今回は、なぜギランバレー症候群は介護保険の特定疾病に含まれないのか?について説明していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
ギラン・バレー症候群(GBS)は、自己免疫反応によって末梢神経が障害される急性の神経疾患であり、重篤な場合には呼吸筋麻痺を引き起こすこともあります。
日本の介護保険制度では、40~64歳の第2号被保険者がサービスを利用するためには、16種類の「特定疾病」のいずれかに該当する必要があります。
しかし、GBSはこの「特定疾病」に含まれておらず、制度上の支援が受けにくい状況にあります。
1. 介護保険制度における「特定疾病」の選定基準
介護保険制度の「特定疾病」は、以下のような基準で選定されています:
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高齢者に多く見られる疾病:加齢に伴い発症率が高まる疾患。
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慢性的な経過をたどる疾病:長期間にわたり介護が必要となる疾患。
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医学的に介護が必要とされる疾病:医学的な観点から介護の必要性が認められる疾患。
これらの基準に基づき、16種類の特定疾病が定められています。
GBSは、急性発症であり、比較的若年層にも発症することから、これらの基準に完全には合致しないと判断されている可能性があります。
2. ギラン・バレー症候群の特徴と介護保険適用の課題
GBSの主な特徴は以下の通りです:
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急性発症:数日から数週間で症状が進行。
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可逆性:多くの患者が数ヶ月から数年で回復。
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年齢層の幅広さ:若年層から高齢者まで発症。
これらの特徴から、GBSは一時的な障害と見なされ、長期的な介護が必要な疾患とは捉えられていない可能性があります。
しかし、実際には以下のような課題があります:
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重篤な後遺症:一部の患者では、長期間にわたり筋力低下や感覚障害が残存。
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再発の可能性:稀に再発するケースも報告されている。
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高齢者の発症:高齢者が発症した場合、回復が遅れ、介護が必要となるケースも。
これらの点から、GBS患者に対する介護保険の適用について再検討の余地があると考えられます。
3. 海外におけるGBS患者への支援制度
海外では、GBS患者に対して以下のような支援が行われています:
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アメリカ:長期障害保険(LTD)により、GBS患者が仕事を続けられない場合に経済的支援が提供される。
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イギリス:国家医療制度(NHS)を通じて、GBS患者に対するリハビリテーションや在宅介護サービスが提供される。
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カナダ:州ごとの医療制度により、GBS患者に対する包括的な支援が行われている。
これらの国々では、GBS患者のニーズに応じた柔軟な支援が行われており、日本の制度にも参考になる点が多くあります。
おわりに
ギラン・バレー症候群は、急性発症でありながら、重篤な後遺症を残す可能性がある疾患です。
現行の介護保険制度では、「特定疾病」に含まれていないため、40~64歳の患者が制度の恩恵を受けにくい状況にあります。
しかし、実際には長期的な介護が必要となるケースも存在し、制度の見直しが求められます。
今後、GBS患者への支援を充実させるためには、以下のような取り組みが考えられます:
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特定疾病の見直し:GBSを特定疾病に追加することで、介護保険の適用範囲を拡大。
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障害者総合支援法との連携:GBS患者が障害者総合支援法のサービスを利用しやすくする。
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医療・介護の連携強化:医療機関と介護サービス提供者の連携を強化し、GBS患者への包括的な支援を実現。
これらの取り組みにより、GBS患者が安心して生活できる社会の実現が期待されます。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Yamagishi Y, Kusunoki S. The prognosis and prognostic factor of Guillain-Barré Syndrome. Rinsho Shinkeigaku. 2020;60(4):247-252.J-STAGE
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東京都立神経病院. ギラン・バレー症候群(GBS). https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/neurology/disease/gbs.html東京都立病院機構
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厚生労働省. 平成21年度第5回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第2回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の第2回合同開催 議事録. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000027i2m.html厚生労働省