今回は、てんかんの仕組みを徹底解説していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
てんかんは、脳の電気信号が異常なパターンで放電される慢性神経疾患で、全世界で約5000万人が罹患しています。
発作の種類は多様で、意識消失を伴う全般発作から、一部のみ過剰放電する焦点性発作まであります。
日常生活に大きな影響を及ぼすため、その原因・発症メカニズム・治療法理解は本人・家族にとって非常に重要です。
本記事では、最新の日本・海外の研究を交え「脳内の何が起きているのか」を可能な限りわかりやすく解説します。
1. てんかんとは?発作の仕組み
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発作とは過剰な電気信号放電:ニューロンが過剰に同期して高頻度活動
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焦点性 vs 全般性発作:局所から全体に広がるもの、有意識で部分のみなど
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抑制と興奮のバランス崩壊:GABA(抑制)とグルタミン酸(興奮)の不均衡
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イオンチャネル異常の関与:Na⁺, Ca²⁺チャネル変異による活動電位異常
この発作は、脳波(EEG)にて「鋭波」「棘‐鋭棘複合波」として可視化されます。
2. 脳内で何が起きるのか?メカニズム
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神経細胞興奮閾値の低下:シナプスにおける興奮抑制バランスが崩れる
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神経伝達物質の異常放出:興奮性が持続して過剰放電を引き起こす
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ネットワーク形成による波及:局所→全脳部位へ活動が広がるパターン化
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炎症・グリア細胞の関与:神経周辺の炎症が発作感受性を高める
最新研究では、ミクログリアやアストロサイト由来サイトカインの関与が注目されています。
3. 発作を引き起こすリスク因子
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遺伝的素因:チャネル遺伝子(SCN1A, KCNQ2, CACNA1Aなど)変異
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脳構造異常:奇形・腫瘍・梗塞後の瘢痕などによる焦点形成
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代謝・炎症疾患:低血糖、びまん性脳炎、全身性免疫活動
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環境トリガー:睡眠不足、ストレス、閃光刺激、アルコール中断
→ これらの因子が複合すると、てんかん発症や発作再燃率が上昇。
4. 最新治療法とそのターゲット
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抗てんかん薬(ASMs):電気伝導抑制薬、GABA増強薬で症状抑制
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外科手術アプローチ:焦点性の場合、切除・レーザー焼灼など
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神経刺激法:VNSやDBSで発作抑制、リズム的抑制刺激を導入
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新薬開発:CZP、レナカン、モダフィニルなど新規作用機序薬が臨床展開中
個別の治療方針は、発作の種類・重症度・副作用リスクから決定されます。
5. てんかんとの共生に向けたセルフケア
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生活リズムの徹底:規則正しい睡眠は発作抑止に不可欠
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トリガー回避意識:閃光/音刺激・飲酒・ストレス管理
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発作記録アプリ活用:種類・頻度・前兆を可視化し共有
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心理的ケアと社会支援:不安や抑うつへの対応として 家族支援・相談窓口利用
→ 行動記録・環境整備・周囲理解が、発作予防と生活の質改善に寄与します。
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おわりに
てんかんは「脳の異常な電気放電」であり、個人の症状・誘因・治療方針は多様です。
最新の神経科学・免疫学の進展により、発症メカニズムの理解も深まりつつあります。
治療は抗てんかん薬から手術・神経刺激療法まで広がり、セルフケアや環境整備も重要な要素です。
発作を減らし、生活の質を維持するためには、医療と日常生活の両面から包括的に取り組むことが鍵となります。
てんかんを正しく理解し、適切に対応することで、自分らしい生活を守り、安心して暮らし続ける道が開けます。
ぜひ、本記事をご家族や支援者とも共有し、支え合う生活を構築してください。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Fisher, R. S., et al. ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia, 2014.
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Vezzani, A., et al. Neuroinflammatory pathways as treatment targets and biomarkers in epilepsy. Nature Reviews Neurology, 2011. [リンク付き]
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Perucca, E., et al. New antiepileptic drugs in epilepsy therapy. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry, 2023.