今回は、COPDという病気について説明していきます
呼吸療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
「最近、息切れがひどくなった」「階段を登るのがつらい」「咳や痰が長引いている」
——これらの症状に思い当たることはありませんか?
もしあなたが喫煙歴20年以上で、現在も喫煙を続けている、あるいは過去に長期間喫煙していたなら、**COPD(慢性閉塞性肺疾患)**という病気を知っておく必要があります。
COPDは、肺が少しずつ壊れていく進行性の病気です。
しかも、初期にはほとんど自覚症状がないことが多く、「ただの年齢のせい」と勘違いされやすいため、気づいた時には既に中〜重度というケースも少なくありません。
2023年の日本呼吸器学会の発表によると、日本国内における潜在的なCOPD患者数は推定530万人以上。
そのうち**診断されているのはわずか6.4%**に過ぎないという衝撃的なデータもあります。
本記事では、喫煙歴20年以上の方に向けて、COPDとは何か、そのリスク、見逃されがちな症状、そして今からできる対策について徹底的に解説していきます。
1 COPDとは? その正体と仕組み
まずは、COPDという病気の基本的な特徴と、肺の中で何が起こっているのかを知ることが大切です。
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COPDは「肺の生活習慣病」
慢性的に肺が炎症を起こし、肺胞(肺の空気を取り込む小さな袋)や気道が徐々に壊れていく病気。完全に治ることはなく、進行を遅らせることが治療の目的です。 -
主な原因は喫煙(90%以上)
たばこの煙に含まれる有害物質が、肺の中で慢性炎症を引き起こし、時間をかけて組織を破壊していきます。非喫煙者でも、受動喫煙や大気汚染によって発症するケースもあります。 -
2つの主要な病態がある
1. 肺気腫:肺胞の壁が壊れ、酸素を効率よく取り込めなくなる
2. 慢性気管支炎:気道が狭くなり、痰や咳が続く状態 -
なぜ「静かな病気」と呼ばれるのか
肺は予備能力が高く、機能が50%以下になっても症状が出ないことが多い。つまり「息苦しさを感じた時点で、すでに病気は進行している」可能性が高いのです。
2 見逃されやすい初期症状と進行のサイン
喫煙者が感じがちな「ちょっとした不調」も、実はCOPDの初期サインかもしれません。
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風邪が治りにくくなった
COPDの初期には、普通の風邪から咳や痰が長引く傾向があります。これを「ただの風邪」として放置しがち。 -
朝の咳や痰が習慣化している
喫煙歴の長い人ほど、朝方に咳や痰を感じやすくなります。これは気道の炎症が慢性化している証拠です。 -
少しの運動で息が切れる
階段を数段上がっただけで呼吸が浅くなる、息苦しくなるのは肺活量の低下サイン。加齢ではなくCOPDの始まりかもしれません。 -
気温差や空気の変化に弱くなった
寒い朝や乾燥した空気に触れると、咳が止まらなくなるのも気道過敏の表れです。 -
声がかすれる・咽がつまる感じ
喫煙による喉の炎症や気道の狭まりが原因で、呼吸音や声の変化が起こることもあります。
これらの症状がある人は、たとえ現在タバコを吸っていなくても、過去の喫煙歴があるだけでリスクは十分に存在しています。
3 今からできる予防と対策
COPDの治療には「早期発見」と「生活習慣の見直し」がカギを握っています。
まだ症状が軽いうちに行動することが重要です。
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1分でできる「ブロー検査(スパイロメトリー)」
呼吸器科や一部の内科で受けられる検査。大きく息を吸って勢いよく吐くだけで、肺の機能(1秒量など)をチェック可能。COPDの診断にはこの検査が不可欠です。 -
禁煙が最大の治療・予防法
COPDは進行性の病気ですが、禁煙によって進行スピードを大幅に遅らせることができます。特に、20年以上喫煙してきた人にとって、1日でも早い禁煙が命を救う一歩となります。 -
栄養バランスと抗炎症食品の摂取
オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油)やビタミンD(干し椎茸・鮭など)には、肺の炎症を抑える効果があるとされ、米ハーバード大学の研究でも報告されています。 -
肺リハビリテーションという選択肢
軽度から中等度のCOPD患者に効果的なのが「呼吸トレーニング+運動療法」。息切れを減らし、日常生活の活動量を上げることができます。医師の指導のもと行うことで安全かつ効果的。 -
家族にも情報を共有することの重要性
COPDは生活習慣と密接に関係するため、同居家族やパートナーに病気の情報を共有し、禁煙や生活環境の改善に協力してもらうことで、治療や再発防止がより現実的になります。
おわりに
「タバコはもうやめたから大丈夫」と思っていませんか?
実は、COPDはタバコをやめた後にも進行し続けることが分かっています。
だからこそ、症状が出る前に、自分の肺の状態を一度チェックしておくことが重要なのです。
喫煙歴20年以上という事実は、それだけで「COPD予備軍」として見なされるレベル。
息苦しさや咳は、あなたの体からのサインかもしれません。
今すぐにでも一度、呼吸器内科で相談し、ブロー検査を受けてみてください。
それは、数十年後の自分を守る「投資」にもなります。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
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日本呼吸器学会「COPD診療ガイドライン2023」
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Celli, B. R., et al. (2022). “Chronic Obstructive Pulmonary Disease: Early Diagnosis and Treatment.” New England Journal of Medicine.