今回は、足のしびれは危険信号?腰椎ヘルニアを見分ける方法について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
📑目次
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はじめに
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足のしびれと腰椎ヘルニアの関係
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腰椎ヘルニアを見分けるサイン
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他の病気との違いを理解する
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最新研究が示す診断と治療の進歩
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日常生活でできるセルフケアと予防法
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おわりに
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参考文献
1. はじめに
「足がしびれるのは単なる疲れだろう」と思っていませんか?
実は、そのしびれが 腰椎椎間板ヘルニア(lumbar disc herniation) の初期サインである可能性があります。
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が突出して神経を圧迫し、腰痛や下肢のしびれ・痛みを引き起こす疾患です。
日本では働き盛りの30〜50代に多く、特に長時間のデスクワークや重量物を扱う仕事に従事する人に発症しやすいとされています。
本記事では、足のしびれが危険信号である理由、腰椎ヘルニアを見分ける方法、そして最新研究から明らかになった診断・治療の知見を紹介します。
2. 足のしびれと腰椎ヘルニアの関係
腰椎椎間板ヘルニアでは、突出した椎間板が神経根を圧迫することで、足のしびれや痛みが生じます。
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典型的な症状
・腰痛に続き、片脚にしびれや痛みが出る
・長時間立つ・歩くとしびれが悪化
・前かがみや座位で症状が強くなる -
神経根の障害パターン
・L4神経根障害:膝周囲のしびれ、膝伸展力低下
・L5神経根障害:すね・足の甲のしびれ、つま先上げ困難
・S1神経根障害:ふくらはぎ・足裏のしびれ、かかと立ち困難 -
しびれの特徴
・足先だけでなく太ももや殿部にも広がる
・感覚が鈍くなる「感覚低下」を伴う場合がある -
悪化の兆候
・夜間や安静時にも強いしびれが出る
・排尿・排便障害を伴う(馬尾症候群)
👉 しびれが続く場合、単なる疲労ではなく 神経圧迫のサイン の可能性が高いと考えましょう。
3. 腰椎ヘルニアを見分けるサイン
腰椎ヘルニアは腰痛だけでは診断できず、以下のような特徴的なサインを確認することが重要です。
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片側性の症状が多い
・左右どちらか一方の足にしびれ・痛みが集中 -
特定の動作で悪化
・前かがみ、長時間座位、くしゃみで症状増強 -
神経学的所見
・ラセーグ徴候(下肢伸展挙上テスト)でしびれが誘発
・腱反射の低下(膝蓋腱反射やアキレス腱反射) -
進行サイン
・筋力低下(つま先立ちやかかと立ちができない)
・感覚鈍麻が広範囲に広がる
👉 これらは整形外科診断で重要な指標であり、MRI検査と合わせて確定診断につながります。
4. 他の病気との違いを理解する
足のしびれ=腰椎ヘルニアとは限りません。似た症状を示す疾患を区別することが必要です。
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坐骨神経痛(原因症候群)
・梨状筋症候群など骨盤周囲での神経圧迫による
・腰痛が少なく、お尻から足にかけて痛む -
脊柱管狭窄症
・高齢者に多い
・歩行でしびれが増すが、座ると軽快する「間欠性跛行」 -
末梢神経障害(糖尿病性ニューロパチーなど)
・両側性で足先からじわじわ広がる
・腰痛を伴わないことが多い -
血管性疾患(閉塞性動脈硬化症など)
・足の冷感、脈拍減弱を伴う
・神経由来ではなく循環障害が原因
👉 「腰痛+片側のしびれ」の組み合わせは腰椎ヘルニアを強く疑うサインです。
5. 最新研究が示す診断と治療の進歩
近年、腰椎ヘルニアの診断・治療は大きく進歩しています。
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MRIによる詳細診断
・従来のX線では分からない軟部組織を可視化
・神経根圧迫の程度や炎症の有無を確認可能 -
保存療法の有効性
・欧州2023年ガイドラインでは「初期は保存療法が第一選択」
・薬物療法、理学療法、神経ブロックで改善する例が多数 -
運動療法の有効性
・体幹筋強化、ストレッチ、姿勢改善が再発予防に効果
・特にコアマッスル強化(プランク等)が推奨 -
低侵襲手術
・内視鏡手術や顕微鏡下手術の発展により、入院期間が短縮
・再発率も従来より低下
👉 最新の研究では「しびれが強くても時間経過で自然治癒するケース」が一定数あることも報告され、保存療法の重要性が再認識されています。
6. 日常生活でできるセルフケアと予防法
腰椎ヘルニアは再発率が高いため、日常生活での予防が重要です。
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正しい姿勢を保つ
・長時間座る場合は腰にクッションを当てる
・スマホ使用時の前傾姿勢を避ける -
体幹筋の強化
・毎日の軽いプランクや腹式呼吸運動
・腰椎の安定性を高め、再発予防 -
ストレッチの習慣
・太もも裏(ハムストリングス)や臀部を重点的に
・柔軟性を保つことで神経圧迫を軽減 -
体重管理
・肥満は腰椎に大きな負担
・食事改善と運動で適正体重を維持
👉 セルフケアを継続することで、手術を回避できるケースも多くあります。
7. おわりに
足のしびれは「単なる疲労」ではなく、腰椎椎間板ヘルニアの危険信号である可能性があります。
特に「片側のしびれ」「動作で悪化」「神経症状を伴う」といった特徴がある場合は、早めの整形外科受診が望まれます。
腰椎ヘルニアは、早期に気づいて対処すれば多くの場合、保存療法で改善可能です。
そして再発予防には「運動習慣」「姿勢の改善」「体幹筋の強化」が欠かせません。
しびれを軽視せず、体からのSOSを正しく読み取りましょう。それが将来の健康寿命を守る第一歩です。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
8. 参考文献
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日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」2023年版
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Kreiner DS, et al. An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy. Spine J, 2022.