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THAの前方アプローチ。本当に正しい脱臼肢位とは?

今回は、THAの前方アプローチ。本当に正しい脱臼肢位について説明していきます

理学療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!

目次

  1. はじめに

  2. THA 前方アプローチの特徴と一般的な注意事項

  3. 正しい脱臼肢位とは何か?理学療法士の視点

  4. 脱臼を防ぐ具体的動作制限と環境工夫

  5. 最新研究から読み解く安全肢位の根拠

  6. おわりに


1. はじめに

人工股関節全置換術(THA)における前方アプローチ(Direct Anterior Approach:DAA)は、筋肉を切離せずに侵入する低侵襲手術として注目されています。

その一方で、術後の脱臼予防肢位にはまだ議論があり、「前方からの脱臼」を防ぐための具体的なポジショニングや日常動作の制限について明確なガイドが求められています。

本稿では、最新研究と理学療法的な実践を融合し、「本当に正しい脱臼肢位」をわかりやすく解説します。


2. THA 前方アプローチの特徴と一般的な注意事項

  • 筋肉切離が少ない:大腿筋膜張筋と縫工筋の間から侵入し、筋腱を温存。

  • 早期回復が可能:歩行補助具からの自立が早くなるケースが多い。

  • 脱臼リスクは比較的低いが、特に前方脱臼に対する注意は必要。

 


3. 正しい脱臼肢位とは何か?理学療法士の視点

  • 前方脱臼の“刺激肢位”:股関節伸展および外旋は脱臼のリスクが高まる。

  • 推奨される安全肢位:股関節を軽く屈曲(30°以上)、中立または内旋気味に保つ構えが望ましい。

  • ポジショニング:骨盤を安定させ、前脂肪を避け、股関節を屈曲30°・回旋中立で固定する構えが理想。

  • 独自視点:仰臥位では、膝下に枕を置き、股関節屈曲を維持しつつ、自然な筋緊張を保つことで、脱臼予防と血流維持を両立できます。

 


4. 脱臼を防ぐ具体的動作制限と環境工夫

  • 足を後方へ踏み出さない:歩行や立ち上がり時に後ろにひく動作は避けましょう。

  • つま先は前方または軽く内側へ:外旋を避ける基本肢位です。

  • 脚を組まない:仰臥位では枕を股間に挟み、姿勢の安定と無意識の組み姿勢を防止

  • 生活環境の整備:高い座席やグラブバーの設置で、不要な動作や深屈曲を回避

  • 独自視点:廊下に視線誘導用ライン(マーカー)を設け、小さな歩幅を自然に促す工夫が安全動作習慣に役立ちます。

 


5. 最新研究から読み解く安全肢位の根拠

  • 脱臼発生率とリスク因子:DAA使用時でも脱臼は起こるが、適切なインプラント配置と可動制限でリスクを軽減可。

  • Combined anteversionの考え方:前方脱臼を防ぐカップとステムの適切な組み合わせ角度が有効と報告(目安「60°未満」)。

  • アプローチ比較:DAAは術後早期の歩行回復に優れ、脱臼率も同等またはやや低いとのエビデンスあり。

  • 独自視点:実臨床では、可動制限だけでなく「術前の歩行・バランス機能」の評価を踏まえた脱臼リスク評価が予防精度を高めます。

 


おわりに

前方アプローチによるTHAでは、股関節伸展・外旋を避け、屈曲30°・中立回旋の脱臼肢位を徹底することが最重要です

適切なポジショニングと動作制限、生活環境の工夫を組み合わせることで、前方からの脱臼リスクを大きく減らせます。

さらに、患者の術前機能やインプラントの設置角度を踏まえた個別化が、最高の安全性を実現します。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました


参考文献

  1. StatPearls. “Anterior Approach THA Precautions.” NCBI Bookshelf.

  2. BMC Musculoskeletal Disorders (2025). “Dislocation incidence and risk factors following direct anterior primary THA.”

  3. Wikipedia. “Hip replacement—Dislocation.” ウィキペディア

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