今回は高次脳機能障害の基本について説明していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)は、脳に損傷を負った際に認知機能や社会的機能に影響を及ぼす障害です。
脳梗塞や脳出血、外傷性脳損傷などの脳の損傷が原因で発生し、記憶力や注意力、判断力、言語能力、感情制御など、日常生活に不可欠な機能に深刻な影響を与えることがあります。
医療従事者にとって、この障害の理解と適切な対応は、患者の生活の質(QOL)を向上させるために非常に重要です。
今回は、
- 高次脳機能障害の主な症状
- 高次脳機能障害の原因
- 高次脳機能障害の治療とリハビリテーション
をもとに、高次脳機能障害の基礎について説明し、特に注意すべきポイントを解説します。
1 高次脳機能障害の主な症状
高次脳機能障害の症状は、損傷部位やその範囲により異なりますが、以下のような主な症状が見られます。
- 記憶障害:短期的な記憶力が低下し、新しい情報を覚えられない、過去の出来事を思い出せないといった症状が現れます。これは、特に海馬の損傷が原因で発生することが多いです。
- 注意障害:集中力が続かず、複数の作業を同時に行うことが難しくなる症状が見られます。また、外部からの刺激に敏感に反応しやすく、周囲の環境に対して過剰な注意を払ってしまうこともあります。
- 遂行機能障害:計画を立て、それを遂行する能力が低下します。問題解決能力や、複数の情報を統合して行動する能力が損なわれ、日常生活において混乱が生じます。
- 言語障害:言語の理解や表現に障害が生じ、適切な言葉を思い出せない、文章の組み立てが難しくなることがあります。脳の言語中枢が損傷された場合に顕著に現れる症状です。
ここで紹介した障害は、高次脳機能障害のほんの一つとなりますので注意して下さい
2 高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の原因となる脳の損傷にはさまざまなものがあり、代表的なものとして以下が挙げられます。
- 脳血管障害:脳梗塞や脳出血は、脳の血流が遮断されることで脳組織に損傷を与え、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。特に、前頭葉や側頭葉など、認知機能を司る領域が影響を受けやすいです。
- 頭部外傷:交通事故や転倒による外傷性脳損傷は、高次脳機能障害の主要な原因の一つです。外傷により、脳の広範囲が物理的に損傷されるため、多くの機能が一度に障害されることがあります。
- 脳腫瘍:脳内に発生する腫瘍が脳の圧迫を引き起こし、周囲の組織に影響を与えることで高次脳機能障害が生じる場合もあります。腫瘍の大きさや位置によって症状が異なります。
3 高次脳機能障害の治療とリハビリテーション
高次脳機能障害に対する治療は、主にリハビリテーションを中心とした多角的なアプローチが求められます。
- リハビリテーション:高次脳機能障害のリハビリは、記憶や注意力、遂行機能の回復を目指した訓練が行われます。特に作業療法士や言語聴覚士が中心となり、患者の能力を引き出すプログラムを実施します。また、家族や介護者への教育も重要で、患者の回復に向けた日常生活のサポート方法が教えられます。
- 薬物治療:高次脳機能障害の改善を目的とした薬物療法も行われる場合があります。例えば、認知機能を改善する薬剤や、注意欠陥を抑制する薬物が使用されることがあります。しかし、薬物療法はリハビリテーションの補完的な位置づけであり、単独では十分な効果が得られない場合が多いです。
- 環境調整:患者の周囲の環境を調整し、刺激を最小限に抑えた環境で生活することが推奨されます。これにより、患者がストレスを感じにくく、集中力を持続させやすい状態を作り出すことが可能です。
おわりに
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる認知機能の低下であり、患者の日常生活に大きな影響を与えます。
医療従事者や家族は、この障害について正しい理解を持ち、適切なリハビリテーションやサポートを行うことが重要です。
リハビリテーションや薬物治療など、多角的なアプローチが有効であり、患者のQOLの向上に寄与します。
また、患者の症状に合わせたケアプランを作成することで、より良い生活環境を提供することができるでしょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- 高次脳機能障害リハビリテーションガイドライン. 日本高次脳機能障害学会, 2020.
- Morris, R., et al. “Cognitive Rehabilitation for Brain Injury and Stroke: A Review.” Neuropsychology, vol. 34, no. 2, 2021.
- Smith, K. “Traumatic Brain Injury and Cognitive Functioning.” Journal of Neurology, vol. 57, no. 5, 2020.