今回は、心臓に優しい食事プレート、心リハ指導士が教える実践例について説明していきます
心リハ指導士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
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はじめに
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食事プレートモデルとは何か?意義と基本構成
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心臓に優しいプレート構成の要点5つ
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日本食を活かした実践プレート例
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心リハ患者での介入研究・プレートモデルの効果
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継続できる工夫・実践のコツ
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おわりに
はじめに
心臓リハビリテーション(心リハ)では、運動・薬物療法だけでなく栄養指導が不可欠です。
特に食事の質を整えることは、二次予防・再発予防・予後改善に直結します。
多くの患者さんにとって「何をどれだけ」「どう組み合わせて」食べたらいいかが分かりにくいため、わかりやすく実践しやすいガイドとして「食事プレートモデル(plate model)」が有用です。
実際、このプレートモデルは心筋梗塞後患者への栄養介入でも有効性を検討する研究が行われています。
本稿では、心臓に優しいプレートの設計原則、日本食を活かした構成、研究エビデンス、そして継続できるコツを紹介します。読者が、日々の食事を通じて「心臓にやさしい選択」をできるようになることを目指します。
食事プレートモデルとは何か?意義と基本構成
まず、食事プレートモデル (plate model) の基礎と、その利点を押さえておきましょう。
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概念
食事全体を「主菜・副菜・主食・付け合わせ(野菜や果物)」などの区画に分けて、バランスを視覚的に示す方式
→ 一皿で理想的バランスを直感的に理解・実践しやすくする -
利点
・過剰なエネルギー摂取を防ぎやすい
・栄養バランス(たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル・食物繊維)を整えやすい
・調理/組み合わせの迷いを軽減できる
・患者指導・目標共有ツールとして有効 -
基本構成の例
・プレート半分以上を「野菜・果物」
・たんぱく源(魚・鶏・豆類など)を適量
・全粒穀物または未精製の炭水化物を適量
・良質な脂を含む調味料(植物油・ナッツ等)を控えめに
・塩分・加工食品を極力抑える -
心臓病患者での適用時の注意点
・塩分制限、飽和脂肪の制限、コレステロール管理
・腎機能や薬剤(利尿薬、降圧薬など)を念頭に置く栄養調整
・個別性を重視する(体重・腎臓機能・併存疾患・服薬状況に合わせて)
👉こうした構造化されたモデルは、患者にも指導者にも「迷わない・修正しやすいガイド」として役立ちます。
心臓に優しいプレート構成の要点5つ
実践にあたって、特に意識すべきポイントを5つ挙げ、それを満たす工夫を紹介します。
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野菜・果物を皿の半分以上に
- 緑黄色野菜・淡色野菜・海藻など種類を多くする
- 彩りを意識して、抗酸化物質・食物繊維を幅広く摂る
- 果物はデザートや副菜として少量 -
たんぱく質源は脂質質を意識
- 魚(特に青魚の DHA/EPA)を週数回取り入れる
- 鶏の皮なし・豚・牛は赤身を選ぶ
- 豆類・大豆製品(豆腐・納豆・枝豆など)を活用 -
炭水化物は全粒・未精製を選ぶ
- 玄米・雑穀米・胚芽米・全粒パンなどを主体に
- 精製された白米・白パンは控えめに
- 食べる量・タイミングにも配慮 -
良い脂を程よく取り入れる
- オリーブ油・亜麻仁油・菜種油などオメガ-9/オメガ-3脂肪酸を用いる
- ナッツ・種子類を少量取り入れる
- バター・ラード・加工油脂・揚げ物などは頻度・量を大幅に削減 -
塩分・調味料・加工食品を抑制
- 調味は出汁・香味野菜・酢・ハーブ・スパイスを活用
- 加工食品・スナック・冷凍食品などはできるだけ控える
- 目安として、日本の食事摂取基準では飽和脂肪酸・コレステロール量制限や塩分制限が示されている(コレステロールは 1 日 200 mg を目安など)
👉これら 5 要点を守るだけで、かなり心臓に優しい食事プレートに近づけられます。
日本食を活かした実践プレート例
日本人に馴染みやすく、心臓に優しい「和食ベース」のプレート例を紹介します。
風味・習慣を活かしながら、栄養バランスも取る工夫をしています。
実践例 A:魚中心プレート(昼食想定)
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野菜・副菜(プレート半分近く)
・ほうれん草のおひたし+にんじん・大根の薄切りサラダ+海藻(わかめ) -
主菜(たんぱく質)
・焼き魚(鯖、サーモン、鰤など青魚)または塩焼き、あるいは煮魚 -
炭水化物
・雑穀米または玄米 + 少量白米混合 -
良質脂・調味
・味噌汁(減塩みそ)+昆布だしを活用
・小さじ程度のごま油やオリーブ油、すりごま、刻みネギなど香り素材 -
デザート/果物
・みかん・柿・キウイなど旬果物を少量
実践例 B:豆・鶏・根菜型プレート(夕食想定)
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野菜・副菜
・蒸し野菜(ブロッコリー・カリフラワー・かぼちゃ)+きんぴら(ごぼう・人参) -
主菜
・蒸し鶏(皮なし)または鶏胸肉の香味焼き + 豆腐ステーキ -
炭水化物
・麦ご飯または押し麦入りご飯 -
良い脂・調味
・味噌汁 + だしベース + 少量ごま油・オリーブオイル
・香味調味料(しょうが・大葉・にんにく少量)活用 -
デザート/副要素
・ヨーグルト(無糖・低脂肪)+ベリー類少量
なぜこれらが良いのか?(エビデンス支援)
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日本の疫学研究では、魚・野菜・緑茶・大豆などを多く含む「和食・日本食パターン」が心血管疾患死亡率低下と関連するという報告が複数ある。
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「The Japan Diet」として、動脈硬化性心血管疾患予防を目的とした食パターンを日本動脈硬化学会が提唱しており、魚・植物性食品増加、精製炭水化物・動物脂肪の抑制を含めることが推奨されている。
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心リハ・栄養教育のレビューでも、地中海食や和食的構成を取り入れた栄養指導が代謝・心血管アウトカム改善と関連する可能性を指摘している。
👉これら実践例は、見た目・味・和食文化にも合致しつつ、心臓を意識したバランスを持たせたものです。
心リハ患者での介入研究・プレートモデルの効果
理論だけでなく、心リハ患者を対象とした研究で、プレートモデルを用いた栄養介入の効果が検証されたものを見ておきましょう。
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心筋梗塞後患者を対象としたプレートモデル介入研究
・Jayawardena らは、心筋梗塞後患者においてプレートモデルを用いた食事介入を行い、体重減少・耐糖能・脂質プロファイル改善などに効果を示す可能性を評価した。
・同様の試験デザイン(12 週間介入、体重目標 10 % 減少など)を用いたプロトコルが報告されており、食事モデルの実行可能性・効果検証が進められている。 -
ランダム化研究結果
・ある研究(intervention vs control)が報告され、介入群では臨床・代謝パラメータ(体重、血圧、脂質など)で有望な変化が認められたとの結果報告が存在する。
・ただし、補足リスク因子管理(運動、服薬、モチベーション維持など)が併存しているため、食事効果単独を明確に分離するのは難しい面もある。 -
栄養教育と心リハアウトカムとの関連
・心リハプログラムにおける栄養教育のレビューでは、食事遵守は代謝改善(血糖・脂質・体重)および心血管アウトカム向上と関連しており、個別調整・継続支援が鍵とされている。
・ただし、多くの研究では追跡期間が短い・中断率が高いという課題が報告されており、長期効果・実装性を高める工夫が求められている。 -
課題と展望
・プレートモデルは直感的で有用だが、個人差(嗜好・文化・予算・調理技術など)への対応が必要
・モニタリング・フォローアップ、行動変容支援、ICT 利活用(アプリ・写真記録など)を併用する研究が今後重要
👉研究段階とはいえ、プレートモデルは心リハ栄養指導における実践的なツールとして、効果の見込みと応用可能性を持っています。
継続できる工夫・実践のコツ
理論・モデルが良くても、「継続できなければ意味が薄くなる」ため、実際に患者さんが取り入れやすくする工夫をいくつか紹介します。
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可視化・ルール化
・あらかじめプレート設計を印刷・掲示しておく
・1 週間予めメニュー案を立て、買物リストと分量を用意
・“皿を半分空けておく”“野菜を多めに取る”など簡易ルール化 -
段階的導入
・初めは主菜・炭水化物を以前通りにして、野菜量を徐々に増やす
・週 1 回のチャレンジデーで新しい構成を試す -
嗜好の取り入れ
・好きな魚・野菜を中心に組む
・和風調味や香味野菜で風味を出して飽きにくくする
・季節の食材を取り入れて変化をつける -
外食・弁当対策
・定食選びで「魚定食+小鉢野菜多め」「サラダ+魚+雑穀ご飯」などを選択
・弁当なら、主菜以外を自家製副菜にする(蒸し野菜・サラダなど)
・調味料・ソース持参(ドレッシング・減塩調味料を少量) -
フォローアップ・記録
・食事写真を撮って振り返る
・定期栄養相談・栄養士・心リハ担当とのレビュー
・モバイルアプリ・記録ツールを使って摂取傾向を可視化 -
行動変容支援
・目標を小さく(例:まず野菜を 2 種類追加)
・成功体験を重ねる
・家族参加・共同実践でモチベーション維持
👉工夫を取り入れることで、プレートモデルは「無理なく、日常に馴染むスタイル」として定着しやすくなります。
おわりに
心臓に優しい食事プレートモデルは、理論と実践をつなぐ強力なツールです。
特に心リハ環境においては、患者さんが迷わず実践できるガイドとして非常に有益です。
日本食の長所(魚・野菜・大豆文化など)を取り入れたプレート例は、地域性・嗜好性を活かしながらも心血管リスク低減を目指す構成です。
研究レベルでは、心筋梗塞後患者を対象としたプレートモデル介入研究が行われ、体重・代謝・脂質改善の可能性を示す報告もあります。
ただし、継続性・実用性・個別対応が鍵であり、指導側・患者側双方の支援体制・工夫が必要です。
最終的には、毎日の「食べる選択」が、心臓を守る力の一部となります。あなた・利用者が自信を持ってプレートを選び、無理なく継続できるよう、このガイドが助けになれば幸いです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Jayawardena R 他, Effects of “plate model” as a part of dietary intervention for post-myocardial infarction — プレートモデル介入研究報告
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Popiolek-Kalisz J 他, The Role of Dietary Education in Cardiac Rehabilitation (2025) — 心リハにおける栄養教育のレビュー
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本間 他, 日本食パターンと心血管疾患との関連 — 日本における疫学研究(リンク可)PMC+1