" />

知っておこう、パーキンソン病のリハビリテーション

 今回はパーキンソン病のリハビリテーションについて説明していきます。

 

 

はじめに

 パーキンソン病は進行性疾患であり、病期に応 じてリハビリテーション治療の内容は変更が必要となります。

早期においては、活動的なライフスタイル を奨励し、バランス,筋力,関節可動域,有酸素容量を改善する積極的訓練の指導などを行います。

姿勢反射障害が出現すると、転倒対策や,移乗・姿勢・ リーチ・バランス・歩行の各課題に対して取り組む 必要があります。

アンケート調査において,病期が進むにつれて運動機能面だけでなく、非運動機能に対する対応が必要となることが明らかとなってきています。

運動学習は早期より低下し、リハビリテーショ ン指導は早期から行う必要があり、積極的な運動負荷を行うことが効果的であるとの報告がみられるようになりました。

 ※運動学習とは、練習や経験を通じて運動や行為能力を獲得する一連の過程のことです。一例を示せば「自転車や車の運転の仕方」「泳ぎ方」なども運動学習を通じて獲得できる動作です。

パーキンソン病のリハビリテーションの治療の意義について

 

パーキンソン病は進行性の中枢神経変性疾患であり、本邦において指定難病疾患の神経疾患では最も多いとされています。

リハビリテーション治療を依頼される機会は増えています。黒質緻密部のドパミン作動性ニューロンの変性によるドパミンの喪失によりさまざまな症状を起こします。

運動症状としては、

  1. 動作緩慢
  2. 固縮
  3. 振戦
  4. 姿勢反射障害
  5. 歩行機能低下

などの運動機能低下をきたすことが分かっています。

 認知機能障害(高次脳機能障害)では

  1. 気分障害
  2. 睡眠障害
  3. 自律神経障害

などの非運動障害の合併を認め、ドパミンの低下により、運動の自動制御の低下と認知制御の増加があり、これらに対する運動の治療的役割が報告されるようになりました。

治療として薬物治療は必須で、リハビリテーショ ン治療を同時に活用することで、運動機能向上やADL/QOL の向上を図ることができ、薬物治療の効果を最大限に引き出すことができるといわれています。

パーキンソン病のリハビリテーション治療の内容 について、病期に応じて変更する必要がある.表 1 にパーキンソン病の病期にあわせた目標と治療介入について下記に示します。

早期においては、活動的なライフスタイルを奨励し、バランス,筋力,関節可動域, 有酸素容量を改善する積極的訓練の指導などを行います。

.Hoehn & Yahr Stage IIIとなり姿勢反射障害が出現する頃には、転倒が増え、移乗,姿勢,リー チ,バランス,歩行において問題点が出現する時期でもあります。そのため、これらを解決するような訓練や指導が追加されます。例えば、cue(手がかり)を 取り入れた運動や音楽療法などが追加されます。

最近、2 年間の運動習慣による健康関連 QOL と機動性の変化について検討した報告があります。

定期的に週に 2.5 時間以上の運動を行っている者と そうでない者に分けて検討したところ、2 年後、前 者は後者よりも健康関連 QOL と機動性の低下の幅が小さかったことが示されました。

 

 Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)と血中の脳由来神経栄養因子(brain-derived neuro- trophic factor:BDNF)の変化について検討

 これによると,運動を行うことで, UPDRS は低下し,血中の BDNF が上昇していることがみられ,運動による神経保護作用の可能性を示唆しています。

これらはより早期のパーキンソン 病患者において効果的であると推測できます。

リハビリテーションの治療として勧められているもの

上記の表のように早期より活動性低下予防,動作や転倒への不安予防,身体機能の維持・向上を目標にリハビリテーション指導を開始し、前傾姿勢やすくみ足の問題が出現するようになると、転倒予防をはじめ、移乗,姿勢,リーチ,バランス,歩行に対するリハビリテーション治療が必要となってきます。

病期の進行とともに、パーキンソン病症状に対する リハビリテーション治療と不活動に伴う二次的な症状に対するリハビリテーション治療について行う必要が出てきます。

代表的な訓練としてはリズムや音楽にあわせた歩行訓練などがあり,cue を利用した外発性随意運動を取り入れた訓練が効果的であるとされています。

※外発性随意運動とは、視覚、聴覚あるいは、他の感覚系をトリガーとして、自己の意思あるいは意図に基づく運動のことです。

 歩行障害や姿勢反射障害を伴っているパーキンソン病患者に対して試みる価値は高く、効率よく運動学習ができるCue である視覚刺激や聴覚刺激を利用した運動は、小脳・運動前野系を駆動しているといわれており,以前より,リズムにあわせた歩行練習では,自分のペースでの歩行練習よりも歩行速度や歩行率などにおいて有意に改善したとの報告があがっています。

終わりに

 パーキンソン病患者に対するアンケート調査において,普段より運動を行っていると回答した者は 71%おり,そのほとんどの者が運動の効果を実感 していたと言われています。

診断後に教育を含めリハビリテー ション指導を行い,ADL および QOL の維持・向 上を図ることは重要で,患者のニーズを把握し、評価を行ったうえで生活指導が行えるよう、生活期リハビリテーション担当者とも連携する必要があると考えます。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA