今回は、朝起きられないのは怠けじゃない?「病気の可能性を見逃さない」について説明していきます。
医療従事者の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
「朝、どうしても起きられない」「何度アラームをかけても目が覚めない」「学校や仕事に遅刻しがち」
――こんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
周囲からは「怠けているだけ」「夜更かしが原因」と思われがちですが、実は病気や体の不調が関係している可能性があります。
特に、慢性的に朝起きられない状態が続いている場合は、単なる生活習慣の問題ではなく、医療機関での診察が必要なケースもあるのです。
今回は、
- 朝起きられない原因として考えられる病気
- 「怠け」ではなく病気を疑うべきサイン
- 病院に行くべきタイミングと診療科の選び方
をもとに、「朝起きられない」原因として考えられる病気や対策について、最新の医学研究をもとに詳しく解説します。
1. 朝起きられない原因として考えられる病気
「朝起きられない」症状の背後には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。
以下のような疾患は、特に見逃されやすいため注意が必要です。
① 起立性調節障害(OD)(特に子ども・若者に多い)
**起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)**は、自律神経の働きが乱れ、朝の血圧が低下することで起き上がれなくなる病気です。特に思春期の子どもに多く見られます。
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特徴的な症状
- 朝なかなか起きられず、午前中は調子が悪い
- 立ちくらみやめまいが頻繁に起こる
- 動悸や息切れがある
- 食欲不振や頭痛が続く
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原因
- 成長期のホルモンバランスの変化
- 自律神経の未発達
- ストレスや生活リズムの乱れ
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対策
- 朝、水分と塩分をしっかり摂る(血圧を安定させるため)
- ゆっくり起き上がる(急に立ち上がると症状が悪化)
- 夜更かしを避け、睡眠時間を確保する
② 睡眠相後退症候群(DSPS)(夜型生活が抜け出せない)
**睡眠相後退症候群(Delayed Sleep Phase Syndrome:DSPS)**は、体内時計が通常より大幅にずれてしまい、「夜遅くにしか眠れず、朝に目覚められない」状態になる病気です。
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特徴的な症状
- 深夜2~3時まで眠れず、朝起きるのが極端に困難
- 休日は昼過ぎまで寝てしまう
- 眠る時間を早めようとしても寝つけない
- 学校や仕事の時間に間に合わない
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原因
- 体内時計(概日リズム)の異常
- 夜遅くまでのスマホ・PCの使用(ブルーライトの影響)
- 生活リズムの乱れ
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対策
- 朝一定の時間に光を浴びる(体内時計をリセット)
- 寝る前のスマホ・PCの使用を控える(ブルーライトを避ける)
- メラトニンを増やす食事(バナナ、ナッツ類)を摂取
③ 副腎疲労症候群(アドレナル・ファティーグ)(ストレス過多によるホルモン異常)
副腎は、ストレスホルモン「コルチゾール」を分泌する臓器ですが、過剰なストレスによって機能が低下すると、朝の目覚めが極端に悪くなることがあります。
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特徴的な症状
- 朝、目覚ましを何度鳴らしても起きられない
- 午前中はエネルギーが全く出ないが、夜になると元気になる
- 強い疲労感、倦怠感が続く
- カフェインを摂取しないと動けない
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原因
- 長期間のストレス
- 睡眠不足や過労
- 偏った食事(特に糖質過多)
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対策
- 適度な運動とリラックス法を取り入れる
- カフェインの過剰摂取を避ける(副腎をさらに疲れさせる)
- 朝食をしっかり摂る(血糖値を安定させる)
2. 「怠け」ではなく病気を疑うべきサイン
「朝起きられない=怠け」ではなく、病気の可能性があるサインを見逃さないようにしましょう。
以下のような症状がある場合は、一度医療機関を受診することをおすすめします。
- 午前中に全く動けないが、午後になると元気になる
- 週末は長時間寝ても疲れが取れない
- 目覚ましを何度セットしても気づかないことが多い
- 家族や周囲の人に「怠けてるだけ」と誤解されてしまう
- 仕事や学校に遅刻することが頻繁にある
3. 病院に行くべきタイミングと診療科の選び方
「朝起きられない」状態が続く場合は、早めに医師に相談しましょう。
① 受診すべき診療科
- 内科 → 貧血や甲状腺疾患のチェック
- 睡眠外来(または精神科) → 睡眠障害の専門医による診察
- 自律神経外来 → 起立性調節障害などの診断
② すぐに病院へ行くべき症状
- 日中の強い眠気で仕事や学業に支障が出ている
- 週5日以上、朝の目覚めが極端に悪い
- 突然の強い疲労感やめまいを伴う
おわりに
「朝起きられない」のは、決して「怠け」ではありません。
病気や体質の問題である可能性を疑い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
特に、「自分の努力ではどうにもならない」「生活に支障が出ている」と感じる場合は、早めの対策が重要です。
健康的な毎日を送るために、自分の体の声に耳を傾けることを大切にしてください。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
- National Sleep Foundation. “Understanding Sleep Disorders.” https://www.sleepfoundation.org
- 日本自律神経学会「自律神経と睡眠の関係」
- WHO「ストレスとホルモンバランスの影響」