今回は、痛み止めだけに頼らない!運動療法の力について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
-
はじめに
-
痛み止めの役割と限界
-
運動療法がもたらす生理学的効果
-
痛みの種類別にみる運動の有効性
-
最新研究が示すエビデンス
-
継続するための工夫と実践法
-
おわりに
-
参考文献
はじめに
「痛みが出たら痛み止めを飲む」――これは多くの人にとって当たり前の対応かもしれません。
しかし、慢性的な腰痛や関節痛、首肩のこりといった不調は、薬だけで完全に解決することは難しいのが現実です。
近年、世界中の整形外科・リハビリテーションの分野では「運動療法」が痛み管理において強く推奨されています。
薬が一時的に痛みを和らげる「対症療法」なのに対し、運動は「原因に働きかけ、再発を防ぐ」根本的な手段となり得るからです。
今回は、痛み止めだけに頼らないための「運動療法の力」について、最新の研究結果も交えながら解説します。
痛み止めの役割と限界
-
即効性があるため急性期に有用
-
服用により日常生活の活動量を維持できる
-
長期使用は副作用リスクが高まる(胃潰瘍・腎機能障害など)
-
痛みの根本原因は解決しない
特にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は広く使われていますが、慢性痛の患者に長期間処方すると副作用のリスクが問題になります。
アメリカ整形外科学会や英国NICEガイドラインでも、薬物治療単独ではなく「運動療法を併用すべき」と明記されています。
運動療法がもたらす生理学的効果
-
血流改善により発痛物質を除去
-
筋力強化で関節や脊椎への負担を軽減
-
中枢神経に作用し痛み感受性を下げる(エンドルフィン分泌)
-
ストレス軽減と自律神経の安定化
👉特に「運動による鎮痛効果(Exercise-Induced Hypoalgesia)」は近年注目されており、軽い有酸素運動やレジスタンストレーニングを行うと、脳内でエンドルフィンやセロトニンが分泌され、自然な鎮痛作用が得られることがわかっています。
痛みの種類別にみる運動の有効性
-
腰痛:体幹筋の強化・ストレッチで再発予防に効果的
-
変形性膝関節症:下肢筋力強化と有酸素運動で疼痛軽減
-
肩こり:姿勢改善運動と肩甲骨の安定化トレーニングが有効
-
神経障害性疼痛:ウォーキングやヨガが慢性痛改善に寄与
たとえば、腰痛に関しては「マッケンジー体操」や「体幹安定化エクササイズ」が科学的に有効とされています。
膝の痛みには「大腿四頭筋の強化」が必須で、手術を回避できる症例もあると報告されています。
最新研究が示すエビデンス
-
腰痛患者に対する運動療法は薬物療法より再発率が低い(Cochrane Review 2021)
-
変形性膝関節症における筋トレはNSAIDsと同等の疼痛軽減効果を示す(Ann Intern Med 2020)
-
週3回の有酸素運動は慢性疼痛患者のQOLを改善(JAMA 2019)
-
オンライン運動指導でも対面と同等の効果(BMJ 2022)
👉こうした研究から、「運動療法は薬の代替にもなりうる」というエビデンスが積み重なっています。
継続するための工夫と実践法
-
短時間・低強度から始める(1日10分でもOK)
-
痛みが強いときは“完全休養”ではなく“動ける範囲で”
-
楽しめる運動を選ぶ(ウォーキング・ヨガ・ダンスなど)
-
記録をつけて達成感を得る
痛みがある人にとって「運動=つらい」というイメージが強いですが、実際には「軽く体を動かす」だけでも十分効果があります。
大切なのは「続けること」。楽しみながら日常生活に組み込む工夫がポイントです。
おわりに
痛み止めは一時的な助けにはなりますが、根本的な改善にはつながりません。
運動療法は「筋肉・関節・神経」に直接働きかけ、痛みの再発予防や生活の質向上に大きな力を発揮します。
最新の研究でも、痛みの管理において「運動が第一選択」とされるケースが増えています。
薬に頼り切るのではなく、日常の中に運動を取り入れることが、健康な未来をつくるカギとなるでしょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
-
Hayden JA, et al. “Exercise therapy for chronic low back pain.” Cochrane Database Syst Rev. 2021.
-
Fransen M, et al. “Exercise for osteoarthritis of the knee.” Ann Intern Med. 2020.