今回は、最近イライラする?脳疲労が引き起こす意外な症状について説明していきます
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
「理由はわからないけどイライラする」「集中できず、つい人に当たってしまう」――これは単なるストレスではなく、脳疲労(メンタルファティーグ)が引き起こす症状かもしれません。
特に現代では、デジタル過剰刺激、多重タスク、長時間労働などにより、脳の前頭前野に「局所的な睡眠状態(local sleep)」が発生し、意識的には起きているのに脳の一部が休んでしまう現象が報告されています。
こうした状態では抑制力低下、攻撃性増加、判断力鈍化、記憶障害などが起こりやすくなります 。
本稿では、脳疲労がもたらす意外な症状を掘り下げ、科学的背景や対処法について整理します。
1. 抑制力が落ちて攻撃的になる
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局所的“寝落ち”状態の発生:前頭前野が部分的に休憩状態になり、理性が働かず、攻撃性が高まる 。
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信頼や協調性の低下:経済ゲームで実験的に実証され、人間関係の齟齬につながる。
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家族や同僚に当たりやすい:日常レベルで小さな衝突を生む原因になる。
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短休憩で再起動する必要あり:15分程度の脳休憩を取ることで症状緩和が可能。
〈独自視点〉
攻撃的になった自分に気付いたら「10秒席を外す」など物理的距離を置くルール化が効果的です。
2. 意思決定力が急に低下する
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意思力の枯渇現象(decision fatigue):情報過多やタスク過多により、判断を放棄しやすくなる 。
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保守的・衝動的な決定に傾きやすい:長期的利益より短期報酬を優先する傾向が増える。
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日々の選択が減り、ルーティン化:「面倒だからこれでいい」を選びがちに。
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対策としては変化を加える:休憩後に選択肢をリスト化し「2択以上」を意識することで回避可能。
3. 集中力と記憶力がガクンと落ちる
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注意・作業記憶機能の低下:長時間の集中作業後に、脳波や反応速度の劣化が確認される
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脳内グルタミン酸の蓄積で神経過剰興奮:モノを思い出せなくなる「脳が飽和」する状態。
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ミスの増加・情報処理が遅くなる:エラーや判断ミスが増え、仕事や学習効率が落ちる。
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短期的に回復するには目を閉じるだけでOK:30秒の目瞑りで、作業効率の再回復が期待できる。
4. イライラ・情緒不安定が増える
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睡眠不足と似た神経状態:疲労が続くとノルアドレナリンやコルチゾールが高まり、感情の制御が不安定になる 。
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脳の“サイレント病変”としての脳疲労:持続すれば脳構造にも影響を与える可能性大。
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軽度でも情緒の暴走を招く:ちょっとしたことで涙が出る、怒りが止まらないなど。
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対処法:気づいた時点で短休憩+呼吸リセット:怒りそうになったら“深呼吸+視線リセット”で再起動を。
5. 頭痛、めまい、だるさといった身体症状
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脳疲労は頭痛とセットで現れる:集中力低下とともに緊張性や偏頭痛が増加する
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めまいやふらつきも:作業中の首肩こりと相まって、脳への血流不足を招く。
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全身疲労感・体力の喪失:脳の指令力が弱まり、自律神経の乱れで全身が重く感じる。
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予防策:30分ごとに立ち上がり+目の運動:疲労予防に有効とされる行動です。
おわりに
イライラ・判断力低下・記憶の乱れ・情緒不安定・頭痛などは、単なる“気分の問題”ではなく、現代的な脳疲労症候群の典型症状です。
最新研究では「前頭前野の局所的睡眠」や「グルタミン酸蓄積による神経疲労」など、脳の構造や機能にまで影響を及ぼす可能性が指摘されています 。
対策としては、適切な休憩(短ければ30秒からOK)や呼吸リセット、外の空気に関わる小行動、視覚・身体的リセット習慣が重要です。
これらは軽視されがちですが、正しいタイミングで行えば意思決定力・感情制御・認知力の回復に繋がります。
あなたの「なんとなく調子悪い」は、脳からのSOSかもしれません。
まずは日常に“小休憩のルール”を取り入れることから始めましょう。未来の自分に優しい、そんなメンタルケアの一歩を踏み出してみてください。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Marcora et al. Mental Exhaustion Drives Aggressive Behavior. PNAS, 2024.
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Li et al. EEG changes in mental fatigue. BMC Neurosci, 2020.
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Wiehler & Pessiglione. Glutamate accumulation impairs prefrontal function. Current Biology, 2022. [リンク付き]