肩関節周囲炎のリハビリについて説明していきます。
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理学療法士の視点から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
肩関節周囲炎、通称「五十肩」は、肩の痛みや動きの制限を引き起こす疾患です。
40代から60代に多く発症し、肩の腱や靱帯、関節包が炎症を起こして硬くなることで、肩の可動域が制限されます。
治療にはリハビリテーションが重要な役割を果たし、適切なリハビリを行うことで、肩の機能回復を促進し、痛みを軽減することが可能です。
今回は、
- 肩関節周囲炎の症状とリハビリの目的
- リハビリの具体的なアプローチ
- リハビリを成功させるためのポイント
をもとに、理学療法士の視点から、肩関節周囲炎のリハビリテーションについて詳しく解説します。
1. 肩関節周囲炎の症状とリハビリの目的
肩関節周囲炎は、初期段階で肩の痛みが徐々に現れ、次第に肩の動きが制限される特徴があります。
肩の動きが悪くなることで、日常生活での動作に支障をきたすことが多く、肩を動かすたびに痛みが生じることがあります。
リハビリテーションの目的は、肩の可動域を回復し、筋力を強化することで、肩の機能を改善し、痛みを軽減することです。
- a. 症状の経過とリハビリの段階
肩関節周囲炎は、通常、痛みが強くなる「急性期」、動きが制限される「凍結期」、そして徐々に回復する「回復期」という3つの段階に分けられます。リハビリのアプローチは、症状の段階によって異なります。
急性期では、炎症が強いため、安静と痛みの管理が中心となります。一方、凍結期では、肩の可動域が制限されるため、無理のない範囲でのストレッチや運動が必要です。回復期には、肩の可動域を広げ、筋力を回復させるためのリハビリが進められます。 - b. リハビリの具体的な目的
肩関節周囲炎のリハビリの主な目的は、以下の3つです。 - 痛みの軽減: 痛みを和らげるための方法として、アイシングや温熱療法、電気療法が使用されます。これにより、肩の炎症が抑えられ、リハビリが進めやすくなります。
- 可動域の改善: 肩の可動域を回復させるためには、関節包や筋肉を柔らかくするストレッチが重要です。特に、肩甲骨周りの筋肉を柔軟に保つことが、肩の動きを改善するために重要です。
- 筋力の回復: 肩関節周囲の筋肉を強化することで、肩の安定性を高め、再発を防ぐことが可能です。特に、肩甲骨周囲の筋肉や、回旋筋腱板(ローテーターカフ)を強化することが重要です。
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2. リハビリの具体的なアプローチ
肩関節周囲炎のリハビリテーションでは、痛みの軽減、可動域の改善、筋力強化を目指した具体的な運動療法や物理療法が行われます。
ここでは、段階ごとに適したリハビリの方法を紹介します。
- a. 急性期のリハビリ
急性期は、炎症が強く、痛みが激しいため、肩を無理に動かさないことが重要です。この段階では、痛みを軽減することが最優先されます。
アイシングと温熱療法: 肩の痛みを和らげるために、アイシングを行い、炎症を抑えます。冷却は1回15分程度を目安に行い、1日に数回繰り返します。また、痛みが軽減した場合には、温熱療法を併用し、血流を促進して肩の回復を助けます。
軽いストレッチ: 肩の痛みが軽減してきたら、軽いストレッチを取り入れます。無理のない範囲で腕を前方や横に軽く動かすことで、肩の柔軟性を保ちます。 - b. 凍結期のリハビリ
凍結期では、肩の可動域が著しく制限され、動かすと痛みが伴うことが多いです。この段階では、肩の動きを少しずつ取り戻すことが目標です。
関節モビライゼーション: 理学療法士による関節モビライゼーションが有効です。これは、関節の動きを滑らかにするための手技で、関節包や靭帯の緊張を緩和し、肩の可動域を広げます。
ストレッチと自動運動: 自宅でのセルフケアとして、肩を無理なく動かすストレッチや、ゆっくりとした自動運動を行います。タオルを使って肩を引っ張る動作や、肩甲骨を動かす運動が推奨されます。 - c. 回復期のリハビリ
回復期には、肩の可動域が徐々に改善され、痛みも軽減されてきます。この段階では、筋力強化と動作の回復に重点を置いたリハビリが行われます。 - 筋力トレーニング: 肩の筋力を回復させるために、軽いダンベルやゴムチューブを使った筋力トレーニングを行います。特に、肩甲骨周囲の筋肉や、回旋筋腱板を鍛えることで、肩の安定性を高めます。
- 機能的リハビリ: 日常生活での動作をスムーズに行うためのリハビリも重要です。例えば、腕を上げる動作や、物を持ち上げる動作を意識して行うことで、肩の機能回復を促進します。
3. リハビリを成功させるためのポイント
肩関節周囲炎のリハビリは、長期的な取り組みが求められます。
リハビリを成功させるためには、適切な運動とセルフケアが重要です。
ここでは、リハビリを継続し、効果を最大限に引き出すためのポイントを紹介します。
- a. 継続的なセルフケアの重要性
リハビリは、理学療法士の指導の下で行うだけでなく、自宅でのセルフケアも重要です。日常生活の中で肩を動かす意識を持ち、ストレッチや軽い運動を習慣化することで、肩の機能回復が促進されます。特に、痛みが軽減した後も、肩の柔軟性と筋力を維持するための運動を継続することが重要です。 - 毎日のストレッチ: 毎日5~10分程度のストレッチを行うことで、肩の柔軟性を保つことができます。肩甲骨を動かす運動や、肩を回す運動を取り入れると効果的です。
- 無理をしない: リハビリは無理せず、痛みが強い場合は一旦休むことも大切です。無理な運動はかえって炎症を悪化させることがあるため、体の声を聞きながら進めることが重要です。
- b. 定期的なリハビリと専門家のサポート
肩関節周囲炎のリハビリは、自己流ではなく、理学療法士の指導を受けることが推奨されます。定期的にリハビリを受け、肩の状態を確認しながら進めることで、回復が早まります。また、理学療法士はリハビリの進行状況に応じて運動内容を調整し、最適なアプローチを提供します。 - 定期的なリハビリ受診: 病院やクリニックでのリハビリを定期的に受けることで、肩の回復状況をチェックし、適切な治療を継続できます。
- 再発予防: 肩関節周囲炎は再発することもあるため、リハビリ終了後も予防のための運動を続けることが重要です。
おわりに
肩関節周囲炎のリハビリテーションは、痛みの軽減、可動域の回復、筋力強化を目指して行われます。
リハビリを継続的に行うことで、肩の機能を改善し、日常生活での動作がスムーズに行えるようになります。
また、セルフケアや専門家のサポートを活用しながら、長期的な視点でリハビリに取り組むことが重要です。
理学療法士として、肩関節周囲炎の患者に適切なリハビリを提供し、回復をサポートすることが私たちの役割です。
今回の話を参考に、肩関節周囲炎のリハビリに取り組み、患者の健康と生活の質を向上させるための手助けを行っていただければ幸いです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。