今回は、転倒予防は足首にあり?今日からできる簡単トレーニングについて説明していきます。
理学療法士の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
目次
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はじめに 
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1 「なぜ“足首”が転倒予防の鍵なのか?」 
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2 「足首・足部の機能低下が引き起こす転倒リスク」 
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3 「理学療法士が教える、今日からできる足首トレーニング」 
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4 「トレーニングのポイントと継続のコツ」 
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5 「それでも転びそう…という時の受診・専門家相談のタイミング」 
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おわりに 
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参考文献 
はじめに
「転びそうになった」「ふとした拍子に足を滑らせた」「歳をとるとバランスが取りにくくなってきた」――こう感じたことはありませんか。
こうした“転倒の危機”を防ぐため、多くの人は「筋トレ」「バランス練習」「歩き方を変えよう」といった対策を思い浮かべます。
確かにそれらも有効ですが、理学療法士の視点から言えば、“足首・足部”の機能を整えることが転倒予防の重要な鍵 となります。
最近の研究では、足首・足部の筋力や可動域・感覚・安定性が、バランス維持・歩行時荷重変動・転倒リスクと強く関連していることが明らかになっています。
本稿では、「足首がなぜ転倒に関係しているのか」をわかりやすく解説し、誰でも今日から始められる足首トレーニングを、理学療法士としておすすめします。
転ばない体を作るために、まずは“足元”から整えていきましょう。
1 「なぜ“足首”が転倒予防の鍵なのか?」
・足首・足部が果たす役割
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足首・足部は、立位・歩行・方向転換・荷重移動というあらゆる「身体を地面に支える/重心を制御する」動作の最前線です。 
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立っている時、足首関節は地面からの衝撃・荷重変化・バランス変動を受け止め、「足首の動き(背屈・底屈・内反・外反)+足底面支持+筋・腱・靭帯+神経/感覚」の総合機構でバランスを保っています。 
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歩行時や段差昇降時、足首の可動性・筋力・感覚(足底・足首周囲)・反応速度が適切でないと、重心移動・脚の着地・支持脚から遊脚への切り替えでバランスを崩しやすくなります。 
・研究が示す足首関連の転倒予防因子
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足首背屈可動域の低下が「転倒経験あり群」で有意に認められた。 
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足首底屈筋(ふくらはぎ・腓腹筋・ヒラメ筋など)筋力が低いと、移動性・バランス指標・転倒恐怖スコアが高かった。 
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足首・足底の機能(感覚・荷重コントロール・足底圧分布)不良が「転倒恐怖」「歩行速度低下」「バランス悪化」と関連。 
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足首・足部のエクササイズ(トレーニング)を含むプログラムが、足首可動域・筋力・バランス改善に有効というメタ解析報告あり。 
・理学療法士から見た“足首が転倒予防に効く理由”
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足首が“スムーズに機能する”ことで、脚・膝・股関節・体幹へと繋がる「支持・荷重移動パターン」が整い、バランスを崩す確率が減ります。 
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足首の筋力・可動性が低いと、脚を着地した瞬間の“揺れ・ずれ・補正動作”が増え、それが転倒の引き金となることが多いです。 
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高齢者においては、足首の機能低下(筋力低下・可動域制限・感覚低下)が他のバランス因子(視覚・感覚・反射)と相まって転倒リスクを高めるため、足首へのアプローチが“低コスト・高効果”な介入ポイントとなります。 
・まとめ
足首・足部は“転倒予防の隠れた主役”です。転ばない体を作るためには、足首を整えることから始めるのが理学療法士の視点であり、今日から始められるトレーニングも多くあります。
次章では、足首機能低下がどのように転倒リスクになるかをさらに掘り下げます。
2 「足首・足部の機能低下が引き起こす転倒リスク」
・足首機能低下がもたらす動作変化・リスク
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足首背屈可動域が制限されていると、脚を前に出す・足を置く・地面を蹴る動作がぎこちなくなり、歩幅が狭くなる・すり足になる・つまずきやすくなる。 
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足首筋力(特に底屈筋・背屈筋)が低下していると、脚を支える踏み込み・着地時の衝撃吸収/反力生成が弱く、安定性が低下。 
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足底・足関節の感覚(プロプリオセプション/足底荷重分布/足裏圧変動)が低下すると、支持脚期・遊脚期の切り替えで身体が“揺れる”時間が長くなり、バランス崩れに繋がる。 
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足首・足部の機能が低下していると、脚→膝→股関節→体幹へと続く荷重移動パターンが乱れ、腰・膝・股・足全体に補償負荷が生じ、転倒だけでなく関節痛・筋疲労も起きやすくなる。 
・最新研究が示す足首・足部と転倒・バランスの関連
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2022年の研究では、足首底屈筋力の低さ・足底荷重時間の長さ・足関節の触覚感覚低下が「転倒恐怖・歩行性能低下」と有意に関連していた。 
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足首・足部のエクササイズプログラムが「足首可動域・筋力・バランス(眼を開けた静的バランス)を改善した」というメタ解析結果あり。 
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総合的な転倒予防運動プログラム(バランス+下肢筋力+足首機能含む)は、転倒・転倒関連傷害を減らすという高証拠の報告あり 
・理学療法士から見た“機能低下の見落としがちポイント”
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足首だけでなく、「足底(足の裏)」「足趾(足の指)」「足関節周囲の筋・腱」「足部アーチ/足の支持面」も含めて評価することが重要です。 
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高齢者やバランスに不安がある人では、視覚・内耳・感覚系・反射系も影響するため、足首機能だけを整えても“結果が出にくい”ことがあり、全体アプローチが必要となります。 
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「足首が硬い」「かかとを上げづらい」「足首から地面への踏み込みが弱く感じる」という本人の自覚があれば、早めのトレーニング・ケア開始が望ましいです。 
・まとめ
足首・足部の機能が低下すると、バランス維持・歩行・荷重移動・反応動作に影響が生じ、それが転倒リスクを高める原因となります。
足首こそ、転倒予防の“ボトムライン”として捉えましょう。
3 「理学療法士が教える、今日からできる足首トレーニング」
・準備・注意点
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椅子・壁・手すりなど“支え”になるものを用意して、安全に行う。 
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靴を脱いで素足または薄手のソックスで行うと、足底感覚が高まる。 
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痛みが強い・骨折後・変形性疾患・神経障害の既往がある場合は、理学療法士・整形外科医に相談を。 
・トレーニング
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足首上下運動(背屈・底屈) - 
椅子に座り、片脚ずつつま先を上に引き(背屈)、次につま先を下に押し(底屈)。各10回 ×2セット。 
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ふくらはぎ・前脛骨筋をゆるやかに動かし、足首の可動域を整える。 
 
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カーフレイズ(かかと上げ) - 
壁や椅子の背もたれを支えに、つま先立ちになるようかかとを上げる→ゆっくり下ろす。10回 ×2セット。 
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ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)を鍛え、支持脚期の安定性を高める。 
 
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つま先立ち後ろ足ストレッチ - 
壁に手をつき、片脚を後ろに一歩引いてかかとを床につけたまま膝を伸ばす/または曲げる。左右各30秒 ×2回。 
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足首底屈筋・ふくらはぎをゆるめ、可動域を増やす。 
 
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足指・足底トレーニング(タオルギャザ/足指グーパー) - 
足の下にタオルを敷き、足指でタオルを掴むようにして手前に引く。10回 ×2セット。 
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足底の感覚・支持面を改善し、足首・足部と地面との関係を強化。 
 
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片脚立ちバランス訓練 - 
支えに手を添えて立ち、片脚を少し上げて15〜30秒キープ。左右各2〜3回。慣れてきたら支えを離す。 
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足首周囲・体幹・下肢のバランス制御力を養う。 
 
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・頻度・継続の目安
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初めは週3〜4回、1回10〜15分程度でも十分。 
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8〜12週間継続することで、足首筋力・可動域・バランスが明らかに改善されたという報告あり。 
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毎日のウォーキング・立ち仕事・買い物など「脚を使う日常活動」にも取り入れると効果が持続しやすい。 
・理学療法士からの補足
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トレーニング中に「足首がガクッとなる」「ぐらつく」「左右で感覚が違う」という場合は、足関節・膝・股関節・体幹の連動も評価が必要です。 
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足首トレーニングだけでなく、「足首–膝–股–骨盤–体幹」の力の流れを整えることが、より安定した下肢支持を作ります。 
・まとめ
今日から始められるシンプルな足首トレーニングを継続することで、足首が“転倒に備える支え”として力を発揮し始めます。
しっかりと継続することが、転倒予防への第一歩です。
4 「トレーニングのポイントと継続のコツ」
・継続のためのポイント
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時間を決めて習慣化:毎日「朝起きてすぐ」「就寝前」「買い物前」など決まった時間に行うとルーティン化しやすい。 
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段階的に負荷を増やす:初期は支えありで行い、慣れてきたら支えを少なくする・回数を増やす・片脚回数を増やす。 
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目に見える進捗を記録:トレーニング日数・回数・片脚立ち時間などをメモしておくとモチベーション維持に役立つ。 
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環境を整える:足元を滑りにくく・支持できる椅子や壁を確保し、安全に行う。立ち仕事や家事の合間に短時間でも組み込む。 
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痛み・違和感を無視しない:足首・脚・膝・股関節に「痛み・腫れ・熱感」が出た場合は無理をせず、1〜2日休む・専門家に相談。 
・効果を高めるための“併用技”
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足首トレーニングに加えて 軽いウォーキング・階段昇降・バランス歩行 を日常に取り入れると、足首–下肢–体幹の機能がより統合されます。研究でも「下肢強化+バランストレーニング」が転倒予防に有効とされています。 
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足元の履物・インソールを見直す:硬すぎ/滑りやすい靴では足首–足部への負荷が増えることも。足底支持・足関節可動性を考えた靴選びもトレーニングの効果を支えます。 
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立っている時間・歩いている時間を増やす:長時間座りっぱなし・立ちっぱなしを減らし、脚を使う時間を増やすだけでも足首の支持能力が維持されやすくなります。 
・理学療法士からの注意点
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「今日は〇回やったからOK」ではなく「このトレーニングで脚・足首がどう感じるか(重い/楽/ふくらはぎが張る)を観察する」習慣を持つことが、フォーム維持・効果継続につながります。 
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足首トレーニングを始めて「転びそうという不安が減った」「脚が疲れにくくなった」「立ち上がりが楽になった」という変化が出てきたら、次は「脚–膝–股関節–体幹」のトレーニングへも目を向けましょう。 
・まとめ
トレーニングは“継続が力”です。足首へのアプローチを日々の習慣に組み込むことで、転倒予防という長期的な安心を手に入れましょう。
次章では、専門家相談を検討すべきタイミングをお伝えします。
5 「それでも転びそう…という時の受診・専門家相談のタイミング」
・受診を検討すべきサイン
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立っている・歩いている時に「よろめく」「ふらつく」「足首がぐらっとする」ことが頻繁にある。 
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片脚立ち・歩行・段差昇降で「足首がグラグラ」「支えられない」感じがする。 
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足首・足・膝・股関節・体幹に「痛み・腫れ・感覚異常(しびれ・冷え・チクチク)」「既往に神経・血管・足部変形がある」。 
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転倒経験がある・転倒に対して恐怖を感じて生活を控えている・活動量が著しく減ってきた。 
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トレーニングを継続しても「脚が変わらない」「バランスが改善しない」「転びそうになる状況が減らない」。 
・専門家が行う評価・アプローチ
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理学療法士による足首・足部・下肢筋力・可動域・バランス・歩行分析。 
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整形外科医・理学療法士による足関節・足底・脛骨・腓骨・靭帯・関節・神経・血管の構造チェック(レントゲン・超音波・感覚・神経伝導など) 
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靴・インソール・足底支持面の評価・改善。 
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多面的な転倒リスクアセスメント(環境・視覚・感覚・薬剤・病気・立ち上がり動作など) → 足首機能だけでなく全体を整える。 
・理学療法士からの補足メッセージ
足首トレーニングは非常に有効ですが、「転びそう」という感覚がある方・転倒経験がある方は“足首だけ”ではなく“下肢‐体幹‐環境”すべてを評価した方が安全です。
専門家による評価・介入が、転倒による骨折・入院・活動制限という重大な結果を防ぐ鍵となります。
・まとめ
自宅でトレーニングを始めても、以下のようなサインがあれば早めに専門家を頼ることが大切です。
「変わらない」「転びそうになる」「脚の状態に不安がある」…そんな時は、自分ひとりで抱え込まず、理学療法士や整形外科医に相談を。安心して歩ける毎日を守るために。
おわりに
転倒を防ぐために必要なのは、実は大がかりな運動や器具ではなく、**「足首・足部を整えること」**です。
足首がしっかり機能していれば、脚・膝・股関節・体幹へと続く支持構造が安定し、バランス・荷重移動・歩行という日常の動きに余裕が生まれます。
研究でも、足首・足部の筋力・可動域・支持感覚は転倒リスク・バランス機能と関連しており、トレーニングで改善可能であることが示されています。
今日から少しずつ、足首トレーニングを取り入えてください。毎日の習慣化こそが、将来の“転ばない安心”を支える土台です。
そしてもし「トレーニングをしても変化が出ない」「転びそうになる不安が残る」ようなら、早めに理学療法士・整形外科医に相談することで、より一層安全な歩行・生活が手に入ります。
どうぞ、この機会に足元から転倒予防を始めましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Schwenk M., De Haven J., Honarvararaghi B., Najafi B. “Effectiveness of foot and ankle exercise programs on reducing the risk of falling in older adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” Aging. 2014;6(12):1061-1078. https://doi.org/10.18632/aging.100722 
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Papalia G.F., Papalia R., Diaz Balzani L.A., Torre G., Zampogna B., Vasta S., Fossati C., Alifano A.M., Denaro V. “The Effects of Physical Exercise on Balance and Prevention of Falls in Older People: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Journal of Clinical Medicine. 2020;9(8):2595. 


