今回は、手のしびれと首の関係について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
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はじめに
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手のしびれが起こる仕組み
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首が原因となる代表的な疾患
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手のしびれを悪化させる生活習慣
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自分でできるチェックと予防法
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おわりに
はじめに
手のしびれを感じたとき、多くの人は「血流が悪いのかな?」や「手首や肘の問題かも」と考えがちです。
もちろん、手首の神経圧迫(手根管症候群など)や肘の障害が原因の場合もあります。
しかし、実際には「首」に原因が隠れているケースが非常に多いのです。
首には、脳から手や腕へ信号を送る「頸髄(けいずい)」や「神経根」が存在します。ここに異常が起こると、手の感覚異常やしびれ、さらには筋力低下まで生じることがあります。
近年の研究でも、手のしびれ患者の一定割合は頸椎疾患に関連していることが明らかになっています(Nakajima et al., Spine, 2021)。
この記事では、手のしびれが首からくる仕組み、代表的な病気、悪化させる生活習慣、そして予防法までを、わかりやすく解説していきます。
1. 手のしびれが起こる仕組み
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神経圧迫:首の骨(頸椎)の変形や椎間板の突出で神経が圧迫される
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血流障害:首や肩の筋緊張により、神経や血管の循環が低下する
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炎症反応:頸椎の周囲組織に炎症が起こり、神経が過敏になる
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中枢神経の関与:頸髄が圧迫されると、両手に広がるしびれが出現する
単なる「血行不良」と片付けるのではなく、「どこで神経が障害されているか」を特定することが重要です。
2. 首が原因となる代表的な疾患
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頸椎椎間板ヘルニア:椎間板が飛び出し神経根を圧迫、片側の手のしびれが多い
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頸椎症性神経根症:加齢による骨棘や椎間板変性で神経が圧迫される
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頸椎症性脊髄症:脊髄が圧迫され、両手のしびれや巧緻運動障害が起こる
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胸郭出口症候群:首から鎖骨にかけての神経が圧迫される疾患
欧米のガイドライン(North American Spine Society, 2020)では、頸椎疾患に伴うしびれは「神経学的評価」と「MRI」での診断が推奨されています。
3. 手のしびれを悪化させる生活習慣
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長時間の前かがみ姿勢:デスクワークやスマホ首が首の神経圧迫を助長
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運動不足:頸部や肩甲骨周囲の筋力低下が姿勢不良を招く
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枕の高さ不適合:高すぎる枕や合わない寝具が首の緊張を増やす
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冷えやストレス:血流低下や筋緊張でしびれが強くなる
近年の研究(Kwon et al., Eur Spine J, 2022)では、「座位時間の長さ」が頸椎性神経障害のリスクを増加させることが報告されています。
4. 自分でできるチェックと予防法
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首を反らすとしびれる? → 椎間板や神経根圧迫の可能性
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両手に広がるしびれ? → 頸髄症の可能性あり、早めの受診が必要
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首や肩のストレッチ → 僧帽筋・肩甲挙筋を緩めて神経圧迫を予防
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エクササイズ:肩甲骨を動かす運動や頸部安定化トレーニングが有効
理学療法の分野では、特に「頸部深層筋の強化」がしびれ改善に効果的とされています(Jull et al., Manual Therapy, 2019)。
5. おわりに
手のしびれは「血行が悪いだけ」と軽視されがちですが、実は首の神経障害が関与している場合が多いです。
特に両手に広がるしびれや、巧緻運動(ボタン掛けや書字)の障害を伴う場合は、早期の専門医受診が必要です。
マッサージやストレッチで一時的に改善することもありますが、根本的な解決には「正しい診断」と「リハビリを含めた継続的な管理」が欠かせません。
首と手は密接に関わっているため、違和感を感じた時点で早めに対処することが、一生の健康を守る第一歩となります。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Nakajima H, et al. Cervical spine disorders and hand numbness. Spine (Phila Pa 1976). 2021.
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Kwon JW, et al. Sedentary behavior and risk of cervical radiculopathy. Eur Spine J. 2022.
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Jull G, et al. Efficacy of neck stabilization exercise in chronic cervical disorders. Manual Therapy. 2019. NCBI Link