今回は、「心臓外科手術(MVR)を受けた人の体験談とその教訓」について説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
僧帽弁置換術(Mitral Valve Replacement, MVR)は、僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症などの重度の弁膜症の患者に対して行われる手術です。
心臓の弁の機能が低下すると、血液の流れが正常に保たれず、心不全や血栓症などの合併症を引き起こす可能性があります。
MVRは人工弁(機械弁または生体弁)を用いて、損傷した弁を置換する手術です。
選択する弁の種類によって術後の管理が大きく異なり、患者は長期的な視点で治療計画を立てる必要があります。
本記事では、実際にMVRを受けた方の体験談を通して、手術の流れや回復過程、術後の生活、そして得られた教訓について詳しく解説します。
1. MVR手術を受けた人のリアルな体験談
ケース1:60代男性・僧帽弁閉鎖不全症によるMVR(機械弁選択)
手術前の状況
- 数年前から軽い息切れを感じていたが、加齢のせいだと思い放置。
- 健康診断の心電図で異常を指摘され、心エコー検査を受けると僧帽弁閉鎖不全症と診断。
- 症状が進行し、心臓への負担が大きくなっているため、手術が必要と判断された。
- 医師と相談し、耐久性の高い機械弁を選択。
手術の流れと術後の経過
- 全身麻酔下で約4時間の手術。
- 人工心肺装置を使用し、一時的に心臓を停止して弁を交換。
- 術後は集中治療室(ICU)で24時間管理され、人工呼吸器が装着された状態で目覚める。
- 「最初の2日間が特に辛かった。胸骨を切開した影響で痛みが強く、咳や呼吸が大変だった」とのこと。
術後の回復と生活の変化
- 術後数週間で退院し、2か月間の心臓リハビリプログラムを実施。
- 機械弁を選択したため、毎日ワーファリン(抗凝固薬)の服用が必要。
- 食事管理が厳しくなり、ビタミンKを多く含む食品(納豆・ほうれん草など)は制限される。
- 「手術後は息切れがなくなり、運動も楽になった。ただ、血液検査を定期的に受ける必要があり、食事制限がストレスになることも」と語る。
ケース2:50代女性・僧帽弁狭窄症によるMVR(生体弁選択)
手術前の状況
- 若い頃にリウマチ熱を患い、その影響で僧帽弁狭窄症を発症。
- 軽度の症状で数十年間経過していたが、最近になって息切れと疲労感が悪化。
- 手術の決断に迷ったが、医師の説明を受け、生体弁を選択。
手術の流れと術後の経過
- 手術は約4時間で終了。大きな合併症もなく、スムーズに進行。
- 術後の集中治療では人工呼吸器を使用し、徐々に自主呼吸に移行。
- 術後翌日からリハビリ開始。呼吸トレーニングと軽い歩行訓練を実施。
- 術後数週間で退院。1か月の外来リハビリを経て、通常の生活に復帰。
術後の生活の変化
- 生体弁はワーファリンの服用が不要なため、術後の食事制限がほとんどない。
- 「体が軽くなり、階段の上り下りも楽になった」と実感。
- ただし、生体弁は耐久性が限られ、「10~15年後に再手術の可能性があることが気になる」とのこと。**
手術時間、退院時期、リハビリテーション開始は施設によって偏りがあるので、術前に確認しましょう
2. MVR手術の術前・術後の注意点
術前の準備
- 心エコー検査や心臓カテーテル検査で詳細な状態を確認。
- 感染症予防のため、手術前に歯科検診を受ける(口腔内の細菌が心臓に悪影響を与えることがある)。
- 機械弁と生体弁の選択について、医師と十分に相談する。
術後のリハビリと管理
- 術後早期にリハビリを開始し、血栓や肺炎を防ぐ。
- 機械弁の場合はワーファリンを毎日服用し、定期的な血液検査を受ける。
- 塩分制限を行い、心臓に負担をかけない食生活を心がける。
術後に注意すべき症状
- 胸痛や息切れが悪化した場合は、すぐに受診。
- ワーファリン服用中の出血傾向に注意し、過度な飲酒や激しい運動を避ける。
- 不整脈が発生することがあり、異常を感じたら医師に相談。
3. MVR手術から学ぶ教訓
1. 早期の診断と治療が重要
- 症状が軽いうちに病院で診断を受けることが、良好な予後につながる。
- 「もっと早く手術を受けていれば、日常生活が楽だったかもしれない」という声も多い。
2. 術後の生活習慣が予後を決める
- 心臓を守るために、塩分・脂肪を控えた食事を続けることが大切。
- 適度な運動を取り入れ、心臓の負担を減らす。
3. 医師との十分な相談が必要
- 弁の種類や術後の管理について納得いくまで説明を受けることが大切。
- 患者それぞれに最適な治療法が異なるため、情報収集が重要。
おわりに
MVRは心臓の血流を改善し、生活の質を大きく向上させる手術ですが、術後の管理が非常に重要です。
実際に手術を受けた人の体験談からも、早期の受診、生活習慣の改善、医師との十分な相談が成功の鍵であることが分かります。
これからMVRを受ける方やその家族にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- American Heart Association. “Mitral Valve Surgery.” https://www.heart.org/MVR
- 日本循環器学会「弁膜症治療ガイドライン2023」
- Mayo Clinic. “Mitral Valve Disease and Treatment.”