変形性膝関節症ってみんな膝が痛くなるの?
~レントゲンの「変形」と痛みは必ずしも一致しない理由を解説~
目次
- はじめに
- 変形性膝関節症とはどんな病気?
- なぜ変形があっても痛くない人がいるの?
- 膝の痛みは「変形」だけが原因ではない
- 最新研究から分かってきた変形性膝関節症との付き合い方
- 膝の痛みを予防・改善するためにできること
- おわりに
- 参考文献
はじめに
「レントゲンで膝が変形していますね。」
整形外科でこのように言われると、「もう膝は治らない」「変形しているから痛いのは仕方がない」と思ってしまう方は少なくありません。
しかし実際には、変形性膝関節症と診断されたすべての人が膝の痛みを感じるわけではありません。
近年、日本や海外で行われた多くの研究では、レントゲンで変形が認められても痛みがまったくない人がいる一方、変形が軽度でも強い痛みを訴える人がいることが明らかになっています。
つまり、「変形=痛み」ではないということです。
膝の痛みには、軟骨だけでなく、滑膜(関節を包む膜)、半月板、骨、靱帯、筋肉、神経、さらには脳が痛みを処理する仕組みまで関係しています。
そのため、画像だけでは痛みの原因をすべて説明できません。
本記事では、変形性膝関節症の基礎知識から、「なぜ変形があっても痛くない人がいるのか」、最新の研究で分かってきた痛みのメカニズム、そして予防・改善のポイントについて分かりやすく解説します。
1. 変形性膝関節症とはどんな病気?
ポイント
- 加齢や負荷などにより膝関節が変化する疾患
- 軟骨だけでなく骨・半月板・滑膜など関節全体に変化が起こる
- 日本では高齢化に伴い患者数が増加している
- 痛みやこわばり、可動域制限などがみられることがある
変形性膝関節症は、長年にわたる負荷や加齢などの影響によって、膝関節全体に変化が生じる病気です。
以前は「軟骨がすり減る病気」と考えられていましたが、現在では骨や滑膜、半月板、靱帯、周囲の筋肉などを含めた関節全体の疾患として理解されています。
初期には立ち上がりや歩き始めの痛み、朝のこわばりなどがみられることがありますが、症状の程度には個人差があります。
2. なぜ変形があっても痛くない人がいるの?
主な理由
- 軟骨には神経がほとんど存在しない
- 炎症の程度に個人差がある
- 筋力や身体機能が保たれている
- 神経の痛みの感じ方が異なる
- 心理的・社会的要因も影響する
近年の疫学研究では、画像上の変形と痛みは必ずしも一致しないことが報告されています。
レントゲンで明らかな変形があっても症状がない人がいる一方、軽い変化しかないにもかかわらず強い痛みを感じる人もいます。
その理由の一つは、軟骨そのものには痛みを感じる神経がほとんど存在しないことです。
実際に痛みの原因となるのは、滑膜の炎症、骨髄病変、半月板の損傷、関節包の伸張、周囲の筋肉や神経への負担などが複雑に組み合わさった結果と考えられています。
さらに、近年では「痛みの感じ方」は脳や神経系の影響も受けることが分かっており、睡眠不足やストレス、不安、運動不足などが痛みを強く感じさせる要因となる場合があります。
3. 膝の痛みは「変形」だけが原因ではない
考えられる原因
- 滑膜炎
- 骨髄病変(Bone Marrow Lesions)
- 半月板の変性
- 靱帯への負担
- 太ももの筋力低下
- 伏在神経などの神経障害
- 股関節や足関節の機能低下
近年のMRI研究では、骨髄病変や滑膜炎は痛みとの関連が強いことが報告されています。
また、筋力低下や歩行バランスの乱れによって膝への負担が増加し、痛みを引き起こすケースも少なくありません。
さらに、膝の内側に限局した痛みでは、伏在神経の圧迫や刺激が関与していることもあり、関節だけでは説明できない症状が存在します。
このように、膝の痛みは「変形の程度」だけではなく、関節・筋肉・神経・生活習慣など多くの要素が影響する多因子性の症状です。
4. 最新研究から分かってきた変形性膝関節症との付き合い方
最新の知見
- 適度な運動療法は第一選択
- 体重管理は症状改善に有効
- 筋力トレーニングが機能改善に役立つ
- 長期間の安静は推奨されない
- 患者教育が重要
近年の国際的なガイドラインでは、運動療法・教育・体重管理が変形性膝関節症の基本治療として推奨されています。
大腿四頭筋だけでなく、お尻や体幹の筋力を高めることで膝への負担を軽減できることが示されています。
また、痛みがあるからといって動かさない期間が長くなると、筋力や関節機能が低下し、かえって症状が悪化することがあります。
そのため、専門家の指導のもとで適切な運動を継続することが重要です。
5. 膝の痛みを予防・改善するためにできること
日常生活で意識したいこと
- 適正体重を維持する
- 太もも・お尻の筋力を鍛える
- 股関節や足関節の柔軟性を保つ
- 長時間同じ姿勢を避ける
- ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れる
- 十分な睡眠を確保する
膝への負担を減らすためには、筋力だけでなく、歩き方や姿勢、靴の選び方も重要です。
また、睡眠不足や慢性的なストレスは痛みを強く感じやすくするため、生活習慣全体を見直すことも大切です。
「痛みがあるから動かない」のではなく、「無理のない範囲で適切に動かす」ことが、長期的な症状改善につながります。
おわりに
変形性膝関節症と診断されても、必ずしも全員が膝の痛みに悩まされるわけではありません。
画像上の変形と実際の痛みは一致しないことが多く、滑膜の炎症、骨髄病変、筋力低下、神経の影響、さらには心理的・社会的要因まで、さまざまな要素が痛みに関わっています。
そのため、レントゲンだけで症状を判断するのではなく、身体機能や生活習慣、痛みの特徴を総合的に評価することが重要です。
近年の研究では、適切な運動療法や体重管理、患者教育が症状改善に有効であることが示されており、「変形しているからもう治らない」と悲観する必要はありません。
自分の状態を正しく理解し、医療機関と相談しながら適切な対策を続けることで、生活の質を維持・向上できる可能性があります。
これを機に保険の見直しはいかがでしょうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
- Osteoarthritis Research Society International(OARSI). Clinical Practice Guidelines.
https://oarsi.org/ - Bannuru RR, et al. OARSI Guidelines for the Non-Surgical Management of Knee Osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage.
- National Library of Medicine(PubMed).
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
