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医療従事者が教える「腰椎圧迫骨折」について

今回は、高齢者に多く起こる「腰椎圧迫骨折」について説明していきます。

医療従事者の立場から、分かりやすく説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!

はじめに

腰椎圧迫骨折は、脊椎の構造に強い圧力がかかったときに発生する骨折で、特に高齢者や骨粗鬆症を持つ患者に頻発するため、早期の発見と適切な治療が重要です。

この骨折は、腰痛や生活動作の制限をもたらし、放置すると痛みが慢性化し、QOL(生活の質)の低下につながります。

今回は、

  1. 腰椎圧迫骨折とは
  2. 腰椎圧迫骨折の診断方法
  3. 腰椎圧迫骨折の治療方法

をもとに、腰椎圧迫骨折の基本知識から最新の治療法までを含め、わかりやすく解説していきます。


1. 腰椎圧迫骨折とは

腰椎圧迫骨折は、背骨の腰椎部分で骨が潰れ、圧縮される形で生じる骨折です。

腰椎は、腰部を支える重要な役割を果たし、日常生活の中で頻繁に使用するため、骨折が発生すると大きな支障をきたします。

主な原因

腰椎圧迫骨折の原因は、以下の2つが大きく関係しています。

  • 骨粗鬆症:特に女性や高齢者は骨密度が低下し、わずかな外力でも骨折を引き起こすリスクが高くなります。実際、骨粗鬆症による骨折の約30%は腰椎圧迫骨折だと言われています。
  • 外傷:若い年齢層でも、高所からの落下や交通事故など大きな外力が加わることで腰椎圧迫骨折を引き起こすことがあります。

症状

腰椎圧迫骨折の主な症状には以下のものがあります。

  • 急性の腰痛:骨折直後から強い痛みが生じ、動くたびに痛みが増すことが多いです。
  • 姿勢の変化:骨が潰れることで背中が丸まり、いわゆる「円背(猫背)」状態になることがあります。
  • 身長の低下:複数の腰椎が圧迫骨折を繰り返すと、骨が潰れて身長が低くなることがあります。

骨折の進行と危険性

腰椎圧迫骨折は放置すると骨の変形が進行し、慢性の腰痛や腰椎への負担増大を引き起こします。また、骨折部位が安定しないと、日常の動作だけでなく、転倒リスクや新たな骨折のリスクも増大します。

 


2. 腰椎圧迫骨折の診断方法

腰椎圧迫骨折を適切に治療するためには、早期の正確な診断が欠かせません。

ここでは、医療機関での検査や診断方法について詳しく解説します。

問診と視診

診断の第一歩として、骨折したと考えられる状況や痛みの部位について医師が詳しく聞き取ります。さらに、痛みがどの動作で生じるか、骨粗鬆症の既往歴があるかなども診断に必要な情報です。

画像検査

腰椎圧迫骨折の確定診断には、以下のような画像診断が有効です。

  • X線検査:腰椎圧迫骨折の診断で最も一般的な検査です。X線撮影を行うことで、骨の変形や圧迫の程度を確認できます。
  • MRI:骨折部分の軟部組織の損傷や、骨髄内の変化を確認するために使用されます。特に神経の圧迫や、痛みの原因が特定しにくい場合に有効です。
  • CTスキャン:骨の詳細な構造を確認するためにCTスキャンが利用されます。手術が必要なケースでは、CTによる精密な画像が手術計画に役立ちます。

 


3. 腰椎圧迫骨折の治療方法

腰椎圧迫骨折の治療は、保存療法と手術療法の2つに大別されます。

患者の年齢、骨密度、活動レベル、骨折の程度に応じて、最適な治療法が選択されます。

保存療法

保存療法は、手術を行わずに骨折部分を治療する方法です。具体的には以下の方法が用いられます。

  • 安静と装具の使用:急性期の強い痛みがある場合、ベッドでの安静が推奨されることがあります。また、腰部コルセットや装具を使用することで、骨折部位を固定し、痛みの軽減と治癒を促進します。
  • 鎮痛薬の使用:痛みが強い場合には、鎮痛薬を服用して症状を和らげることがあります。特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが一般的に使用されます。

手術療法

保存療法が効果を示さない場合や、骨折が進行している場合には、手術療法が選択されます。手術療法には以下の方法があります。

  • 椎体形成術(バルーン椎体形成術):骨折した椎体に小さなバルーンを挿入し、膨らませて骨の高さを元に戻し、セメントを注入して固定する方法です。短時間で施術が可能です。
  • 脊椎固定術:複数の骨折がある場合や神経が圧迫されている場合、周囲の骨をボルトやプレートで固定して安定させる方法です。

リハビリテーション

治療後にはリハビリテーションが欠かせません。腰部の可動域や筋力を回復するために、以下のリハビリが行われます。

  • 筋力トレーニング:腰周囲の筋肉を鍛えることで、腰椎をサポートする筋力を養います。特に腹筋と背筋の強化が重要です。
  • ストレッチ:腰の可動域を広げるためのストレッチを行い、再発予防を図ります。

 


おわりに

腰椎圧迫骨折は、特に高齢者や骨粗鬆症のある患者に多発する骨折ですが、早期の治療と適切なリハビリが重要です。

放置すると慢性的な腰痛や姿勢の変化、さらなる骨折リスクを伴うため、症状が出た場合には早急に医療機関を受診することが大切です。

また、骨粗鬆症の予防として適切な運動や栄養管理も重要です。

今回の話が、腰椎圧迫骨折に関する理解を深め、日常生活での予防や対応に役立てていただければ幸いです。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

 


参考文献

  1. Bastian, T. D., Compression fractures: Diagnosis and treatment options, Journal of Orthopedic Practice, 2021.
  2. Kanis, J. A., Epidemiology of osteoporosis and fractures in Japan, Bone and Joint Research, 2020.
  3. McCarthy, J. P., & Davis, M. R., Effectiveness of vertebroplasty for osteoporotic vertebral compression fractures, American Journal of Orthopedics, 2019.

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