今回は、バセドウ病と橋本病:甲状腺の異常で起こる病気について説明していきます。
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医療従事者の立場から説明していきますので、是非参考にしてみて下さい!
はじめに
バセドウ病と橋本病は、いずれも甲状腺の異常によって引き起こされる疾患であり、多くの人々にとって身近な病気ではありませんが、適切な診断と治療を受けることで日常生活に支障をきたさず過ごすことが可能です。
甲状腺は、身体の代謝やエネルギー消費を調整する重要な役割を担っています。
この甲状腺が過剰に働きすぎる状態がバセドウ病、逆に機能が低下する状態が橋本病です。
それぞれの疾患について正しい理解を深め、治療や生活管理の方法を知ることで、患者自身の生活の質を向上させることができます。
今回は、
- バセドウ病: 甲状腺機能亢進症の代表
- 橋本病: 甲状腺機能低下症の代表
- バセドウ病と橋本病の違いと共通点
をもとに、それぞれの疾患の特徴、診断方法、治療について詳しく解説します。
1. バセドウ病: 甲状腺機能亢進症の代表
バセドウ病は、自己免疫疾患の一種で、免疫システムが誤って甲状腺を刺激する抗体を作り、甲状腺ホルモンの過剰分泌を引き起こします。
この過剰分泌が代謝を過剰に促進し、さまざまな症状を引き起こします。
主な症状
- 動悸や息切れ
- 発汗過多、体重減少
- 手の震え、不安感
診断方法
- 血液検査: TSH(甲状腺刺激ホルモン)が低下し、FT3・FT4(甲状腺ホルモン)が上昇していることを確認します。
- 超音波検査: 甲状腺のサイズや血流量を評価します。
治療方法
バセドウ病の治療は、患者の状態や希望に応じて以下の3つの選択肢があります。
- 薬物療法: 抗甲状腺薬(メチマゾールなど)でホルモンの過剰分泌を抑えます。
- 放射性ヨウ素治療: 放射性ヨウ素を用いて甲状腺組織を部分的に破壊します。
- 手術: 甲状腺の全摘や部分切除が選択肢となる場合があります。
2. 橋本病: 甲状腺機能低下症の代表
橋本病は、自己免疫疾患により甲状腺が慢性的な炎症を起こし、最終的に甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。
主な症状
- 倦怠感や体重増加
- 冷え性、便秘
- 髪の毛の抜け毛や皮膚の乾燥
診断方法
- 血液検査: TSHが上昇し、FT3・FT4が低下していることを確認します。また、抗甲状腺抗体(抗TPO抗体)が陽性となる場合が多いです。
- 超音波検査: 甲状腺が小さく不均一な形状になっていることを確認します。
治療方法
橋本病の治療は主に甲状腺ホルモンを補充することで行います。
- レボチロキシン: 甲状腺ホルモン製剤を服用することで、体内のホルモンバランスを回復させます。
3. バセドウ病と橋本病の違いと共通点
両疾患は、甲状腺機能の異常という点で共通していますが、その病態や治療法には大きな違いがあります。
違い
- バセドウ病: 甲状腺機能が亢進し、過剰なホルモン分泌が問題となる。
- 橋本病: 甲状腺機能が低下し、不足したホルモン分泌が問題となる。
共通点
- 自己免疫疾患であること
- 適切な治療を行えば生活の質を維持できること
おわりに
バセドウ病と橋本病は、どちらも甲状腺の異常によって引き起こされる疾患ですが、適切な診断と治療によって日常生活を維持することが可能です。
これらの疾患について正しい知識を持つことは、患者だけでなく、家族や医療従事者にとっても重要です。
医療技術の進歩により、これらの疾患に対する治療法はますます効果的になっています。
症状に心当たりがある場合は、早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- Yamashita H, Noguchi S. “Thyroid disorders and their management.” Endocrinology Journal, 2022.
- 日本甲状腺学会ホームページ. 「甲状腺疾患の診断と治療」
https://www.japanthyroid.jp - Smith TJ, Hegedüs L. “Graves’ Disease.” The New England Journal of Medicine, 2021.