行われるのか
ポイント
-
型による治療差
-
緊急手術の重要性
-
厳格な血圧管理
-
長期フォロー必須
本文
治療は解離の部位によって大きく異なります。
Stanford A型では緊急手術が原則で、B型では内科的治療が選択されることもあります。
いずれの場合も、
-
血圧
-
心拍数
を厳密に管理し、血管への負担を最小限にすることが重要です。
近年はステントグラフト治療の進歩により、侵襲を抑えた治療も可能になっています。
心リハ指導士が伝えたい再発予防と生活管理
ポイント
-
血圧は一生管理
-
運動は制限付きで必要
-
ストレス対策重要
-
正しい知識が安心に
本文
大動脈解離は「治療が終われば安心」ではありません。再発予防と生活管理こそが本当の治療です。
心臓リハビリでは、
-
安全な運動強度
-
日常動作での注意点
-
血圧が上がりやすい行動
を具体的に指導します。運動は「怖いもの」ではなく、正しく行えば血圧安定に役立つ治療手段です。
おわりに
【大動脈解離ってどんな病気?心リハ指導士が徹底解説!】
この病気は確かに怖い。しかし、正しい理解と継続的な管理があれば、人生を取り戻すことは可能です。
-
病気を知る
-
血圧を守る
-
生活を整える
それが、再発を防ぎ、安心して生きる最大の武器になります。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
-
Hiratzka LF et al. 2010 ACCF/AHA Guidelines for the Diagnosis and Management of Patients With Thoracic Aortic Disease. Circulation.
https://www.ahajournals.org/ -
日本循環器学会「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」
-
Erbel R et al. 2014 ESC Guidelines on the diagnosis and treatment of aortic diseases. European Heart Journal
