" />

育児に積極的な夫ほど陥りやすい「燃え尽き」とは?

今回は、育児に積極的な夫ほど陥りやすい「燃え尽き」について説明していきます

医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!

目次

  1. はじめに:育児に積極的な夫の増加と「燃え尽き」問題

  2. 育児参加のメリットと負担の二面性

  3. 「燃え尽き(バーンアウト)」の定義と心身への影響

  4. 育児に積極的な夫が燃え尽きやすい心理的・社会的要因

  5. 身体的負担とストレス反応のメカニズム

  6. 予防と回復のための具体的戦略

  7. おわりに:育児も自分自身のケアも両立するために

  8. 参考文献


はじめに:育児に積極的な夫の増加と「燃え尽き」問題

近年、日本でも海外でも、共働き家庭の増加や家族観の変化に伴い、夫が育児に主体的に関わるケースが増えています。

父親が積極的に育児をすることは子どもの発達や母親の負担軽減など多くの利点がある一方で、「育児に一生懸命だからこそ燃え尽きてしまう」という現実も見過ごせません。

育児バーンアウト(parental burnout)は、育児ストレスが長期化し、精神的・身体的に限界状態に達する現象であり、研究でも増加傾向が指摘されています。

このコンテンツでは、単に「疲れやすい」という感覚ではなく、育児への積極性がかえって燃え尽きにつながる心理的・生理的な仕組みを科学的視点で明らかにし、その予防と改善の方法まで踏み込んで説明します。


育児参加のメリットと負担の二面性

育児に積極的に関わる父親は、子どもの情緒発達やパートナーシップの質の向上など多くのメリットがある一方で、同時に負担やストレスも増加します。

この節では、その二面性を整理します。

育児参加のポジティブな効果

  • 子どもの社会性・情緒発達の促進:父親が関わることで自己肯定感や社会適応力が高まるという報告あり。

  • パートナーシップの強化:共通の役割を分担することで信頼感・協力関係が深まる。

  • 父親自身の人生満足度の向上:育児参加によって生活に意味や達成感を感じる場合がある。

育児参加で同時に増す負担

  • 時間的制約の増加:仕事・家事・育児の三重負担が生じる。

  • 睡眠の質と量の低下:夜泣きや早起き対応などで慢性的な睡眠不足に。

  • 社会的・職業的役割との衝突:仕事の成果を求められる環境で育児負担が加わるとプレッシャーが増す。

育児参加そのものは良いことと評価されますが、負担とリソース(支援・休息)が釣り合っていない場合、バーンアウトにつながるリスクが高まるのです


「燃え尽き(バーンアウト)」の定義と心身への影響

バーンアウト(Burnout)は最初、職業ストレスにおいて定義されましたが、近年では育児にも当てはまる概念として研究が進んでいます。

育児バーンアウトは、「育児を続けたい気持ちはあるが、感情的疲弊・効力感の低下・脱人格化(冷めた態度)」が同時に現れる状態です。

バーンアウトの構成要素

  • 情緒的疲弊(Emotional exhaustion):育児に対して疲労感・無力感が強くなる。

  • 効力感の低下(Reduced personal accomplishment):自分の育児が意味を持っているか疑問を抱き始める。

  • 脱人格化(Depersonalization):子どもやパートナーへの冷たい感情や距離感が生じる。

心身への影響

  • 睡眠障害・食欲不振

  • 不安・抑うつ症状の増強

  • 身体症状(頭痛・筋緊張・免疫低下など)

バーンアウトは「単なる疲れ」とは異なり、持続的で回復が遅い状態です。

このため、適切に理解し対応することが重要です。


育児に積極的な夫が燃え尽きやすい心理的・社会的要因

父親が積極的に育児に関わる場合、特有の心理的・社会的負担がバーンアウトにつながるリスクを高めます。

社会的・文化的期待と葛藤

  • 完璧な親像へのプレッシャー
    育児雑誌やSNSで理想化された父親像を目にすることで、自分自身に過度な期待を抱くことがある。

  • 男性役割と育児役割の衝突
    「仕事で成果を出すべき」とする文化的期待と、「家庭で良い父親であるべき」という二重の役割が衝突する。

  • サポート不足
    特に日本では父親の育児支援制度やコミュニティがまだ整っていない場合が多く、孤立感が燃え尽きに影響する場合がある。

内面的要因と完璧主義

  • 内的批判(self-criticism):自分の育児に完璧さを求め、失敗を許せない思考がストレスを増大させる。

  • 成果志向的思考:育児が「やるべきことのリスト」として捉えられ、達成感で自尊感情を支える傾向が強いと、うまくいかなかったときに急激に燃え尽きやすくなる。

こうした心理的・社会的背景が、燃え尽きの発現に寄与することが海外の研究でも指摘されています


身体的負担とストレス反応のメカニズム

バーンアウトは心理的な状態だけではなく、身体的なストレス反応が増幅する結果として現れることがわかっています。

これは育児という行為が脳・神経・内分泌・免疫系にも影響を与えるからです。

自律神経系の乱れ

  • 交感神経の持続
    子どものケアや夜間対応が続くと、交感神経(緊張系)が優位の状態が持続しやすく、回復が進まない。

  • 副交感神経の低下
    日常的なリラックス反応が減少し、睡眠の質や消化機能にも悪影響が出る。

HPA軸とストレスホルモン

ストレスは視床下部—下垂体—副腎(HPA)軸を介してコルチゾールなどのホルモンを増加させます。

慢性的にこうしたホルモンレベルが変動すると、

  • 疲労感の増強

  • 免疫低下

  • 気分の不安定化

などが生じ、燃え尽き感を身体レベルで強めてしまいます。

睡眠と回復力の低下

育児による夜間覚醒や浅い睡眠は、身体の修復機能や情緒安定に不可欠な深い睡眠段階を妨げ、慢性疲労や抑うつ傾向を助長します。


予防と回復のための具体的戦略

育児に積極的な夫が燃え尽きを避け、健全に育児を継続するためには、科学的に裏付けられた予防・回復戦略が必要です。

① サポートネットワークの構築

  • パートナーとの役割分担の可視化

  • 同世代父親グループでの交流

  • 育児支援サービス・地域リソースの活用

社会的支援は燃え尽きリスクを大きく下げることが研究で示されています。

② 休息の質を高める

  • 睡眠リズムの最適化(就寝時間の固定化、画面時間制限)

  • 短時間の意図的な休息(マインドフルネス、深呼吸など)

  • 定期的な運動習慣

③ 心理的ウェルビーイングの強化

  • 完璧主義の緩和

  • 自分の感情の認識と受容

  • 専門家によるカウンセリング・心理支援

 


おわりに:育児も自分自身のケアも両立するために

育児に積極的な父親は、家族にとって非常に重要な存在ですが、その関与がかえって燃え尽きにつながるリスクもあります

燃え尽きは個人の問題だけでなく、社会的サポートの有無や家族の協力関係によって大きく影響される複合的現象です。

ここで述べた仕組みと対策を理解し、育児を「頑張ること」と「持続可能なケア」に分けて捉え直すことが、長期的な家族の幸福につながります。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

 


参考文献

  1. Mikolajczak, M., Brianda, M. E., Avalosse, H., & Roskam, I. (2018). Consequences of Parental Burnout: A Systematic Review of the Impact on Parents and Their Children. https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2018.02.009

  2. Le Vigouroux, S., Scola, C., & Guédeney, A. (2021). Parental Burnout and Its Antecedents: Role of Societal and Family Factors. Journal of Family Psychology.

  3. Roskam, I., Brianda, M.-E., & Mikolajczak, M. (2017). A Step Forward in the Conceptualization and Measurement of Parental Burnout: The Parental Burnout Inventory.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA