今回は、心不全と睡眠の深い関係!寝不足が招くリスクについて説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
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はじめに
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睡眠不足が心臓に与える影響
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心不全患者に多い睡眠障害の種類
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睡眠と自律神経・ホルモンの関係
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最新研究が示す睡眠と心不全リスク
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睡眠を整えるための実践ポイント
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おわりに
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参考文献
はじめに
心不全は「心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態」を指します。
高齢化社会の日本において患者数は増加の一途をたどっており、「心不全パンデミック」と呼ばれるほど深刻な課題です。
その心不全と深く関わるのが「睡眠」です。寝不足や睡眠障害は単なる疲労や集中力の低下にとどまらず、心臓に直接的なダメージを与えることがわかってきました。
今回は、睡眠不足が心不全に及ぼすリスクを解説し、最新の研究成果も踏まえて「心臓を守る睡眠習慣」についてお伝えします。
睡眠不足が心臓に与える影響
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交感神経の過剰興奮により心拍数や血圧が上昇
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慢性的な血圧上昇が心筋に負担をかける
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炎症反応が高まり血管障害を進める
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心拍変動の低下で不整脈リスクが増加
睡眠不足は、単に「休息が足りない」だけでなく、心血管系に深刻な負担を与えます。
特に交感神経の過剰な働きは心臓を常に緊張状態に置き、心不全の悪化要因になります。
👉米国の大規模調査(NHANES)では、睡眠時間が6時間未満の人は7〜8時間睡眠の人に比べて心不全リスクが1.5倍高いことが報告されています。
心不全患者に多い睡眠障害の種類
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睡眠時無呼吸症候群(SAS):酸素不足が心臓に負担
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不眠症:夜間の入眠困難・中途覚醒が増加
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周期性四肢運動障害:夜間の脚の動きで睡眠質低下
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体位依存性睡眠障害:仰臥位で呼吸困難が悪化
👉心不全患者の30〜50%は睡眠障害を合併しているとされます。特に睡眠時無呼吸は心不全との関連が強く、酸素不足が繰り返されることで心筋のリモデリング(構造変化)を促進します。
睡眠と自律神経・ホルモンの関係
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メラトニン分泌低下で睡眠リズムが乱れる
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成長ホルモン不足で心筋修復力が低下
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交感神経優位が夜間も続き心拍数増加
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コルチゾール上昇が動脈硬化を促進
健康な人では、夜間は副交感神経が優位となり心拍数や血圧が低下します。
しかし睡眠不足や不眠症ではこの切り替えがうまくいかず、心臓への負担が慢性的に続いてしまいます。
最新研究が示す睡眠と心不全リスク
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英国バイオバンク研究(2021):睡眠の質が悪い人は心不全リスクが42%増加
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米国心臓協会(AHA)声明:睡眠不足は高血圧・糖尿病を介して心不全リスクを上げる
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日本の多施設研究(2020):睡眠時無呼吸治療(CPAP)で心不全入院率が有意に低下
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ヨーロッパ心臓病学会(ESC):睡眠は「心血管健康の7つの柱」の一つに位置づけ
👉近年の研究では、「睡眠の質」が心不全発症や悪化の独立したリスク因子であることが明確になっています。
睡眠を整えるための実践ポイント
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規則正しい睡眠時間(7〜8時間を目安)
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寝る前のスマホ・PC使用を控える
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軽い運動(ウォーキングやストレッチ)を日中に取り入れる
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いびきや日中の眠気が強い場合は専門医受診
👉特に心不全患者では「昼寝の取り方」も重要です。20〜30分程度の短い昼寝は心臓に有益ですが、1時間以上の長時間昼寝は逆に心不全リスクを高める可能性があると報告されています。
おわりに
心不全の予防・管理において「睡眠」は軽視できない重要な要素です。
寝不足や睡眠障害は、交感神経の過活動や血圧上昇を通じて心臓に直接負担を与えます。
「薬でコントロールする」だけではなく、「質の高い睡眠を確保する」ことが心不全管理の新しいスタンダードになりつつあります。
生活習慣を見直し、必要に応じて睡眠専門外来や循環器科での評価を受けることをおすすめします。
心臓を守る第一歩は「良い眠り」から。今日から睡眠習慣を整え、心不全リスクを下げていきましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Lu, Y. et al. “Sleep quality and risk of heart failure: UK Biobank study.” Circulation. 2021.
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American Heart Association. “Sleep and cardiovascular health: A scientific statement.” Circulation. 2016.