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「手伝っている」その言葉、妻を追い詰めているかも?

今回は、「手伝っている」その言葉、妻を追い詰めているかも?ついて説明していきます。

医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!

■目次

  1. はじめに

  2. 「手伝っている」という言葉が妻を傷つける理由

  3. 見えない家事負担“メンタル・ロード”とは

  4. 多くの夫が知らない“家庭のデフォルト設定”

  5. 妻を追い詰めないためのコミュニケーション

  6. 夫婦で家事育児を再設計する方法

  7. おわりに

  8. 参考文献


■はじめに

「家事も育児も、できる範囲で手伝っているつもりなのに、なぜか妻の表情が暗い。」

「ありがとうと言われるどころか、逆に怒られる。」

そんな経験はありませんか?

実は近年、日本だけでなく海外でも、夫婦間の認識のズレが家庭のストレスを増やすことが問題視されています。

特に“家事育児の言葉の使い方”は、関係満足度に大きな影響を与えると多くの論文で指摘されています。

その中でも象徴的なのが 「手伝っている」 という言葉。

この一言は、夫が「善意で」「協力の気持ちで」使っているにもかかわらず、妻にとっては心の負担を増やす“トリガー”になりやすい言葉です。

本記事では、
●「手伝っている」がなぜ問題なのか

●夫婦でどんなズレが起きているのか

●今日からできる改善ポイント

を、心理学・家族研究の知見をもとに解説します。


1. 「手伝っている」という言葉が妻を傷つける理由

▼ポイント(箇条書き)

  • 「主担当は妻」という前提になる

  • 夫婦の力関係を固定化してしまう

  • 妻は“責任の共有”を求めている

  • 善意なのに“分かってもらえない感”が生まれる


「手伝う」という言葉は、日本語では“本来の担当者が別にいる”ことを前提にした表現です。

そのため妻側には、

  • 家事育児の責任者は自分

  • 夫は補助的な存在

  • 負担の偏りは黙認されたまま
    という構図が刷り込まれてしまいます。

特に産後や幼児期は、妻は「24時間タスク」に巻き込まれています。

その中で「手伝おうか?」という言葉が飛んでくると、

“私は当たり前にやって当然、あなたは余裕のあるときだけでいいの?”と感じてしまうのです。

さらに研究では、“努力を過小評価されたと感じると、パートナーへの信頼度が下がる”ことが分かっています。

つまり、たった一言で心の距離が生まれやすいのです。


2. 見えない家事負担“メンタル・ロード”とは

▼ポイント

  • 実作業より“段取り・気づき”の負担が大きい

  • 妻は常に“先のこと”を考えている

  • 男性は「見えたもの」に反応しやすい

  • メンタル・ロードが溢れると感情的になる


家事育児の負担として近年注目されているのが メンタル・ロード(認知負荷)

これは「考える・気づく・段取りする」負担のこと。

例:

  • 子どもの予防接種のスケジュール管理

  • 明日の持ち物の準備

  • 食材の補充の計画

  • 家族の予定の調整
    など。

妻の脳内では“無限タスクリスト”が常に回っており、休まる瞬間がほとんどありません。

一方、夫は「気づいたときに動く」というスタイルになりがちです。

この違いが、“なんで言わないとやらないの?”という妻の不満につながります。

つまり問題は“作業量”ではなく **「気づきの責任の偏り」**なのです。


3. 多くの夫が知らない“家庭のデフォルト設定”

▼ポイント

  • 日本は未だに“妻が家事育児の中心”という文化

  • 男性が動くと“特別感”を生みやすい

  • 妻は「やって当たり前」の圧に苦しむ

  • 夫は“気づく力”が鍛えられてこなかった


多くの家庭では、無意識のうちに、妻=家事育児のデフォルト担当、という設定が初期値として存在します。

妻側は

  • 家のことは全部自分が把握していなければいけない

  • 誰かが困らないよう先回りすべき
    という“見えない圧力”で疲弊します。

一方、夫は悪気なくても「頼まれたらやるよ」という気持ちになりやすい。

これは能力の問題ではありません。

単にこれまで“家事育児の気づきのトレーニング”を受けてこなかっただけなのです。

夫婦間のズレはこの文化的背景から生まれます。


4. 妻を追い詰めないためのコミュニケーション

▼ポイント

  • 「手伝う」ではなく「分担しよう」

  • 具体的な役割を“自分から”提案する

  • 「何をすればいい?」はNG

  • 妻の感情を先に受け止める


妻が求めているのは、**「家事育児の主体が夫婦であること」**です。

そのための言い換え例:
✕「手伝おうか?」
○「今日は俺がこれをやるね」
○「この部分は俺が担当するよ」

また、
✕「何をすればいい?」
これは妻に“考える仕事”を追加するため、メンタル・ロードを増やす最悪の質問です。

代わりに:
○「夕飯の片付けは全部やるね」
○「子どもの寝かしつけは任せて」
と“自分で決めて動く”のが効果的。

さらに、妻が疲れていたら

「大変だったね」
「いつもありがとう」

とまず“感情の受け止め”をするだけで、関係の雰囲気が大きく変わります。


5. 夫婦で家事育児を再設計する方法

▼ポイント

  • 定期的に役割の棚卸しをする

  • 得意分野で分担する

  • 見えないタスクもリスト化

  • 完璧主義を捨てる


家事育児は「一度決めて終わり」ではなく、定期的に見直す必要があります。

特に子どもの月齢や仕事の状況で負担は変わるため、**月1回の“家庭ミーティング”**もおすすめ。

夫婦で

  • やっていること

  • できていないこと

  • しんどい部分
    を共有し、調整します。

また、“見えない家事”をリスト化すると一気に透明化します。

例:

  • 園からの手紙の確認

  • 子どもの成長に合わせた衣類の入れ替え

  • 健診予約
    など。

これを見て初めて「こんなに多いの!?」と気づく夫も多いのです。

夫婦で負担をフラットにすることで、言葉のストレスも激減します。


■おわりに

多くの男性は悪気があって「手伝っている」と言っているわけではありません。

むしろ、“少しでも支えたい”という優しさから出てくる言葉です。

しかし、妻の側には

  • ずっと家のことを抱えてきた負荷

  • 気づかれないストレス

  • 自分ばかりが責任者になるしんどさ
    が積み重なっています。

これらを理解し、**“手伝う人”ではなく“共に家庭を運営するパートナー”**として関われば、夫婦関係は驚くほど軽く、温かいものになります。

今日できる小さな行動から変えていきましょう。

「手伝う」ではなく、「一緒につくっていこう」という姿勢が、家族の未来を変えます。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。


■参考文献

  1. Daminger, A. (2019). The Cognitive Dimension of Household Labor. American Sociological Review.

  2. Bianchi, S. et al. (2012). Housework: Who Did, Does or Will Do It? Social Forces.

  3. “The Mental Load: Women’s Invisible Labor in the Home”
    https://www.apa.org/news/press/releases/mental-load

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