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歩くたびに膝がギシギシ…放置するとどうなる?

今回は、歩くたびに膝がギシギシ…放置するとどうなる?について説明していきます

理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!

目次

  • はじめに

  • 1 「“ギシギシ音”や痛みは初期サイン—まず見逃さないで」

  • 2 「放置すると進行する構造変化— 変形性膝関節症 のメカニズム」

  • 3 「日常機能の低下・歩行制限・生活の質(QOL)悪化」

  • 4 「将来的に手術や関節置換に至るリスクと最新データ」

  • 5 「早期対応・セルフケア・整形外科受診のタイミング」

  • おわりに

  • 参考文献


はじめに

「歩くと膝がギシギシ音がする」「立ち上がると膝が痛い」「なんとなく膝が“しっくりこない”」――こうした膝の違和感を「まあ年だし」「少し使いすぎたからかな」などと軽く済ませている方は多いでしょう。

ですが、整形外科的な観点から言えば、これらは初期の警告サインであって、放置すると症状が進行し、歩行や日常生活に支障をきたす「構造的な変化」へと発展する可能性があります。

最新の研究では、例えば 変形性膝関節症(膝の関節軟骨・骨下骨・関節包が関与する疾患)は、進行パターンが「安定型」と「悪化型」に分かれ、**悪化型では関節隙間が大きく狭まる(進行が速い)**という変化が示されています。

このコンテンツでは、「歩くたびに膝がギシギシ…」という状態をきっかけに、放置した場合にどのような変化が起きるのか、構造的・機能的・将来的リスクという観点から、最新の国内外研究も交えて整理し、誰でも分かりやすく、

かつ役に立つようにまとめます。ご自身の膝の状態に「これは無視できないかも」と感じたら、ぜひ一読してください。


1 「“ギシギシ音”や痛みは初期サイン—まず見逃さないで」

・膝で「ギシギシ」「軋む」「ずれる感じ」が出る意味

  • 歩行や立ち上がり、階段昇降で膝に“軋み音(クレピタス)”が出るというのは、関節内で「軟骨の摩耗」「骨‐骨の接触」「関節液・滑膜の変化」「軟部組織の異常な動き」が起きている可能性を示唆します。

  • 研究では、軋み音がある人・膝に違和感がある人は、将来的に関節軟骨変性を発症・進展させやすい群に属するという報告があります。

  • 初期段階では痛みが「軽い」「使った後だけ」「休めばマシになる」といった曖昧なものが多く、「これくらいなら大丈夫」と放置してしまうケースが非常に多いです。

・初期サインとしてチェックすべきポイント

  • 歩き始め・立ち上がり・階段使用時に「ギシッ」「カクッ」と膝で音がした/違和感があった。

  • 膝に“定期的な”痛みではなく、「たまにヒリヒリ」「歩行中末端が引っかかる感じ」が出る。

  • 休んでいれば改善するが、使い始めると再び出るというパターン。

  • 昔に膝のケガ(捻挫・半月板損傷・靭帯損傷)や、膝の手術をしたことがある。

  • 日常的に膝に負荷がかかる(重い荷物を運ぶ・階段が多い・立ち仕事・肥満など)環境にある。

・なぜ早期に気づいておきたいか

  • 初期の“ざわつき”の段階で介入することで、軟骨・関節構造の破壊進行を遅らせたり、痛みや機能低下を抑えたりできる可能性があります。研究でも、早期段階の膝OA(変形性膝関節症)では「進行型となる患者群を予測し、早期対策を取る」方向が提示されています。
    -逆に、違和感・軋み音・軽い痛みを見逃していると、関節構造の変化が静かに進行し、気づいたときには“もう手のつけられないほど進んでいた”というケースも少なくありません。

・プロの視点からの補足

整形外科・リハビリテーションの現場では「歩くたびに膝が気になる」と訴える患者さんに対して、まず“使い方・動作・膝への荷重”を評価します。

例えば、歩行時の膝の荷重が片側に偏っていないか、筋力(特に大腿四頭筋・ハムストリングス・内側広筋)・膝関節可動域・足関節・股関節の連動がどうかを確認します。

軋み音だけで終わらせず、その背景に“関節構造・動作パターン”の異常がないかをチェックすることが、進行を食い止める鍵となります。


2 「放置すると進行する構造変化—変形性膝関節症のメカニズム」

・構造的変化の流れ

  • 関節軟骨の表面に微細な損傷が蓄積 → 滑膜・関節液の変化・骨下骨へのストレス増加。

  • 軟骨層の減少・亀裂発生・摩耗進行 → 関節隙間(Joint Space Width; JSW)の狭小化(X線所見)に反映。多数の研究でJSW狭小=進行の指標とされています。

  • 椎間板などと同様、膝関節も“安定期と進行期”があり、進行群では数年で著しい変化を認めることがあります。例えば、ある研究では2〜4年で痛み進行・レントゲン所見進行を予測モデル化しており、AUC(予測精度)0.76などの数値を報告しています。

  • 骨棘(オステオファイト)の形成・骨硬化・骨下骨浮腫・滑膜肥厚・靭帯・腱・筋の二次変化が加わる。 さらに変形位(内反膝・外反膝)・アライメント異常が進むと、荷重分布が偏り、局所的な破壊が加速します。

・放置時に起こる進行

  • 関節隙間が徐々に狭くなる → レントゲン上 “グレード” が上がる。

  • 軟骨下骨・骨棘変化が進行 → 骨‐骨接触・摩擦増加。

  • アライメント変化(膝がO脚・X脚が進む) → 負荷が一部に集中。

  • 軟部組織(二次的に筋・腱・靭帯)・関節包・滑膜の変性が起こる。

  • 神経・血管・筋膜の反応(炎症・感作)増加 → 痛みが慢性化・可動域制限・筋力低下。

・最新研究から見た注意点

  • 2025年の論文では、機械学習モデルを用いて早期膝OAの進行パターンを分析し、「骨粗鬆症あり→三コンパートメント型進行」「高骨密度あり→単コンパートメント型進行」など予測できる因子が示されました。

  • また、2023年の研究では“機械的な歪‐せん断ひずみ(SFD・MSS)”という生体力学的指標が、進行型膝OAの識別因子になり得るという報告も出ています。

  • これらの知見から、膝の「ギシギシ」「違和感」という段階でも、内部では「このままでは構造変化が進むかもしれない」と警戒すべきということが裏付けられています。

・構造変化を防ぐにはどうするか

  • 日常的に膝荷重を分散させる動作・歩行パターンを意識する。

  • 膝の筋力(特に大腿四頭筋・内側広筋・大殿筋・腸腰筋)を維持・強化する。

  • 体重管理・肥満回避:膝への負荷は体重×数倍になると言われており、体重増加は進行リスクの増大因子です。

  • 動作時・歩行時のアライメント(足の向き・膝の軌道)を整える。必要なら理学療法士・整形外科医と連携。

  • 定期的なチェック(膝に違和感がある時点で画像診断/整形外科相談)を早期に行う。

・プロの視点からの補足

構造変化が進行してしまうと、“痛み”だけでなく“機能”にまで影響を及ぼします。例えば、膝を伸ばす・曲げる角度が制限される、階段昇降が辛くなる、歩幅が狭くなる、歩く速度が落ちる、休みがちになるなど。

こうした“動けなくなるプロセス”を避けるには、違和感段階での “動き方・筋力・アライメント・荷重分散” に対する介入が極めて重要です。


3 「日常機能の低下・歩行制限・生活の質(QOL)悪化」

・膝の進行が日常生活に与える影響

  • 膝に痛み・違和感があると、人は無意識のうちに“痛めないように” 歩行パターン・体重移動・筋出力を変えます。これが長期化すると、筋力低下・関節可動域制限・他の関節(股・足・腰)への代償負荷へと波及します。

  • 歩き始めが遅くなる・休憩が増える・エスカレーターや階段を避けるようになる・旅行・散歩を控えるようになるなど、活動量が低下します。活動量低下=筋力衰え・代謝低下・体重増加という“悪循環”に陥るリスクがあります。

  • 世界保健機関(WHO)は、膝OAを含む下肢関節疾患が「高齢者の主要な歩行障害・活動制限原因」であると位置付けており、QOL/自立度/転倒リスク・介護リスクにも関連することを示しています。

・進行による具体的な機能低下

  • 歩く速度が落ちた/歩幅が狭くなった。

  • 階段昇降で脚を引いたり、手すりに頼ったりする。

  • 長時間立つ・歩く・買い物・通勤で膝の疲れ・痛みを感じるようになった。

  • 膝を完全に伸ばせない、または曲げきれない・正座・あぐら・しゃがみが難しい。

  • 積極的な運動・趣味活動を避けるようになり、「膝が気になるから」という理由で外出が減った。

・研究が示す“機能低下”のエビデンス

  • 2015年のシステマティックレビューでは、変形性関節症の進行要因として「痛み・機能制限・筋力低下・アライメント異常」が挙げられており、進行群ではこれらの変数が予後に影響すると指摘されています。

  • また、2021年の縦断研究では“膝痛を抱える人”のうち、物理活動ガイドラインを満たさない・NSAIDsを多用する人が、レントゲン上の進行(関節隙間狭小化)リスクが2倍以上高かったという報告があります。

・生活の質悪化の背景

  • 膝の痛み・違和感による心理的影響(「また痛くなるかも」/「膝のせいで迷惑かけるかも」)→活動回避。

  • 筋力低下・歩行制限 → 体重増加・心肺機能低下・代謝異常(例えば肥満・糖代謝異常)ともつながる。

  • 膝以外の部位(腰・股関節・足首)にもストレスが移行 → 二次的な痛み・障害が出る可能性。

  • 社会的活動・趣味・旅行・日常の買い物などでの支障が増え、“自分で動く”ことに対するハードルが上がる。

・プロの視点からの補足

整形外科では、膝痛だけでなく「歩行速度・歩行パターン・筋力・脚長差・左右バランス」などを測定し、“このままだと歩けなくなる”リスクを早期に捉えるようにしています。

特に、“歩くたびにギシギシ”というサインがある人には、日常機能を維持するための早期介入(運動指導・物理療法・体重管理)が非常に有効です。

機能が落ちてから整形を受けると、回復に時間がかかるだけでなく“もう動けない”という状況に陥る可能性が高まります。


4 「将来的に手術や関節置換に至るリスクと最新データ」

・進行すると待ち受ける“手術・関節置換”の世界

  • 変形性膝関節症がかなり進行した場合、痛みや可動域制限・歩行障害が強まって 保存的治療(薬・理学療法・運動療法)だけでは不十分 となり、最終手段として関節鏡・骨切り術・あるいは膝関節全置換術(TKA: Total Knee Arthroplasty)が検討されます。

  • 論文でも「関節隙間が狭くなった」「骨棘が大きい」「機能評価が落ちている」などの条件が揃った人ほど、将来的に手術対象となる可能性が高いことが示されています。例えば、FNIH OA Biomarkers Consortiumの論文では、2〜4年間での痛み/レントゲン進行を予測するモデルが提示されています。

・リスク因子・予測因子

  • 高齢・肥満(BMI高値)・性別(女性が多め)・以前膝を酷使した職業・スポーツ歴がある。

  • 膝のアライメント異常(内反膝・外反膝)・関節隙間既に狭い・骨棘や骨下骨変性の所見あり。

  • 運動習慣が乏しい・筋力低下・歩数が少ない・他関節(股・膝・足)に負荷がかかっている。

  • NSAIDsを多用・痛みを動作制限で抑えている・日常活動を回避している。研究ではNSAIDs使用者は進行リスクが2倍以上という報告もあります。

・最新研究からの示唆

  • 2025年の機械学習モデル研究では、膝OA進行型を予測する際、骨粗鬆症の有無・骨密度・代謝性疾患の有無が “どの型(骨主導/炎症主導/軟骨変性型)で進行するか” を区別する指標になり得るという報告が出ています。

  • また、2021〜2023年の研究では「力学的ストレス(膝へのせん断・圧縮)+代謝・炎症反応」が進行促進因子として注目されており、荷重を軽視しないことが重要です。

・手術・置換に至るまでの過程と覚えておきたいこと

  • 関節軟骨が著しく減少 → 骨‐骨接触が出現 → 痛みが強く、可動域が制限される。

  • 歩行時の支持脚期で膝がたわむ・不安感が出る・歩数が減る。

  • 症状が日常生活(日常歩行・階段・立ち上がり)に支障をきたす段階に至る。

  • 膝関節の変形(O脚・X脚・捻れ膝)・他関節への代償負荷・転倒リスク増加。

  • 保存療法(理学療法・運動療法・体重管理・装具)でも症状・進行抑制が困難になり、手術適応・置換検討となる。

・プロの視点からの補足

整形外科医の立場から言えば、「歩くたびに膝がギシギシ」という段階で受診し、適切な評価(X線・MRI・歩行分析・筋力可動域検査)を受けておくことが、手術・置換に至るリスクを下げる“予防的な選択”となります。

手術になってからでは、回復までの時間・費用・社会活動制限が増えるため、早期介入の方が「済むダメージを少なく」「日常生活を守る」ために重要です。


5 「早期対応・セルフケア・整形外科受診のタイミング」

・まずはセルフケア・習慣改善から

  • 歩行時・階段昇降時の膝への荷重を減らす:例えば、荷物を軽くする、階段をゆっくり降りる/昇る、エスカレーターを使うなど。

  • 筋力トレーニング:大腿四頭筋・内側広筋・ハムストリング・大殿筋・腸腰筋など、膝・股関節・体幹を支える筋肉を鍛える。

  • 柔軟性向上:ハムストリングス・ふくらはぎ・腸脛靭帯・大腿筋膜張筋・内転筋などをストレッチして、膝への負荷を分散。

  • 体重管理:膝への荷重が減るだけで進行リスクが下がるため、BMIを適正範囲に保つ。

  • 適切な靴・インソール:足元の支持を整え、膝・股関節・足関節のアライメントを整える。

・整形外科を検討すべきシグナル(箇条書き)

  • 歩くたび「ギシギシ」「ズキッ」と音・痛みが出る・違和感が続く。

  • 日常の歩行・階段・立ち上がり・座る動作で膝に支障を感じるようになった。

  • 休んでも変化せず、痛みが増えてきた/夜間・安静時でも痛みが出る。

  • 以前膝のケガ・手術歴がある・変形(O脚・X脚)が進んできた。

  • セルフケア・運動・体重管理を始めたが、膝の違和感・痛み・ギシギシ音が数週間~数ヶ月続いている。

・整形外科での主な検査・アプローチ

  • レントゲン・関節隙間幅測定・骨棘評価・アライメント評価。

  • MRI・超音波検査・歩行・荷重分析が必要な場合も。

  • 理学療法(筋力強化・動作指導・荷重分散トレーニング)・運動療法。

  • 保存的治療(生活習慣改善・体重管理・装具・インソール)を数ヶ月試しても改善しない場合、関節鏡・骨切り術・関節置換を検討。

・受診タイミングとしての目安

「ギシギシ音・違和感」が出始めてから 3~6ヶ月以内 に改善傾向がなければ、整形外科の受診を強く検討してください。特に、痛み・機能低下・アライメント異常・体重増加などの危険因子がある場合は、早めの受診が将来の重症化・手術リスクを下げます。

・プロの視点からの補足

膝関節は “体重を支え・動きを伝える” という非常に重要な役割を担っています。

したがって、膝に「音・痛み・違和感」が出たらそれは“日常動作に支障が出る前の警告”とも言えます。

整形外科・理学療法を活用して、「動けなくなる前に」「手術を必要としない段階で」手を打つことが、長期的な健康・活動・人生の質を守るための賢い選択です。


おわりに

「歩くたびに膝がギシギシ…」という違和感を、つい「歳だし」「少し動きすぎただけ」と軽く考えてしまうのは自然なことです。

しかし、その背後では 関節軟骨の微細損傷・荷重の偏り・筋・腱・靭帯・骨までを巻き込んだ構造変化 が静かに進行している可能性があります。

研究でも、膝の進行は個人差が大きく、「進行しない安定期」の人もいれば、「数年で急速に悪化する群」があることが報告されています。

そのため、違和感の段階で「早めの対応・改善・チェック」をすることが、将来的な手術・歩行制限・QOL低下を防ぐ鍵です。

筋力を保つ・体重管理をする・歩行・荷重の分散を意識する・アライメントを整える――こうしたセルフケアに加え、「改善しない」「痛み・音・動きづらさが増した」時には速やかに整形外科を受診することで、膝を“使える状態”で長く保つことが可能です。

どうかこの機会に、ご自身の膝の「ギシギシ」「違和感」「歩きづらさ」のサインをしっかり受け止め、早めに動いてみてください。未来の“歩けない”“動けない”を防ぐために。

(※本コンテンツは医療情報提供を目的としており、診断・治療を保証するものではありません。具体的な症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。)

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

参考文献

  1. Collins J.E., van Spil W.E., et al. “Trajectories of Structural Disease Progression in Knee Osteoarthritis.” PMC 2021; (see article) (2021).

  2. Li X., Li C., Zhang P. “Predictive models of radiographic progression and pain progression in patients with knee osteoarthritis: data from the FNIH OA biomarkers consortium project.” Arthritis Research & Therapy. 2024;26:112.

  3. Mohout I., Elahi S.A., Esrafilian A., et al. “Signatures of disease progression in knee osteoarthritis: insights from an integrated multi-scale modeling approach.” Frontiers in Bioengineering and Biotechnology. 2023;11:1214693. https://doi.org/10.3389/fbioe.2023.1214693

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