今回は、全人工股関節置換術(THA)の適応疾患について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
目次
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はじめに
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見出し1:THA の適応疾患とは?
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見出し2:非関節変性疾患からの適応—骨折・腫瘍・先天性異常
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見出し3:炎症性疾患・特定臨床状態での適応
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見出し4:高リスク患者における適応の考慮点
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見出し5:適応拡大と今後のトレンド
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おわりに
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参考文献
1. はじめに
全人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)は、主に関節機能不全を来す疾患に対して行われ、痛みの緩和や歩行機能の回復を図る重要な手術です。
しかし、どんな股関節の問題にも適応されるわけではありません。
本コンテンツでは、適応となる疾患や臨床状況、さらには手術適応に関する最新の研究や日本・海外の動向も交えて、**「誰でもわかる」**形式で丁寧に解説します。
ネット上には目立たないような視点や、最新研究ならではの知見も盛り込んでいます。
2. 見出し1:THA の適応疾患とは?
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変形性股関節症(OA)
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関節軟骨の摩耗による痛みと可動域制限で、日常生活(歩行・夜間安静・階段昇降)に支障があるケースが適応 。
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リウマチ性関節炎(RA)
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関節破壊が進行し、非手術的治療で改善が得られない場合に対象 。
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骨壊死(大腿骨頭壊死:AVN)
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血流障害により骨組織が壊死し、進行すると関節崩壊をきたす。OA 治療が困難な場合に THA が選択される 。
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3. 見出し2:非関節変性疾患からの適応―骨折・腫瘍・先天性異常
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骨折後の二次性変形や軟骨損傷
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股関節周辺の骨折後に機能障害や変形が残り、保存療法が無効な際には THA 適応となる 。
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先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全
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骨形態異常により関節が不安定な場合、THA によって正常なアライメントと機能改善が期待できる 。
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骨腫瘍(良性・悪性)による関節破壊
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臼蓋部や大腿骨近位部に腫瘍が関与し、関節の耐久性が失われた場合には非常に限られた適応ながら THA が検討されることもある 。
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4. 見出し3:炎症性疾患・特定臨床状態での適応
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強直性脊椎炎(AS)
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股関節に強い拘縮や固定(関節の“動かない状態”)が生じ、姿勢や歩行が困難になる場合、THA により可動域の回復と機能改善が見込まれる。両側同時置換が有効との報告もある 。
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若年性関節炎(関節リウマチの若年発症)
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長期経過の中で関節破壊が進み、機能障害が深刻化したケースで THA が選ばれることがある 。
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5. 見出し4:高リスク患者における適応の考慮点
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透析患者
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日本のデータでは、透析中の患者が THA を受けると、脱臼リスクや再手術、脳血管イベントのリスクが有意に高まることが示された(OR 2.616、4.426など)。
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そのため、透析患者には慎重な適応評価と術前術後管理の強化が求められる。
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高齢者(特に75歳以上)
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セメント固定 THA による再置換リスクの低減効果が報告されており、高齢者においては適応と手術方式の選択が重要となる。
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6. 見出し5:適応拡大と今後のトレンド
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若年患者への適応拡大
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以前は高齢者が中心でしたが、改良されたインプラント寿命や素材(高耐摩耗性ポリエチレンなど)の研究進展により、40〜60歳のアクティブな世代でも THA が選ばれるようになっている 。
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エビデンスに基づく適応の見直し
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日本パラドックスとして、セメント固定 vs 非セメント固定の結果や費用対効果を踏まえた政策議論が進行中
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7. おわりに
THA の適応疾患は、単に「痛みが激しいから」といった単純な判断ではなく、疾患の種類・進行度・患者の全身状態・生活背景を精査したうえで慎重に決められます。
変形性股関節症や骨壊死、リウマチ、外傷後障害、先天性異常、強直性脊椎炎、骨腫瘍など、一見すると関連が薄いように思える疾患にも適応の可能性がある一方、透析患者や高齢者などリスク要因を持つ方には特別な配慮が必要です。
近年では若年層への適応拡大や、固定方法、素材・インプラントの進化などが進んでおり、将来的にはより個別化された適応判断が主流になると期待されます。
今後もエビデンスの蓄積とともに、THA の適応基準はさらに洗練されていくでしょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Mayo Clinic. Indications for hip replacement: osteoarthritis, rheumatoid arthritis, AVN, other degenerative or traumatic conditions.
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Scientific Reports (2025). 高リスク透析患者における THA 術後合併症リスクの検討
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リビュ (2024). Cemented THA の高齢者における再置換リスク低減効果について ResearchGate