今回は、腰椎圧迫骨折が起こる原因について説明していきます
理学療法士の立場から説明していきますので、是非最後まで読んでみて下さい!
はじめに
腰椎圧迫骨折(Lumbar Compression Fracture, LCF)は、椎体が前方から潰れるように変形し、腰痛・身長低下・QOL低下を引き起こす疾患です。
特に骨粗鬆症を背景とした高齢者で頻発し、日常動作中の軽微なストレスでも発症することがあります。
理学療法士として、その原因を正しく理解し、予防・回復支援に活かすことが重要です
1 主な原因と危険因子
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骨粗鬆症による骨強度低下:特に閉経後女性はエストロゲン低下に伴い骨吸収が進む
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加齢による骨構造・弾力性の変化:微小骨折や脆弱性の亢進で軽度の荷重でも骨折しやすい
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胸腰椎移行部(T12–L2)への力集中:可動性に差があるためこの部位が圧迫されやすい
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病的骨折(腫瘍・感染・ステロイド使用):骨質が弱化し、日常動作で骨折が生じやすい
独自見解として、姿勢不良(円背・前重心)、歩行・体幹制御の衰えが椎体に偏った負担を与え、骨折リスクを高める点も強調しておきたいところです。
2 力学的メカニズムの理解
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前屈による軸圧力集中:前屈時に椎体前部に荷重が集中し、楔状変形が起こる
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圧縮と屈曲の複合負荷:実験では、加齢や形状に応じた破壊力が異なることが示されている
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自然に見えた軽微外力での発症:咳・くしゃみ・車から降りる動作ですら圧迫骨折を誘発するケースあり
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微小骨折の累積による弱化:日々の小さなストレスが積み重なり、一気に崩れるリスクとなる。
これを踏まえ、理学療法では姿勢管理・動作解析による予防アプローチが不可欠です。
3 臨床像と診断の基本
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急性の腰背部痛:突然の立ち上がりや前屈で発痛、鋭痛が特徴 。
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姿勢変化や身長低下:円背、体幹前傾、バランス不良を伴うことが多い
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画像診断(X線・MRI)での確認:高さ低下20%以上または4mm以上、MRIで骨浮腫の有無確認
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骨密度測定による評価:DEXAによる骨粗鬆症リスク評価が推奨
医療面接では、転倒履歴や服薬歴、姿勢習慣なども必ずチェックしましょう。
4 理学療法士から見た予防的見解
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体幹伸展筋・腸腰筋の強化:円背予防、椎体前圧軽減に効果的な運動を導入 。
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前屈動作の代替習慣指導:屈む動作時の膝曲げ癖や荷重分散習慣の教育。過度前屈の姿勢修正が重要。
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歩行・バランス機能の強化:転倒リスク低減と動作制御改善による再骨折予防に有用。
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生活指導(栄養・活動)を併用:カルシウム・ビタミンD、適度な運動、定期骨密度測定など包括的アプローチが効果的 。
理学療法士としては、“姿勢制御と動作習慣”への介入こそが骨折リスク軽減の鍵です。
5 理学療法の現場で得られた知見
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安静より離床・体動の促進が重要:長期臥床は廃用症候群や合併症リスクを増加させ早期離床が求められる
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痛みによる運動拒否を防ぐ工夫:疼痛管理とフィードバック介入により理学療法への主体的参加が促進される。
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個別症例での姿勢介入:一人ひとりの生活背景に基づいた姿勢・動作修正が継続効果を生む。
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認知・バランス評価を併用した予後見通し:歩行自立予測には認知機能やBBSスコアが有用であり、介入設計の補助となる。
こうした臨床観察に基づく対応こそが、治療成果の質を左右します。
おわりに
腰椎圧迫骨折は、主に骨粗鬆症と加齢に伴う骨質低下を背景に、軽微な外力でも発症するリスクの高い疾患です。
特にT12–L2の移行部に好発し、前屈動作や姿勢不良によって椎体に垂直・前方圧力が集中します。
理学療法士としては、姿勢・動作・筋力・バランスの包括的介入による予防と患者教育が極めて有効です。
運動療法は、単なる筋力補強だけでなく、日常生活での再骨折を防ぎ、QOLを向上させる鍵となります。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました
参考文献
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Stroke‑Lab (2024). 腰椎圧迫骨折の原因・診断・予後・リハビリテーション解説(リンク):圧迫骨折の原因分析と臨床対応
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Physiopedia. Lumbar Compression Fracture:発症メカニズムと疫学に関する国際的レビュー
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StatPearls / NCBI Bookshelf. Vertebral Compression Fracture:臨床像と影響、自然経過について概説 ncbi.nlm.nih.gov