今回は指定難病の1つである「パーキンソン病」について説明していきます。
最新の論文の内容も踏まえていますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
パーキンソン病は、日本で指定難病の一つとして位置づけられており、中高年を中心に多くの人が罹患する神経変性疾患です。
主に動作の緩慢さ、震え、筋固縮、姿勢の不安定さといった運動症状が特徴で、患者の日常生活に大きな影響を与えます。
今回は、
- パーキンソン病の基礎知識
- 診断と治療の最新情報
- 患者を支えるサポート体制
をもとに、パーキンソン病の基礎的な知識、診断と治療の進展、さらに患者が安心して暮らすためのサポート体制について、医療従事者の視点からわかりやすく解説します。
1:パーキンソン病の基礎知識
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳内の黒質という部分でドーパミンを生成する神経細胞が徐々に失われることで発症します。
このドーパミンは、身体をスムーズに動かすために必要不可欠な神経伝達物質です。
そのため、ドーパミン不足が進行すると、動きがぎこちなくなり、運動症状が現れます。
主な症状
- 振戦(震え):特に安静時に手足が震えることが多い。
- 動作緩慢:動き始めるのが遅い、または全体的に動きが遅くなる。
- 筋固縮:筋肉の硬さが増し、関節の動きが制限される。
- 姿勢反射障害:バランスを崩しやすく、転倒しやすい。
非運動症状も注目されており、便秘、睡眠障害、うつ、不安、嗅覚低下など、患者の生活の質を低下させる要因となっています。
2:診断と治療の最新情報
診断方法
パーキンソン病の診断は、症状の観察と患者の病歴を基に行われます。
画像検査では、MRIやPETスキャンが神経変性の確認に用いられますが、現時点で確定診断のための血液検査やバイオマーカーは存在しません。
近年、嗅覚低下や皮膚生検による早期診断の研究が進められています。
治療法
- 薬物療法:ドーパミンを補充するレボドパや、ドーパミン作用を補強するアゴニストが使用されます。また、非運動症状に対する薬物治療も重要です。
- 外科的治療:薬物療法が効きにくくなった患者には、脳深部刺激療法(DBS)が有効とされています。これにより震えや筋固縮が軽減します。
- リハビリテーション:運動療法や理学療法は、症状の進行を遅らせ、患者の自立を支援します。特にバランストレーニングやウォーキングが効果的です。
最新の研究
海外では、幹細胞治療や遺伝子治療の臨床試験が進行中で、ドーパミン神経を再生させる可能性が期待されています。
3:患者を支えるサポート体制
日常生活の工夫
パーキンソン病患者の生活を支えるには、環境を整えることが重要です。例えば、手すりの設置や滑りにくい床材の使用、定期的な運動を促す活動が挙げられます。
心理的サポート
患者は孤独感や不安を抱えることが多いため、家族や介護者の理解と協力が不可欠です。また、患者会や支援グループに参加することで、情報交換や励ましを得られます。
医療と福祉の連携
日本では、指定難病として医療費助成の制度があり、患者の経済的負担を軽減できます。また、訪問看護やデイサービスを活用することで、家庭でのケアが充実します。
おわりに
パーキンソン病は進行性の疾患ですが、適切な治療とサポートによって、患者が自分らしい生活を続けることが可能です。
医療の進展によって、より良い診断・治療法が開発されている一方で、日常生活での支援の重要性も見逃せません。
医療従事者、家族、地域社会が一丸となり、患者を支える環境を整えることが求められます。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
- Jankovic J. Parkinson’s disease: clinical features and diagnosis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008;79(4):368-376.
- Poewe W, et al. Parkinson disease. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17013.
- 日本神経学会. パーキンソン病診療ガイドライン2023.