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運動したのに痛みが悪化?リハビリの落とし穴とは?

今回は、運動したのに痛みが悪化?リハビリの落とし穴とは?について説明していきます。

理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!

◆ 目 次

  1. はじめに

  2. 落とし穴①「痛いのは悪い動きが強化されているから」

  3. 落とし穴②「回数よりも“質”が悪化を招く」

  4. 落とし穴③「脳が痛みを“学習”してしまう」

  5. 落とし穴④「柔軟性より“安定性”が足りていない」

  6. 落とし穴⑤「疲労・ストレスが身体の使い方を変える」

  7. おわりに


◆ はじめに

「良くなるために運動したのに、むしろ痛みが強くなった…」

「リハビリを続けているのに改善しない」

こうした悩みは、実は想像以上に多いものです。

リハビリの現場では、“間違った努力が痛みを固定化する”という現象が起きます。

しかも本人は一生懸命やっているため、「なぜ悪化しているのか」という視点が抜け落ちてしまうのです。

本記事では、最新の国内外研究とリハビリの臨床経験をもとに、運動で痛みが悪化する理由=リハビリの落とし穴
を、誰でもわかりやすく解説。

さらに、今日から改善できる具体的対策も紹介します。


◆ 1|落とし穴①「痛いのは悪い動きが強化されているから」

  • 運動の“量”だけ増えて質が低い

  • 関節の軌道がズレたまま反復している

  • 動作の癖が脳に固定される

  • 痛みをかばう動きが逆に負荷を増大させる

《本文》

運動は正しく行えば痛みの改善に大きく役立ちます。

しかし、間違ったフォームで続けると、痛みの出る動きを強化してしまうことがあります。

特に多いのが、

・膝痛の人が膝中心でスクワット
・腰痛の人が腰を反らせすぎたままトレーニング
・肩痛の人が肩だけで腕を上げる動き
など。

動作の癖は反復によって神経回路に刷り込まれるため、「続ければ続けるほど痛みの原因が強くなる」という悪循環に陥ります。

これはリハビリの現場でも最も多い改善停滞のパターンで、近年の研究でも“不良運動パターンの反復が慢性痛を悪化させる”ことが報告されています。


◆ 2|落とし穴②「回数よりも“質”が悪化を招く」

  • 回数を増やすことに意識が向く

  • 動作の初動が雑になりやすい

  • 負荷の逃がし方が間違っている

  • インナーマッスルが働かずアウター過多に

《本文》

多くの人がリハビリを「回数で頑張るもの」だと思っています。

しかし、本当に効果を出すのは 正確さと丁寧さ です。

例えば腹筋運動。

100回行うより、正しいフォームで10回のほうが効果的で、安全性も高い。

回数に意識が行きすぎると、

・身体の準備ができていない
・フォームが崩れる
・本来使う筋肉を使えない

といった状態が起こり、結果的に痛みが増えます。

リハビリでは「動き始めの1センチが最重要」と言われるほど、質の部分が痛みに直結します。


◆ 3|落とし穴③「脳が痛みを“学習”してしまう」

  • 痛みの記憶が神経回路に残る

  • 軽い刺激でも痛みが起こる過敏化

  • 恐怖で身体が固まる

  • 痛みが“感覚”から“習慣”へ移行

《本文》

最新の痛み研究では痛みは身体だけでなく脳の反応でもあることが明らかになっています。

トロント大学の研究では、「脳が痛みを学習すると、実際の炎症がなくても痛みが出る」という結果が発表されています。

運動で痛みが出ると、脳は「この動きをしたら危ない」と記憶してしまい、その結果、筋肉は過剰に緊張し、さらに痛みが強くなる……。

つまり悪いループが完成します。

この状態では、むしろ痛みの少ない小さな動きから修正することが正解

いきなり大きな負荷をかけるほど痛む理由は、身体より“脳が拒否している”ためです。


◆ 4|落とし穴④「柔軟性より“安定性”が足りていない」

  • 伸ばすだけでは改善しない

  • 関節を支える深層筋が弱っている

  • 筋力バランスの偏りが痛みを生む

  • 体幹の微調整力が不足している

《本文》

多くの人が痛みを改善するためにストレッチを行います。

しかし実は、柔軟性だけでは痛みは改善しません

なぜなら、

・関節が不安定
・姿勢を支える筋が働かない
・ブレが大きい

という状態でいくら筋肉を伸ばしても、土台が揺らいだままだからです。

特に腰・膝・肩は、「柔らかいのに痛い」という人が非常に多い。

これはリハビリでも有名な“安定性の欠如パターン”。

欧米の理学療法研究では、「痛み改善には柔軟性より深層筋の活動が重要」と繰り返し報告されています。


◆ 5|落とし穴⑤「疲労・ストレスが身体の使い方を変える」

  • ストレスで呼吸が浅くなる

  • 肩・背中の筋が常に緊張

  • 支える筋が働きにくくなる

  • 疲労で動作が雑になり痛み増強

《本文》

意外に見落とされがちなのが、メンタル・疲労が動作そのものを変えてしまうという事実。

ストレスがかかると呼吸が浅くなり、横隔膜が固まります。

すると、体幹の安定性が低下し、日常の動作すべてが雑になり、関節への負担が増えます。

研究でも、「ストレスと慢性痛は互いに増幅しあう」ことが明らかになっています。

リハビリで効果を出すには、休息・深呼吸・睡眠も立派な治療。

むしろ、運動より優先されることすらあります。


◆ おわりに

運動は“正しく行えば”身体を変えてくれる、最大の治療法です。

しかし、間違ったやり方は痛みを固定化し、悪化させることさえある。

リハビリで大切なのは、
・フォーム
・動き出し
・負荷量
・呼吸
・安定性
・ストレスケア

このすべてが整ったときに、はじめて痛みが改善へ向かいます。

もし今、努力しているのに痛みが増えているなら、あなたが悪いのではありません。

“やり方”が身体に合っていないだけです。

今日から、小さく・正しく・丁寧に。

これを意識するだけで、痛みは確実に変わります。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。


◆ 参考文献

  1. van Dieën, J. H., Reeves, N. P., & Kawchuk, G. (2018).
    Motor control changes in low-back pain: Diversity and complexity.
    Nature Reviews Rheumatology.

  2. Caneiro, J. P., O’Sullivan, P., et al. (2020).
    Cognitive functional therapy for disabling low back pain.
    British Journal of Sports Medicine.
    👉 https://bjsm.bmj.com/content/54/12/742

  3. 厚生労働省・痛みの慢性化に関する研究報告(2021)
    「慢性疼痛と生活習慣・精神状態に関する調査」

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