今回は、心臓外科手術(AVR)を受けた人の体験談とその教訓について説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
大動脈弁置換術(Aortic Valve Replacement, AVR)は、大動脈弁が狭窄したり逆流したりすることで心臓に負担がかかる病気に対する重要な治療法です。
手術の成功率は高いものの、術前の不安や術後のリハビリ、生活の変化など、多くの患者が直面する課題があります。
今回の記事では、AVRを受けた人々のリアルな体験談をもとに、手術の実際の流れ、回復過程、そしてその教訓について詳しく解説します。
最新の医学研究を交えながら、AVRを受ける予定の方やその家族にとって役立つ情報を提供していきます。
1. AVR手術を受けた人のリアルな体験談
ケース1:50代男性・重度の大動脈弁狭窄症
手術前の状況
- 以前から軽い息切れや動悸を感じていたが、年齢のせいだと思って放置。
- 健康診断で心雑音を指摘され、精密検査の結果、重度の大動脈弁狭窄症と診断。
- 医師から「早めの手術が必要」と言われ、AVRを決意。
手術当日の流れと感想
- 朝から絶食し、病院に入院。
- 全身麻酔のため、手術中の記憶はなし。
- 目が覚めたときは集中治療室(ICU)で人工呼吸器がついていた。
- 「思ったより痛くなかったが、喉の違和感が強かった」とのこと。
術後の回復と生活の変化
- 術後3日目に一般病棟へ移動し、リハビリ開始。
- 退院後はゆっくりと散歩を再開。
- 術前よりも息切れが減り、活動的な生活ができるようになった。
リハビリ開始時期は施設によって様々ですが、私が働いていた施設は術後翌日よりリハビリを開始しておりました
ケース2:70代女性・大動脈弁閉鎖不全症(TAVIを選択)
手術前の状況
- 高齢のため、開胸手術にはリスクがあると判断。
- カテーテルを用いた経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を選択。
手術の流れと感想
- 局所麻酔で行われ、手術時間は約1時間半。
- 翌日には歩行を開始し、4日目には退院。
- 「開胸手術より負担が少なく、回復が早かった」とのこと。
術後の生活の変化
- 日常生活への復帰がスムーズだった。
- ただし、術後は血栓予防のために抗凝固薬の服用が必要になった。
2. AVR手術の術前・術後の注意点
術前の準備
- 心機能の評価:心エコーや心電図、CTスキャンで詳細な検査を行う。
- 感染症のチェック:術前に歯科検診を受け、感染のリスクを減らす。
- 栄養管理:手術に備え、バランスの良い食事を心がける。
術後のリハビリと生活習慣の見直し
- 軽い運動:術後1週間以内に歩行を開始し、徐々に活動量を増やす。
- 食生活の改善:塩分を控え、動脈硬化を防ぐ食事を意識。
- 定期的なフォローアップ:退院後も心臓専門医の診察を受ける。
術後に注意すべき症状
- 胸の強い痛みや息苦しさが続く場合はすぐに医師に相談。
- 血圧の急激な変化や不整脈に注意。
3. AVR手術から学ぶ教訓
1. 早期発見・早期治療の重要性
- 症状が軽い段階で医師に相談することで、手術のリスクを最小限に抑えられる。
- 健康診断で異常を指摘されたら放置しないことが大切。
2. 術後の生活習慣が予後を左右する
- 適度な運動とバランスの良い食事が、心臓の負担を軽減する。
- 定期的な検診を受けることで、合併症を防ぐことができる。
3. 心臓手術は人生を変えるが、前向きに捉えることが大切
- 術後に「生活の質が向上した」と感じる患者が多い。
- 手術を受けることで、新しいライフスタイルへの意識が高まる。
おわりに
AVRは多くの患者にとって命を救う重要な手術ですが、手術を決意するまでの不安や術後のリハビリなど、多くの課題があります。
しかし、実際に手術を受けた人々の体験を通じて分かるように、正しい知識と準備を持つことで、より良い回復が可能になります。
これからAVRを受ける方やその家族の方にとって、この記事が少しでも役に立てば幸いです。
心臓の健康を守るために、日々の生活習慣を見直し、定期的な医療チェックを欠かさないようにしましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- American Heart Association. “Aortic Valve Replacement Surgery: What to Expect.” https://www.heart.org/en/health-topics/aortic-valve-disease
- 日本循環器学会「大動脈弁置換術の最新ガイドライン」2023年版
- Mayo Clinic. “Recovery After Aortic Valve Surgery.”