今回は、なぜ朝起きた時に足がつる?について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
多くの方が経験する「朝起きた時の足のつり」(夜間・早朝のこむら返り)。
これはしばしば自然な現象とされますが、高齢者や特定の体質、持病がある人の場合には、予防と対策が非常に重要です。
理学療法士として、つり(筋痙攣)の生理的背景、リスク因子、日々できる予防策を科学的知見に基づきお伝えします。
1 朝つりの原因と生理的メカニズム
-
神経-筋ニューロンの過興奮:下位運動ニューロンの異常発火により、筋肉が持続的に収縮することが主要因と考えられています
-
睡眠中の足関節底屈状態:寝ている間に足首が底屈して筋肉が短縮状態となり、神経過敏が生じやすくなります
-
高齢による筋繊維の変化:Type II筋繊維(速筋)の減少で筋の反応性が変わり、高齢者ではつりが起こりやすくなる傾向があります
-
血流、循環、神経圧迫:動脈硬化や末梢神経障害によって足への血行・神経信号が不安定になり、つりの誘因となります
これらの要素が複合的に関与し、朝起きたときの筋痙攣が起こるとされています。
2 考えうるリスク因子と背景要因
-
脱水や電解質バランス異常:長時間水分摂取が少ない場合、ミネラル不均衡(カリウム、マグネシウム、カルシウム低下)が影響する可能性もありますが、必ずしも関連性は一致していません
-
過度の運動疲労や筋肉の使い過ぎ:昼間の筋疲労が夜間に影響することもあり得ます
-
特定疾患や薬剤:糖尿病性神経障害、腎臓や甲状腺の疾患、利尿薬・スタチンなどが筋つりリスクに関与することがあります
-
就寝姿勢や足の位置:足底を下に向けたまま寝る、足を組む、足が毛布の外に出て冷えるなどの姿勢も誘因になります
3 理学療法士おすすめの予防ストレッチと習慣
-
就寝前のふくらはぎ&ハムストリングスのストレッチ:1日1回、夜寝る前に行うことで、つりの頻度と痛みの程度を減らすことがRCT(無作為化試験)で実証されています(週6週間の実施で夜間の頻度が平均1.2回減、疼痛がVASで1.3cm減少)
-
深部組織マッサージやパッシブ伸展:痙攣が起きそうな早期段階で、ふくらはぎを優しく伸ばす・押す等で抑制効果あり
-
睡眠中の足底屈制動器具導入:足板や枕を用いて底屈を防ぐ、または足をベッドから少し出すことで収縮を回避する事例あり
-
下肢筋力と日中の身体活動増加:定期的な軽い運動(徒歩・筋トレなど)が夜間のつりを減らす効果があると報告されています
4 日常生活での習慣改善による予防法
-
こまめな水分補給には意味あり:脱水傾向を避けることで筋収縮過敏のリスクを下げる可能性あり
-
過度な利尿薬・カフェイン・アルコール摂取の制限:これらは脱水や電解質排出につながるので避けたい習慣です
-
適切なエルゴノミック寝姿勢の習慣化:足底を軽く背屈させるような枕の利用や足先の位置の工夫も効果的。深部が冷えないよう工夫する。
-
定期的な下肢ストレッチと筋トレ:ふくらはぎ筋、ハムストリング、足底筋の柔軟性維持と加齢による筋力低下を予防する
5 つりが頻発・重篤な場合の対応と診察目安
-
頻度や痛みが強く睡眠妨げになる場合:特に高齢者で毎晩つるようなら医師相談を推奨。血液検査で電解質バランスや腎・肝機能確認。
-
神経疾患や血流障害の疑い時:糖尿病性ニューロパシー、末梢動脈疾患、腰椎症などの存在があれば専門評価を考慮 。
-
薬物副作用の可能性:利尿薬・スタチン・抗うつ薬・COPD薬など使用中であれば、主治医と調整を相談
-
特定の補助療法:最近のRCTでビタミンK2補充療法がつりの頻度・強度を有意に低下させたと報告あり(高齢者対象)
おわりに
朝や夜間に起こる足のつり(筋痙攣)は、生理的に起こることが多いものの、日常生活の質を低下させるだけでなく、頻発時には健康リスクを内包している可能性があります。
以下のテーマを理解し、対策をとることが重要です:
-
主因は神経-筋異常な発火であり、筋肉そのものではない
-
寝姿勢、筋の柔軟性、日中の活動量がつりの頻度に影響
-
習慣的な就寝前ストレッチと生活改善が予防効果あり
-
高頻度・強い痛みがあれば医師・検査による評価が必要
理学療法士の視点では、簡単なストレッチや体操、睡眠環境の調整とともに、「動かしやすさ」と「水分・栄養・薬剤管理」を統合した包括的なサポートが、朝のつり予防には最も効果的と考えます。
日々の習慣として継続することで、「つらない」朝を取り戻しましょう。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
-
Joannes M. Hallegraeff et al. “Stretching before sleep reduces the frequency and severity of nocturnal leg cramps in older adults” (J Physiother, 2012)。通いRCTにてストレッチの予防効果を実証。
-
Rabbitt L., Mulkerrin EC., O’Keeffe ST. “A review of nocturnal leg cramps in older people.” Age Ageing (2016)。高齢者における疫学と対策を包括的にレビュー
-
StatPearls. “Muscle cramps pathophysiology and management” – 運動ニューロンの過興奮と治療アプローチを概説