今回は、「ワンオペ介護」を乗り越える方法について説明していきます
医療従事者の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
高齢化社会の進展により、介護が「家族の誰か1人の肩にかかる」という現象が珍しくなくなりました。
特に兄弟姉妹のいない「一人っ子」にとって、親の介護はすべて自分ひとりで背負うという現実が待っています。
国の調査によれば、2020年代に入り、65歳以上の親を持つ世代のうち、約13%が「ひとりっ子」であるとされており、介護者が1人しかいない「ワンオペ介護」のケースは今後も増加が予想されています。
本記事では、「介護を一人で抱える」ことの現実と、どうすれば孤立せず、仕事や自分の生活も守りながら介護を乗り越えられるのかを、多角的に解説します。
1. 「ワンオペ介護」の現実とリスクを正しく知る
ワンオペ介護が抱える主なリスク
- 身体的・精神的負担が極端に高くなる
- 睡眠不足、慢性的疲労、抑うつ症状の発症率が高い
- 社会的孤立につながりやすい
- 介護に時間を取られ、友人や社会との接点が希薄に
- 経済的なリスクも高まる
- 離職、収入減少、介護費用の自己負担増加など
一人っ子ならではのハンディ
- 相談相手がいない、代わりがいない
- 親の意思決定を一手に担うプレッシャー
- 何かあった時、すべての責任が自分に返ってくる
日本と海外の比較
- 日本ではまだ「家族が介護するのが当然」という風潮が根強い
- 欧米では「プロフェッショナルに委ねる」考えが定着しつつある
- 一人っ子の介護者が孤立しない支援体制が整備されている国(例:スウェーデン)
対応の第一歩
- まずは「自分ひとりで全部やろう」と思わないことが重要
- 客観的に今の状況を見直し、「必要な支援を知る・使う」が鍵
2. ワンオペ介護を乗り越える「戦略的サポート構築術」
① 公的支援を徹底的に使い倒す
- 介護保険制度の活用
- 訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせる
- 地域包括支援センターとの連携
- 地域に密着した支援の窓口。ケアマネとの連携が命綱になる
- 介護休業・介護休暇制度の活用
- 会社員ならば最大93日の介護休業取得も可能(要申請)
② 周囲を「頼る」ことを当たり前にする
- 近隣住民や親戚とのコミュニケーションを保つ
- いざという時に助けてもらえる関係性を作っておく
- 福祉ボランティアやNPOを活用
- 買い物代行、見守り訪問、外出支援など幅広いサポートがある
- オンラインコミュニティへの参加
- 同じ立場の人との交流が孤独を軽減し、実用的な情報も得られる
③ 介護「アウトソーシング」の導入
- 家事代行や民間介護サービスを適宜使う
- 介護タクシー、訪問看護、夜間見守りサービスなどを検討
- 民間の介護保険で「万が一の費用」に備える
3. 一人っ子でも「心が折れない」メンタルケアと将来設計
① 介護うつの予防法
- 感情を溜め込まず、定期的に吐き出す場を持つ
- 介護者向けカウンセリング、メンタルヘルスアプリの活用
- “小さな達成感”を日常の中に見つける
- 介護日記や記録を残し、自分を褒める習慣をつける
- 趣味や「自分時間」を削らない意識
- 15分でも好きなことをする時間が心の安定につながる
② 将来への不安に備える「情報武装」
- 成年後見制度や任意後見契約を事前に準備
- 認知症が進行した際の金銭管理や判断を第三者に委任
- 親の資産・財産の状況を見える化する
- どのような施設に入れるか、どのくらい介護にお金がかけられるか
- 介護施設の見学や情報収集を“元気なうち”から始めておく
③ 一人っ子だからこそ「最終的な意思決定力」を持つ
- 親と「延命治療」「最期の場所」について話し合っておく
- 自分の生活設計と介護計画をすり合わせる
- 将来の「自分の老後」にも備える意識をもつ
おわりに
一人っ子が介護を担うという現実は、非常に重たいものです。
ですが、「全部自分でやらなきゃいけない」という思い込みこそが、最大のリスクなのです。
「助けを求める」「制度を使い倒す」「気持ちを言葉にする」
それは、甘えではなく、生き抜くための選択肢です。
今の日本には、頼れる制度や人がいます。
勇気をもってその手を取れば、一人っ子でも「ワンオペ介護」は、必ず乗り越えることができます。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- 厚生労働省「令和3年度 介護をめぐる家族の現状に関する調査報告書」
- 東京都福祉保健局「ひとり介護と地域支援」レポート
- OECD: Long-Term Care Resources and Utilisation 2023