今回は、人工関節手術のあと、リハビリで差がでる理由について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
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はじめに
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人工関節手術後の回復プロセス
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リハビリ開始時期で変わる成果
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個別性リハビリが重要な理由
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心理的要因と生活習慣の影響
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最新研究が示すリハビリの未来
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おわりに
はじめに
人工関節置換術は、変形性関節症や関節リウマチなどにより関節の痛みや機能障害が強い方に行われる、代表的な整形外科手術です。
特に股関節や膝関節の手術は日本でも年間10万件以上行われており、その成果は大きく期待されています。
しかし、同じように人工関節を入れても、回復のスピードや最終的な生活の質(QOL)には大きな個人差が生じます。
その差を決定づける大きな要素のひとつが「リハビリ」です。
本記事では、人工関節手術後のリハビリがなぜ大切なのか、そしてなぜリハビリによって差が出るのかを、最新の研究や臨床経験を踏まえて解説します。
人工関節手術後の回復プロセス
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手術直後は疼痛と腫脹が強い
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関節可動域の制限が顕著に出る
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筋力低下により歩行が不安定
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リハビリで回復に必要な刺激を与える
人工関節は「器械的」には安定していますが、周囲の筋肉や神経がすぐに適応するわけではありません。
術後は関節が安定していても、筋肉は切開や不使用による急激な筋力低下を起こします。
そのため、リハビリによって関節可動域訓練や筋力強化を段階的に行い、再び「使える関節」に育てていく必要があります。
リハビリ開始時期で変わる成果
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早期離床で合併症を予防できる
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術後翌日からの訓練が推奨される
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遅れると筋委縮が進行する
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長期的な歩行能力に差が出る
最新の海外研究(例えば2022年の米国リハビリ医学会の報告)では、手術翌日からリハビリを開始した群と数日後に開始した群では、6か月後の歩行スピードや日常生活動作(ADL)に明確な差が出ることが分かっています。
血栓症や肺炎などの合併症を防ぐためにも、早期リハビリは極めて重要です。
個別性リハビリが重要な理由
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年齢や体力で適応が異なる
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股関節と膝関節で重点が変わる
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筋力バランスの評価が必須
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生活環境に応じた訓練が必要
人工関節リハビリに「マニュアル通り」はありません。
例えば、膝人工関節では大腿四頭筋の回復が重要ですが、股関節人工関節では中殿筋などの安定筋群が重要です。
また、一人暮らしか家族がいるかによっても訓練内容は変わります。
理学療法士は個別性を評価し、最適なリハビリを設計することが求められます。
心理的要因と生活習慣の影響
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不安や恐怖心が動きを制限する
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うつ症状が回復を遅らせる
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運動習慣がある人は予後が良い
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栄養状態が回復を左右する
意外に見落とされがちなのが心理的要因です。「動かすと壊れるのでは」という恐怖心は、必要なリハビリを避ける原因になります。
また、栄養不足や運動不足の人は筋力回復が遅れる傾向があります。
メンタルサポートや栄養指導を並行して行うことが、リハビリの成果を大きく左右します。
最新研究が示すリハビリの未来
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VRを用いたリハビリプログラム
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ウェアラブルセンサーで動作解析
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AIによる回復予測と個別最適化
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在宅でも可能な遠隔リハビリ
近年はリハビリテーションもテクノロジーを活用した進化を遂げています。
特にAIやIoTを使った歩行解析、在宅でも実施可能なオンラインリハビリは、日本でも導入が始まっています。
これにより病院に通う回数を減らしつつ、質の高いリハビリを継続できるようになるでしょう。
おわりに
人工関節手術は「入れれば治る」手術ではありません。リハビリというプロセスを通じて、初めて関節が本来の機能を取り戻し、痛みのない生活へとつながります。
開始時期、個別性、心理的サポート、そして最新技術の活用が、その差を決定づける要因です。
手術を受ける方も、医療従事者も、「リハビリで差が出る」という意識を持ち、主体的に取り組むことが何よりも大切です。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Smith TO, et al. The effect of early rehabilitation following total knee replacement: a systematic review and meta-analysis. Rheumatology. 2022.
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日本整形外科学会「人工関節置換術とリハビリの実際」
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American Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS): Rehabilitation after joint replacement