今回は、父親の孤独。育休を取って感じたリアルについて説明していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
■目次
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はじめに
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育休を取った父親が最初にぶつかる「静かな孤独」
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社会から切り離された感覚と“父親としての無力感”
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育児を通して気づく「夫婦の役割ギャップ」と自分の未熟さ
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父親の孤独を軽くするための具体的な行動
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父親として、そして一人の人間として成長するために
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おわりに
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参考文献
■はじめに
育休を取得する男性が増えています。
しかし「育休=幸せで充実」というイメージとは裏腹に、多くの父親が密かに抱えるのが “父親の孤独” です。
赤ちゃんと過ごす時間は、確かにかけがえのないものです。
しかし同時に、
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社会との接点が薄れる
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感謝される実感が少ない
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育児への自信が持てない
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妻の負担に対して罪悪感を抱く
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相談できる仲間がいない
といった複雑な心理が層のように重なります。
特に日本では「男性は外で働くもの」という価値観がまだ根強く、育児に主体的に取り組む父親は“称賛される一方で、理解されにくい”というジレンマを感じやすいと多くの研究で指摘されています。
本稿では、
●実際に育休を取った父親が感じるリアル
●科学的知見から見た父親の心理変化
●孤独を軽くし、自己効力感を取り戻す方法
を解説します。
1. 育休を取った父親が最初にぶつかる「静かな孤独」
▼ポイント
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日中、大人と話さない時間が増える
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育児の達成感が得にくい
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娘や息子との関係構築に時間がかかる
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妻のペースについていけず孤立感を覚える
初めて育休を取ると、多くの父親が驚くのが “圧倒的な静けさ” です。
職場のように、誰かが、自分の存在を必要としてくれるわけでもない。
赤ちゃんは泣き続けることはあっても、自分を評価してくれるわけではない。
実際、海外の研究では“男性は社会的フィードバックが少ない環境で自己効力感が低下しやすい”ことが示されています。
さらに、赤ちゃんは生後しばらく「ママ中心」であるため、父親が抱っこしても泣き止まないことが多い。
“母親の代わりになれない”という無力感は、想像以上に心に響きます。
父親自身は「育児がつらい」とは言いにくいため、静かに孤独を抱え込むのです。
2. 社会から切り離された感覚と“父親としての無力感”
▼ポイント
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収入が減ることで価値を失った感覚を持ちやすい
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育休中、周囲の理解が乏しい
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自分だけ「取り残された感覚」
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育児に慣れた妻との差が広がる
育休に入ると、多くの男性は社会とのつながりが一気に希薄になります。
職場のメールも通知も減り、友人との会話も減り、時間だけがゆっくり流れる。
その過程で “自分が社会にとって必要とされていないのでは?” という感覚が芽生えます。
さらに、妻はすでに育児の流れが身についているため、父親は常に一歩遅れているように感じがちです。
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授乳のリズム
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おむつ替えのスピード
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泣きの原因の推測
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睡眠スケジュールの調整
どれを取っても妻が的確で、「自分は何もできていない」と思いやすい。
研究でも、“男性は妻の育児スキルを見て自信を失いやすい傾向がある”と指摘されています。
妻との仲が悪いわけではなく、ただ「追いつけない自分」が苦しくなるのです。
3. 育児を通して気づく「夫婦の役割ギャップ」と自分の未熟さ
▼ポイント
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妻は“24時間の育児脳”で動いている
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夫はタスク型、妻は全体管理型
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父親の孤独は“比較”から生まれる
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本当の敵は「情報差」
育休に入って初めて、妻がどれほど多くのタスクを同時進行していたか気づく父親は多いです。
妻は
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次の授乳時間
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睡眠間隔
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離乳食の進み方
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健診や予防接種のスケジュール
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ベビー用品の補充
など、“未来までを見据えた思考”で動いています。
一方、父親は“目の前のタスク”をこなすことに集中しがち。
この差が、「自分は育児適性が低い」という誤った自己評価につながります。
実際には、これは能力の問題ではなく「経験値とメンタル・ロードの違い」。
育児経験が浅い父親が自信を失うのは当然で、孤独は「未熟さ」ではなく「学びの途中」である証なのです。
4. 父親の孤独を軽くするための具体的な行動
▼ポイント
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“一人で抱えない”ことを最優先に
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役割を“担当制”にする
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父親仲間をつくる
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1日の中に“父親ではない時間”を作る
父親の孤独は「構造的な孤独」です。
努力だけで乗り越えようとすると、逆に消耗します。
まず必要なのは、孤独を言語化し、共有すること。
妻に言いにくい場合は、行政の父親向け相談窓口やオンラインコミュニティが大きな助けになります。
また、役割を “担当制” にすると孤独は大幅に軽減されます。
例:
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お風呂は父担当
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朝の支度は父が仕切る
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夜の寝かしつけを父の時間にする
責任があることで、成長と達成感が生まれるからです。
さらに、育児の合間に30分でも「父親ではない時間」をつくること(散歩、読書、カフェでもOK)は心の回復に大きく役立ちます。
5. 父親として、そして一人の人間として成長するために
▼ポイント
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孤独は「適応の途中」に起きる自然な反応
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父親の成長は最初は“遅いが確実”
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妻との協力が家族機能を安定させる
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孤独の先に“父親としての喜び”がある
父親の孤独は、決して悪いものではありません。むしろ「父親としてのアップデートのサイン」です。
社会心理学の研究によれば、“男性は育児に主体的に関わるほど幸福度と自己肯定感が上がる”ことが分かっています。
つまり、今感じている孤独は、未来の“親としての自信”のために必要な通過点なのです。
また、妻との協働が増えると夫婦の結束は強まり、「チームとして育てる」という感覚が生まれます。
孤独の底で学んだことは、数年後、必ず父親としての大きな財産になります。
■おわりに
父親の育休は、社会が思うほど「楽」ではありません。
むしろ、自分の弱さや孤独と向き合う時間でもあります。
しかしその孤独は、“父親としての成長の種”でもあります。
不安を抱えながら、手探りで赤ちゃんと向き合い、時に失敗し、時に泣き、少しずつ自分の役割が形になっていく。
そのプロセスこそ、父親であることの尊さです。
あなたの孤独は、決して無駄ではありません。
ゆっくり、あなたのペースで成長していけば大丈夫です。
その積み重ねが、子どもにとっての“世界一の父親”になっていきます。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
■参考文献
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Harrington, B., et al. (2020). The New Dad: The Career-Caregiving Conflict. Boston College Center for Work & Family.
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Cabrera, N. et al. (2018). Fatherhood in the Twenty-First Century. Child Development Perspectives.
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APA: Father Involvement and Well-being
https://www.apa.org/pi/families/resources/fatherhood
